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天秤は笑う  作者: おき
5/8

白の次期皇女


赤と白に囲まれた不思議な部屋。

その中央に置かれた椅子に、彼女は上品に座っていた。


「……どうした。もっと近くに寄れい」


ふんわりと彼女ーーラーラは微笑む。

赤のドレスに身を包んだその姿は、まるで絵画を見ているかのようだ。眼前の少女も、少女のようには見えない。


世界が違う。


ゼレはそう直感した。


「おい」

「っは、はい!」


浮かべていた笑みが気え、不満を込めると、ゼレは心臓が飛びでるかのような錯覚を覚えた。

早足になる自分を抑えつつ、封筒を取り出す。

彼女の前に跪く。


「これを」

「騎士……聖騎士からの、であったか」

「はい」


ラーラは頷き、差し出された封筒ーーではなく、ゼレの手首を掴んだ。


「え」

「よっ」


そのまま引き寄せるようにあげ、ゼレを立たせた。

ラーラも椅子から立ち上がり、に、と歯を見せて笑う。


「これでわたしとお前は対等だの!」


そう言って初めて、封筒を手に取った。


「え、え、あ、……え?」

「何だ、騎士の癖に応用が効かんの」

「す、すみません……」

「それにチビだ」

「う」


言葉に詰まる。

ラーラとゼレは男女の差はあれど、背丈はほとんど同じであった。ゼレは今13歳。これから伸びるかどうか、怪しいと自分でも思っていた。


「わたしは今年で10だ。お前は?」

「13、です」

「上か!やはりチビだの、お前!」

「………すみません……」

「何故謝る。謝罪は罪を犯した時のみ。チビは反省の仕様がないからな、謝罪はいらんぞ」

「……………」


いたたまれなくなってきた。

どうして僕はここに来たのだろう。


ちら、とゼレは彼女の手に握られた封筒を見下ろす。


「その」

「これか?安心しろ、後で読む」


ぽい、とラーラは封筒を後方に投げ捨てた。ゆらりと宙を舞い、高級そうや寝台に着地する。


「あ!」

「どうせ後見人やらお祖父様の胡麻擂りやらだろう。飽きた」

「……………」

「いつぞやの結婚の申し出には驚いたがの。……あぁいや、お前の主を罵った訳ではない。そのような顔をするな」


ラーラは苦笑しつつ、ゼレの頬に手をあてる。


「わ」

「逃げるな」


反射的に身を下げようとするが、片方の手がゼレの肩に置かれ、身動きができない。

ゼレは自分の顔に熱が籠るのを実感した。

同い年か年下の少年たちと触れ合う機会は多々あるが、少女相手は初めてだ。加えて皇帝の孫という自分とは住む世界が違う少女だ。


……僕は、こういう時、どうすればいいんだ?


しばらく固まっていると、少女が頬に添えた手でゼレの頬を摘まんだ。ゆるく、かと思ったが、


「いっ」


予想以上に痛かった。


「はは、面白い顔をしていたからな、つい」

「うぅ……」

「ほら、そのような顔もするな!」


ラーラは快活な笑みを浮かべつつ、寝台に腰かけた。

そして先ほどまで座っていた椅子を指差す。


「座れ」

「え、でも」

「さっきからわたしばかり喋っておる。お前の口からでるのは戸惑いの言だけだ。つまらん」


それは有無を言わせない、次期皇女の言葉だった。




「何か話せ。お前の話をわたしに聞かせろ!」




初対面の上品な雰囲気とは一辺し、彼女は少女となる。




「たんまりとな!!」





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