一話
降りしきる雨の音が、小さく聞こえる。しかし雨は、外で横たわる俺の体に強く打ち付けられ、全身を濡らしている。なのに何故小さくなっていくのだろうか。
まだ少し肌寒さの残る4月後半の夕方、雨は確実に俺の体温を奪っているはずなのに、体の一部は燃えるように熱い。
「ひゅー……ひゅー……がふっ」
息を吸おうとするも、喉から湧き出る液体が邪魔をし、まるで溺れているような感覚であった。とめどなく溢れる液体は赤く、俺の口から雨に濡れた地面へと流れ落ちていく。
雨の音がより小さくなっていく。現実逃避してもこの痛みは治まることもないことを認め、俺は特に痛む胸の辺りへと手をやった。
(はは……俺の体に穴、開いてるよ。そりゃ痛いわけだ)
一つや二つなんて生ぬるいものではなく、腹部と胸部を中心に何度も、何度も刺されたのだ。息がまともに出来ないのも肺にも穴が開いているからだろう。
俺はどうせ助からないだろう、と抗うことを諦め、そっと目を瞑る。今までの人生が走馬灯のように蘇るが、振り返ってみると一つの疑問が浮かんだ。
(俺、なんで殺されたんだろうか)
俺を刺した相手は既に逃げている。黒いコートを身にまとい、顔を隠していたので誰かは分からないが、強い殺意があったことは殺し方でなんとなく分かる。
(死ぬのは諦めるけど、せめて……)
ついに雨音すら聞こえなくなり、俺は二度と開くはずのない目を閉じた。




