第1章 2G ナタリーの心残り
ドサッ...という音とともに、はぁ...と言うため息が出る。
いっそなら、お湯の流れる川なら水が冷たくないのになぁ...という実現不可能なことに期待しながら、ぬれた洗濯物を外に干す。
これが、まためんどくさい。
洗濯は基本2日に一回か3日に一回(冬場は3日に1回が多い)のだが、その日の朝は嫌気がさしてならない。
だからといって、洗濯物を放置するわけにもいかないので仕方なーくするのである。
この家には私一人しかいないので、手伝ってくれる人もいない。
さっき、一瞬だが、あの男を使用人にしてもいいかなーと思ったのだが、あの男明らかに変だし家に入れたら、何されるかわかったもんじゃない。
やはり、安全が第一だ。
洗濯物を干し終えると、私は買い物用の鞄とお財布を取り出しいそいで市場へ向かう。
今日は忙しい。
昨日、洗濯サボったせいだけど...
そう、自分を責めながら、市場へと急ぐ。
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「時に、弘君。この少女、君の望むものだったりするのかな...」
そう、にんまりとした後藤氏がネクタイを触りながら俺に告げる。
「ええ...家の息子もきっと彼女の虜になり、過去の災難も忘れることでしょう...」
俺は、思いもしないことを彼に告げた。
「フフッ...それは良かった。何せ我が社の最新マシーンだ。効力は絶大のはず」
彼はふてきな笑いをあげそして再びモニターへ顔を向けた。
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市場に着いた私はまず、八百屋に行くのが普段のルートである。
「野菜のとれ高は十分だから、フルーツだけね...」
そう、つぶやきながら八百屋さんにむかっていると。
「へい!いらっしゃい!今日もしんせっんって、君はあのときの...」
そこにはなに喰わぬ顔でこっちを見ているさっきの男がいた。
「あのときのってほど、時間たってないでしょ!君は八百屋さんちのこどもだったの?!」
少し怒った口調になってしまったが、しかたない。
「いいや、違うんだよ、ナーちゃん」
聞き覚えのある声がしたなぁと思っていると、後ろからいつもの八百屋のおっちゃんが出てきた。
「おー!八百屋のおっちゃん!おひさ!」
「久しぶりだな。この坊やはさっき道でさまよっていたのを捕まえて、家の店員にしたんだよ。あいにく昨日から家内が熱で寝込んでしまって、人手が足りなくて困っていたところだったんだ」
そういって、男の頭をぽんぽんとたたくおっちゃん。
そして、それを見て思わずクスッと笑ってしまう私。
「おっちゃん!リンゴとミカンちょーだい!」
といつものように注文すると、おっちゃんが
「すまんなー、ナーちゃん。今日の注文の受付はこの兄ちゃんだ。んじゃ、頼んだよ!」
と言って、奥に去って行った。
「リンゴとミカンか...」と男がつぶやきながら取っている。
男の手際を見る限り素人であることは確からしい。
おっちゃんとは違い、効率が悪い。
そんな男の様子を見ながら、私はお財布の中からお金を取り出す。
入れ終えた、男が値段を提示してくる。
それよりも前に値段がわかっていた私は、用意したお金を渡し、こういった。
「手際が悪いよ、これじゃ、混雑時には対応できないよ」
それを聞いた男はすこし落ち込みながらも、
「何事も経験。そのうち早くなるよ。ナーちゃん」といってきた。
「そっ、頑張ることね、私の名前はナタリー、覚えておいて」
私はそう言って立ち去ろうとしたが、少し男の方を振り向き、
「あんまり、ナタリーと呼ばないでね」と釘を刺しておく。
あの男は釘をさしとかないと色々なところで呼びそうだからだ。
それだけ言って私はほかの店へ向かう。
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帰りは必ず、八百屋を通るのだが帰る時にはおっちゃんが店番をしていた。
店の方を見ると、おっちゃんが手を振ってくれている。
私はおっちゃんに手を振り返しながら、走って家に帰るのだった。
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家に帰ると、日も暮れ始めていた。
今日は予想外の来客や昨日洗濯をサボったせいでこんな時間になってしまったようだ。
さっそく夕食の準備に取りかかりたいところだが、いくら急いでるとはいえ日課は欠かさずにやると言うことを私は心に決めている。
だから家の端の方にある机の上の家族の写真に向かっていつものお祈りをしていたのだった。
「お父様、お母様、リーリル。いつか必ず私たちの味方になってくれる人を見つけ、救助に参ります。ですからそれまで生きて...そして私に力をください...」
いつものことが終わると私は台所に急ぎ、そして夕食を作り始めた。
今日も一日終わる。一日一日を大切に思い、そして家族を救える日が一日でも早く来ることを願いながら。
リーちゃん「はーい!!次回予告やっていくよ!!」
作者「元気だなぁ...」
リーちゃん「今までの順番から行くと次はBだから主人公視点のお話だね!」
作者「うん、そのつもりなんだけど、もしかしたら別の話が入るかも...」
リーちゃん「ふーん、まぁどちらにせよ次回の投稿日は3月15日なんだよね!」
作者「そーそー、リーちゃんも次回予告のやり方がわかってきたね」
リーちゃん「でしょでしょ!それでは、次回もお楽しみにー!」