アレックスとアルジェとの出会い
う丸なりにのんびりとした物語をと思いまして、まったりとしたお話になる予定です。
たぶん…おそらく…今は…
リバーサイドタウン[リリック]に住むアレックスは今日の仕事をする為に、冒険者ギルド[働く者に幸あれ]に来ていた。
此処[働く者に幸あれ]では、朝早くから仕事の依頼が貼り出され何人もの冒険者がその依頼を見て、薬草や山菜の収集や鉱山内で鉱石の収集、はたまた、モンスター討伐、街の人達の依頼など自分達のやりたい依頼を探していた。
アレックスは15歳と青年になったばかりなので冒険者ギルドで働く先輩達からリリックの街の下水道の掃除や公共のトイレ掃除などの普段なら誰もしたがらない仕事を押し付けられて、その日の生計をたてていた。
そのおかげでリリックの街は少しづつ綺麗になり異臭がなくなって街の人達から喜ばれたがアレックスを見る時の目が蔑むように見ていた。
冒険者ギルドの受付嬢も本当は新参者とか先輩だとかに仕事の内容の決まり事が無い事は知っていたが、アレックスのおかげで街が綺麗になっているので言わなかった。
ただ…掃除の仕事はあまりお金にならなかった。
この街で生活をするのに、定食の平均800ギル、屋台の串焼きが300ギル、飲み物が150ギル、寝泊まりする宿屋は素泊まりで1200ギル、朝食・夕食付きの泊まりが2200ギル、銭湯は350ギル、居酒屋などでは2000ギルかかり、アレックスの稼ぎが2500ギルであったので、いつもは素泊まり、200ギルのパンに飲み物と合わせて昼と夕食の2回、銭湯に入ると1日の稼ぎの残りが250ギルとなり、いつも心許ない稼ぎで過ごしていた。
そんな生活を半年程続けているとアレックスの所持金は45,000ギルまでたまり、たまには自分にご褒美とも考えて、その日1日は休みにして街の中を探索した。
綺麗な服が立ち並ぶ仕立て屋に武器、防具を売っている武器防具屋に魔法の書などを売っている魔法道具屋に治療薬や冒険者の必需品を売っている道具屋に食材などを扱う食料品屋など、アレックスが普段、絶対に行かない所を見て楽しんでいた。
そんな時、街の裏筋の道の奥に一軒家のお店を見かけた。
アレックスは気になり入って見るとそこには何も無い、ただのカウンターだけがお店に入ったすぐ目の前にあり、しかもカウンターには1人の少女が椅子に座りカウンターを枕にして、すやすやと口から涎を出して気持ち良さそうにして寝ていた。
アレックスは一瞬、えらい場所に来てしまったと思い慌てて外に出ようと静かに忍び足で外に向かおうとすると、丁度、その少女が目を覚ました。
少女)「うにゅ…う~ん…( -_・)?」
その時、冷や汗を流したアレックスと少女の目がばっちりとあった。
どのくらい目を合わせていたのか、少女が急に我に返り自分の身なりを整え咳払いを1つしてから、アレックスの顔を見て笑顔で話しかけてきた。
少女)「ウチは何でも屋のよろず屋[アルジェちゃん]どすぇ、あたしはここの看板娘のアルジェ…そのまんまね…」
その少女はぶつぶつと呟き何かを考えてるように両腕を組みながら唸っていた。
少女は急に手のひらをポンと叩き、アレックスに言った。
少女)「あたしの名前はアルジェ様!!此処の看板娘であり、素晴らしく妖艶な体をした将来有望な女性どすぇ」
満面な笑顔でアレックスに真っ白な歯を見せながら言った。
それを聞いたアレックスは一瞬ポカーンと放心状態になったが慌てて自己紹介をした。
ア)「僕はアレックスです。普段は清掃の仕事してます。今日は1日のお休みでこの街を探索していたら、気になるお店を見かけたのでこのお店に入って来ました。」
そう言ってアレックスはアルジェに頭を下げ、アルジェはアレックスの対応に頷き、見定めるように顔をじっくりと見た。
ア)「アルジェ様?あの…そんなにじろじろと見られると僕としましては反応に困ると言いますか…対応に困ると言いますか…」
アレックスがしどろもどろになっているとアルジェは笑いながら言った。
アルジェ)「アレックスさん、これは申し訳ないことです。あたしとしましては久しぶりの…今の無~し…コホン、あたしはアレックスさんに興味が湧きました。此処は何でも屋、アレックスさんの悩み、質問、はたまた技術的指導、占いなどを生業にしておりますぇ。本日は初回ですゆえ…無料でさせていただきます。どうぞ何なりと」
アルジェは急に真顔になりアレックスに言った。
アレックス)「アルジェ様はいつも何をなさっておられるのですか?」
そう言われたアルジェは一瞬、ポカーンとしてしまったが咳払いをしてアレックスの質問に答えた。
アルジェ)「昼寝…今の無~し…精神的集中による修行を少々」
アルジェは口元を隠しながら答えた。
アレックス)「凄いですね!いつもされているのですか?僕はアルジェ様を尊敬します!僕は毎日、自分の事だけで精一杯です。」
アレックスはアルジェの顔を見開いて見ていた。
アルジェもまさか自分自身が褒められると思っていなかったので顔を真っ赤にして胸を張って答えた。
アルジェ)「これも普段から修行しておりますゆえに当然の行いどすぇ。」
アレックスはアルジェの顔を見て「凄い!凄い!凄い!」と呟いていた。
アルジェもアレックスから凄いと言われる度に「ふふ~ん!」と自身満々に胸を張って答えていた。
気がつくとアルジェとの会話が楽しくてアレックスは時間をすっかりと忘れていた。
アレックスがふと外を見ると暗くなってきていたのでアルジェに申し訳なさそうにして言った。
アレックス)「アルジェ様、今日はとても楽しい時間を過ごす事が出来ました。本当にありがとうございました。…それで…本日のお代はお幾らでしょうか?」
アルジェ)「今日は無料どすぇ」
アレックス)「アルジェ様、それはなりません!僕は本当にアルジェ様との会話が楽しかった。…もし良ければ次回も来た時も同じように会話してもらえると凄く嬉しいです。」
アレックスはアルジェの顔を優しい笑顔で見てアルジェはそんなアレックスにため息をつき50ギルと言った。
アレックスはポカーンとして慌てて懐からお代を取り出して、アルジェに渡した。
アレックス)「アルジェ様、もし良ければ今後ともよろしくお願いいたします。」
そう言ったアレックスはアルジェに頭を下げてお店から出ていった。
アルジェはそんなアレックスを見て、自分でも驚く程にアレックスの事が気になりだしたので、少し調べてみるかと思い…その時お店が闇夜に消えた…