第1章 2B 前半 互いが救世主
「はぁぁ、危なかった…」と独り言を呟きながら周りを見渡す。
辺りはのどかで、虫や草木の声が聞こえてきそうなくらい静かだ。
「さぁ、どこへ行こうかなぁ…」
あの家に居れない以上、どこか別のところを探す必要があるのだが、全然あてがない。
最悪、ゲームの中だから餓死はしないが、空腹を感じるはずだ。
そうなると耐えれる気がしない。
こういうときは美少女の家に泊まるとかいうイベントが用意されていてもおかしくないのだが...残念ながらなさそうだ。
そういうゲームの中でよくあるストーリーはこの際忘れて、周りを探索し拠点を探すことにする。
俺はグルーと周りを見渡し、それっぽい物を探した。
木に、岩に、あの子の家に...
「ん?待てよ…あれは?」
ちょうど、真後ろを向いた時すこーしだけ建物が見えた気がした。
俺はもう一度ちゃんと確認するためにその方向へ向いた。
たしかにあれは建物、いや建物が沢山あるから村だ。
村といえば、ゲームでは宿屋やお店等があるイメージがあるが、ゲームでよくある設定が今のところない以上、あるとは断言できない。
「ということは…」
俺は胸に期待を寄せ、村の方角へと進んで行くのだった。
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人の視覚なんて当てにならないものだ。
見た目てきには近く見えたのに、いざ歩いてみると案外遠いし、田んぼや畑が多くまっすぐは進めない。
しかも、俺は引きこもりだ、故に長距離を歩くことが久しぶり過ぎて俺の足はすでに悲鳴を上げている。
いったいどうする...まだ遠そうだし、でもこのままだと腹が減って歩く気がしなくなるだろう。
「疲れたし...少しぐらい休んでも...」
自分の甘い考えにすこし情けなく思いながら、俺は座り込み、そしてじっと考え込んでいた。
うーん...うーん...
少しばかり時間がたち、気がつくと太陽はすこし傾き始めていた。
相変わらずあたりは静かだ。
そのせいで少し眠ってしまったかもしれない。
まぁ、静かなことはいいことだ。まさに今は虫の声や馬の足音らしきものが聞こえて...って馬の足音!?
その瞬間俺は立ち上がり、馬を探した。
馬なら...馬なら早くすぐに、楽に目的地に向かえる!!!
どこだどこだ!!!
しかし、どうやら俺の期待は裏切られたようだ。
音の聞こえる方向には確かに馬らしきものがこちらに向いて走っている。
ただし、その後ろには荷車付きだ。
つまり、あの馬らしきものは野生のものではなく、人が飼っているもの。
勝手に使えないということだ。
まぁ、後の展開は予測できるだろう...
ヘタレ素質がある俺は、絶望に浸り、また地面に座り込んでしまった。無意識に。
そのうち馬が近づいてきて、前を通過...しなかった。
それどころか一歩前で停止していた。
「君ー何してるんだ?」
馬らしきものの上からおっちゃんがこっちをむいて話しかけてくれている。
「いやー少し路頭に迷っているだけなんで、気にしないでください...」
と控えめに答える。
すると、少し間を置きおっちゃんが、
「んじゃ、ちょっとうちで働いてくれないか?宿も食事も提供する。無論一日三食、昼休み付き」
なんだって!?この行き倒れそうな状況に一日三食、昼休み付きでなおかつ宿まで付いてくるとは...
なんていう待遇!!そんな今の俺にとっては最高な待遇の仕事、誰が断るだろうか、いやことわらなぃっ!!
煩悩むき出しの想像をした後俺は即答するのだった。
「引き受けますっ!!」と。
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親御さん等の了承は得なくていいのか?と真顔で聞いてくるおっちゃんに俺は、
「あー、両親は今この世界にいないので...」とありのままに答えた。
俺にとっては何一つ間違ったことを言ってない。
俺が親を置いてどこかに行ったんだし、それにこの世界に行ってくれって頼んだの父親だし。
すると、おっちゃん、なぜか申し訳なさそうに「わりぃ、聞いちゃいけないこと聞いたかもしれねぇな...なにかありゃ、俺にでも相談してくれ...」といった。
どうやら勘違いされているらしい。まぁ俺にとってはそっちのほうがありがたいので訂正はしないでおくが...
それにしてもやさしいおっちゃんだ。感謝してもしきれないくらいだ。
そういえば、なぜ俺みたいなのを雇ったのだろう...どうせならしっかり者のほうがいいだろうに...
ちょうどおっちゃんとの会話が途切れたので聞いてみることにする。
「そーいえば、なぜ僕なんかを雇ってくれたのですか?」
そう聞くと、おっちゃんが笑顔で、、
「理由は二つある。一つは俺の家内が体を壊しちまった...きっと働きすぎたんだろうなぁ...だから、今も家で寝込んでいるんだ。それで人出がほしかった。もう一つは、村の人はみんな忙しい。だから、力なんてだれもかしてくれねぇんだ。そんな時に現れたのが君だ。俺にとっては救世主だ」
とすごく気持ちのこもった言い方で答えた。
うそかまことかはわからないが、話し方から推測するにたぶん本当なのだろう。
困った人を助けるなんて何年振りだろう、もしかしたら人生はつかもしれない。
おっちゃんの言葉に返すように自然と言葉が出た。
「おっちゃんだって俺にとっては救世主です。路頭に迷って今日食べていけるかもわからない状況の時に拾ってくれた。今日からおっちゃんのため、奥さんのために働きます!」と答えた。
その時、自然と自分が笑顔になっていること少々びっくりしたが。
そうやって、おっちゃんと話をしながら、目的地へと向かうのだった。
リーちゃん「あのー、今回も前編と後編にわかれるんですかぁー」
エリック(作者)「字数の都合上...ね笑」
リーちゃん「ふーん、んで次回投稿はいつなの?」
エリック「なんとですね次回にかんしては今日の午後8時に投稿します」
リーチャン「おおー!と言うことは見逃さないためにもブクマは!」
エリック「必須です!次回もお楽しみにーー!」