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薬師ののんびり旅紀行  作者: ちゅんちゅん
お店と両親と教皇とアグニ
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薬師ののんびり旅紀行 七十五話

 森の中にやってきて。私とミリーナさんにルチアちゃんは、それぞれ薬草を探す為にばらける。

 森の中の空気はすごく美味しい。私は深呼吸をしてから、地面をくまなく探す。すると、ヤズモ草の群生地を発見した。ポーションの材料ね。一〇束を一つとして、合計一〇個集める。それ以上は生息図に影響が出てしまう為採らない。でも、これだけでも一〇〇本のポーションができるから、十分な収穫よね。

 次に私はヒラタケを見つけた。食べられる茸ね。似た茸でツキヨタケというのがあるけど、そっちは毒があるから食べては駄目。

 そのあたりの見極めは、幼少の頃からおばあちゃんに教えてもらっているから、もう茸採り名人のようなもの。だから、これも食べられる本物だとすぐにわかるのよ。柄を裂くとシミがないもの。これがヒラタケね。あればツキヨタケ。でも、シミがない場合も稀にあるから、その辺は注意。だけど、この辺の茸は昔からツキヨタケはないから、ヒラタケで合ってるはずよ。夕食のおかずになってもらおうかな。

 そして三つ目に見つけたのはアマ草。別に甘いからそういう名前ってわけではないのよ。本当はアマリ草っていうんだけど、いつの間にかアマ草って言うようになったんだって。リを省いたところで名前の長さは対して変わりないのにね。

 この草は、中和剤としてよく使われるのよ。この草を入れることによって、より合わせた素材が馴染むの。薬師によっては入れない人もいるんだけど、入れたほうが断然良いできになる。

 ちなみにミリーナさんの前の師匠は、入れない派だったみたいね。

 私はアマ草をヤズモ草を同じく一〇束を一〇個集める。どっちの草もまだ在庫があるから、そんなに採集しなくても大丈夫だし、あんまり採りすぎてしまうのもよくないものね。

 とりあえず、この辺で採れるものはこのくらいかな。

 二人のところに行ってみよう。

 歩いて行くと、ルチアちゃんが茸を見比べて悩んでいるようだった。


「茸の見極めしてるの?」

「ん? ああうん、そうよ。どっちも良く似てるんだけど、これシイタケよね?」

「そうね。じゃあ正解はどっちだと思う?」

「うーん、こっち?」

「外れ。ちょっとこれ、見てみて。……ここ、ほら」

「あ、黒っぽいシミがある」

「そっちのも少し裂いて見てみて」

「うん。あ、こっちはないや」

「こっちの黒いシミがあるほうは、ツキヨタケっていう毒茸よ。私の籠に入ってるヒラタケとも似てるから、注意しておいてね」

「わかったわ。ユーリィちゃん、ありがとう」


 次はミリーナさんかな。

 森の中を捜し歩いていると、奥から葉の擦れ合うガサガサという音が聞こえた。


「ミリーナさん?」

「あ、ここよ。師匠」


 草木を掻き分けてみると、籠に木苺を入れてるミリーナさんがいた。


「木苺かあ、すごいたくさんあるね」

「そうなのよ。これジャムにしたら美味しいから、ついたくさん採っちゃった、それなのに、まだまだこんなにあるのよ」


 籠一杯にとった木苺を見せてから、指し示した草木を見ると、まだたくさん木苺が生っていた。わあ、いい場所見つけたなあ。ここは覚えておいた方がいいわね。


「帰ったらジャム作りかな」

「そうね。あ、でもまだわたし、薬草の採集してないのよ。こっち先に見つけちゃったから」

「あ、じゃあ。このアマ草を探してみて。これが見本ね」

「ありがとう。この薬草を入れると味も見た目も香りも全然違うなんてね。すごくいいのにどうしてわたしの前の師匠は入れなかったのかしら」

「なんでだろうね。たんに面倒だったとかかな。一応、他の薬師も知ってるはずの薬草だから、知らないってことはないと思うんだよね。入れなくてもできるから、手間を省いたのかな」

「そういえば、せっかちな方だったかも。手間を省いたってのが正解かもしれないわ。だけど、一度入れたのを使ってしまうと、断然その方がいいってわかるから、わたしは師匠と同じで入れることにするわ」

「うん。その方がいいかな。患者さんも、アマ草入れたやつの方が飲みやすくていいって言ってたしね」


 ミリーナさんとも話した後、少ししてから今日の採集はこの辺にしておくことにした。あの後私も別の場所で木苺を見つけたから、採取しておいた。

 帰ったらスコーンでも焼こうかな。木苺のジャムを塗って食べたらすごく美味しそうだもの。軽食にぴったりね。ハーブティーにしようかな。紅茶もいいけど、ミントティーにして清涼感をプラスするのもいいわよね。甘いものを食べるのだから、すっきりするお茶のほうがいいし。


「じゃあ、そろそろ帰ろうか」

「そうね。たくさん採れたものね」

「あたしもたくさん茸採ったわ。あ、でも帰ったら選り分けお願いできる? 一応あたしが知ってるものだけにしてみたんだけど、念のため見てもらいたいし」

「うん、いいよ」


 今回、森の中で採ったものは、木苺、ヒラタケ、シイタケ、ヤズモ草、アマ草。

 中々の成果よね。

 私達三人は、連れ立って家に帰る。すると、玄関脇のハーブを育てている場所でおばあちゃんがミントの葉を摘んでいるのが見えた。


「おばあちゃん、ただいま」

「おや、おかえり。まあまあ。すいぶんと採れたこと。さ、中へお入り。温かいミントティーを淹れようかねえ」

「すごくちょうどぴったりよ。ミリーナさん、木苺をたくさん採ったから、ジャムを作るの。私もスコーンを作るから、皆で食べようよ」

「あらあら、それはいいわねえ」


 にこにこと笑顔で言うおばあちゃんだけど、もしかしたら私たちが木苺を採ってくるの、わかってたのかもしれないわね。だから、それに合うハーブティーを選んだんだわ。昔っからおばあちゃんのすることって無駄がないし。

 家の中に入った私達は、さっそくそれぞれ作り始めることに。でも、その前に私はルチアちゃんの採った茸の選り分けだけどね。変わりにルチアちゃんがスコーンを作るのを手伝ってくれてる。

 ……うん。それほど毒茸は入ってないわね。全体の一割程度かしら。それにしてもすごい量。これだけあれば、私の分も入れても当分は採らなくていいかも。

 今日は茸の炊き込みご飯にしようかな。お米と茸って合うのよね。私、炊き込みご飯大好き。

 気づけばもう四の鐘が鳴ってる。もうそろそろで夕方だわ。お夕飯の下ごしらえをして、それまでの間お腹をもたせるために、皆でスコーン。うん、美味しい! 甘酸っぱい木苺のジャムがすごく美味しいし、ミントティーも爽やかで美味しい。この三つ、最高の組み合わせね。

 そういえば、木苺、全部使わなかったみたい。どうして? と聞いたら、ミリーナさん、明日はメリータルトを作ってくれるって。すごく楽しみよ。

 そうだ。

 私、前々から思ってたのよね。ポーションにベリーを入れたら美味しいかもって。ポーション自体はアマ草を入れると味があまりしないから、味付けするのもいいかもね。もちろん他の果物を入れるのもいいと思うから、今度なにか試してみよう。

 別に効能がなくなるとか、そんなことはないのだし。試せるならやってみよう。

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