第1章 2B 後半 ひきこもりの立派な成長
おっちゃんとたわいない話をしているとあっという間に目的地に着いた。
ついた先は、八百屋!
現在店は閉まっているが、すぐに開けるそうだ。
「いつきくーん、ちょっとこの荷物運んでくれないかなぁー?」
とおっちゃんがこっちに向かって叫んでいる。
実は八百屋に着く直前に自己紹介をしていた。
あの歳で一回で名前を覚えられるのはすごいことだと思う。
まぁ、そんなことはおいといて、俺は「よろこんでー!」とありったけの元気で答えると、おっちゃんのもとに向かう。
八百屋さんということもあって、仕入れるのは野菜ばかりだ。
どれもこれも自分の家の台所にあった気がするようなものだが、見慣れないものもたくさんある。
荷物をすべて荷台から八百屋に運び込むとおっちゃんが、
「いつきくん、この荷物開封して種類ごとに分けてくれないかぁ?俺チョットこの荷車返してくるから」
と言って去って行った。
荷物と言ってもこの世界では段ボールという優れものではなく木箱だ。
ただ割る必要は無くただふたを開けるだけ。
箱の中身を確認し種類順に分ける。
トマト、にんじん、キャベツ、だいこん、リンゴ、みかん、etc
軽くこんなものだ。
もっと種類はあるのだが、あげるときりが無いのでやめておく。
種類順に分け終わると店のなかは木箱だらけ。
移動が精一杯で、休憩を取る場所なんてない。
並べ終わってしばらくすると、おっちゃんが帰ってきた。
おっちゃんはどうやら終わっているとは思っていなかったらしく、とても驚いた顔をしていた。
その後はおっちゃんといっしょに野菜等を棚に並べ、開店だ。
おっちゃんは、家内の看病と店の収益の計算がどうたらこうたら言って店の奥へ去って行った。
そーいえば、去り際に「いつきくんなら大丈夫!」と言っていたが、俺は店番なんて全くもっての初心者だ。
まぁ、経験があると言えば引きこもり時代の親がいないときのインターホンが鳴ったときの応対ぐらいだ。
ほんとにあのときはうるさかった。
無視してたら何回も何回もならして挙げ句の果てにはドアをノックし、名前を連呼され、ドアを揺らしてくるのだから。
ほんとに迷惑だ。
それ以来、出るようにはしたが...
そんな経験しか無い俺が店番とはどんな失敗をするのだか...
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店番をし始めしばらくすると、お客さんがやってくる。
その中には、「僕、新入りさん?がんばってね」と、いたわってくれる人もいれば「商品はおばちゃんが入れたあげるから、それを見て勉強しなさい!」と親切丁寧な人がいた。
正直新入りとしてはありがたい。
まぁ、そんな人が多いが中には無愛想な人もいる。
たとえば、向こうから来る女の子。
そう、彼女はまさにパンツの少女。
俺は最初はそれに気づかずに応対したが、すぐに気づき
「へい!いらっしゃい!今日もしんせっんって、君はあのときの...」
と応対した。
その少女は、店番が俺だということに気づいて、そして少し怒ったような口調で、
「あのときのってほど、時間たってないでしょ!君は八百屋さんちのこどもだったの?!」
と返してきた。
俺ってそんな悪いことした?もしかしたらみたことばれてるのかな?と心の中で疑問に感じた。
ちょうどそのとき、彼女の声に反応したのかおっちゃんが出てきた。
「いいや、違うんだよ、ナーちゃん」
ナーちゃん?と俺は心の中で繰り返す。それと同時におっちゃんのことをすこーしだけエロ親父か?と疑ってしまった。
ほんと申し訳ない。
すると彼女はそのおっちゃんに向かって、
「おー!八百屋のおっちゃん!おひさ!」
と返事をしていた。
俺の推測に過ぎないが、どうやら仲が良いらしい。
おっちゃんが、ナーちゃんの言葉に「久しぶりだな。この坊やはさっき道でさまよっていたのを捕まえて、家の店員にしたんだよ。あいにく昨日から家内が熱で寝込んでしまって、人手が足りなくて困っていたところだったんだ」といった。
