『マークD中戦車』〜作戦目的と機動性の先に〜
今までのあらゆる戦車は、時速20kmを下回る物ばかりだった。
これは自動車化歩兵等との共同作戦に支障をきたす値(まだ機動戦思想がなかったとしても)であり、万能性も低くなる。
そんな鈍足という枷から抜けることに成功したのが、この『マークD』だ。
水上走行も可能な本戦車は、最高速度36km/h、最大航続距離160kmという当時としては驚異的な機動力を見せた。キャタピラーにも改良が加えられ、ケーブル式スネークキャタピラによってキャタピラーが曲がり方向を助けるようになっている。
しかし実用化の面では細かな欠点や不備が相次いだため、試作のみで終わった。
装甲は8~10mm、武装は機関銃三挺のみである。
またこの戦車の目的は「敵陣突破後の戦果拡大」だと考えられている。武装が少ないのは敵陣突破を他の戦車に任せているためだ。航続距離の長さはより長距離を前進することが目的であり、「敵陣突破後、一気にドイツの司令部を叩いて第一次世界大戦を終わらせるために」計画されたということである。実際に使われることがなかったとはいえ、明確な戦略的な目標を持って作られた兵器なのだ。