俺は心の中で坊ちゃんじゃねーよと反論した。口には出さなかったが。
そこまでは普通だった。
その後が少し信じられなかったのだが、おっちゃんが軽く俺の頭をぽんぽんとたたいたのだった。
「おっちゃん!リンゴとミカンちょーだい!」とナーちゃんがおっちゃんに注文した。
俺は、おいおい、店番俺だぞ...という気持ちになりながらも顔に出ないようにこらえていた。
すると、それにフォローするようにおっちゃんが、
「すまんなー、ナーちゃん。今日の注文の受付はこの兄ちゃんだ。んじゃ、頼んだよ!」といった。
おっちゃん、心の中まで読めちゃうのか...感謝するよ...と感慨にふけりながら注文されたものを棚から取っていく。
「リンゴとミカンか...」
リンゴとミカン...小さい頃じいちゃん地でよくとれたなぁと思いながら取っていく。
たとえば、リンゴ。
リンゴの中でおいしいとされているのは蜜入りりんご。
それを見分けるもっともカンタンなコツは「果皮が赤くて、お尻の部分が黄色っぽくなっている」こと。
種類によっては色にむらがあるから多少は気にしなくていい。
などなど。
よくじいちゃんに実物見せられて説明されたなぁと感動していると、
「手際が悪いよ、これじゃ、混雑時には対応できないよ」とナーちゃんが。
俺はじいちゃんとの思い出を思い出し気分が良いので、
「何事も経験。そのうち早くなるよ。ナーちゃん」と言ってやった。
普段はこんなことしないんだけどなぁ。
すると、ナーちゃん、
「そっ、頑張ることね、私の名前はナタリー、覚えておいて」と素っ気なく言い残し去って行った。
と思ったら、なぜかこっちを振り向きそして一言。
「あんまり、ナタリーと呼ばないでね」と。
俺にはこの言葉の意味はよくわからないが、ナタリーがダメならナーちゃんは良いのか?という疑問を心の奥底にしまいつつ仕事に集中した。
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「今日の仕事はここまでだぁ」とおっちゃんがのれんらしきものをくぐり奥から出てきて俺にいった。
「あーはい」と朝まで出ていた声とは全く違う疲れた声を出した。
なんと言っても今日は疲れた。
もの運んだり、店番したり。
そういう一連の出来事を思い出している時にふと疑問に思っていたことを思い出す。
おっちゃんは今まだ同じところにいる。聞くなら今しかないっ!
「そー言えば、おっちゃん。ナーちゃんと仲がいいんd...」
「その名前を気安く俺の前で呼ぶなっ!」
普通に聞こうとしたら、途中で遮られた上にかなり怒鳴られた。
しかも、顔はかなり怒っている。鬼だ。
ギャップの差に少し驚いてしまう俺氏。
すごく優しいのが印象だったのだが、今のでイメージが変わってしまった。
すると、おっちゃん、脇の方からなにやらリュックサックと分厚い本を取り出した。
「小僧、これをもってここを出てけ。今日のバイト代はリュックのなかにある」
とすごい形相で言われ俺は出て行くことしかできなかった。
俺はリュックを片手に店を出た。
ナタリーとおっちゃんにはなんの関係があるのだろう...そう思いながら宿へ向かうのであった。
まぁ、向かいにあるんだけどね。
リーちゃん「...」
エリック「えーっ、はじめていいかな?」
リーちゃん「樹も大変だね」
エリック「そーだなぁ、はたしてナタリーとおっちゃんにはなんの関係があるのか!?」
リーちゃん「次回もお楽しみにぃーー!!」
エリック「まぁ、次回は回想回になるけど」
リーちゃん「え!?なんでなんで-!」
エリック「回想回がないと話の意味がつながらなくなるからね」
リーちゃん「難しいことはわかんない」
エリック「まぁ、そういうことで今回はこれで終わりたいと思いまーす!」
リーちゃん「次回の投稿は3月17日 0時頃の予定です!」
エリック「お楽しみにーー!」