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死んでそしてゾンビになってそれからそれから  作者: 六十月菖菊
人形姉弟とゾンビの第1章
3/4

捕まりました。

すとーんと投下。

 

「…それなのにごめんなさい答さん」




 た だ い ま 絶 賛 拘 束 な う




「お腹すいた…」


 ぎゅるぎゅると腹の虫が鳴り響く。乙女の恥じらいだとか、なにそれおいしいの状態。


「なんだ、ゾンビでも腹は減るのか」

「そりゃあ減るもんは減りますよ。一度死んだ身とはいえ、元気に動いてたでしょう、私。フツーに胃袋は通常運転ですよ」


 頭上からの声に、やる気のない声で答えてやる。


「ますます気になるな、ゾンビの体内構造。

 売り捌く前にいっちょ解剖でもしてみるか」


 うっわー、マッドが居る。マッドサイエンティスト。

 てか、私売られちゃうのかよ。助けてルナさーん(棒読み)


 なんて、緊張感のないこと暢気に考えてたらナイフ取り出してきた。そして服の上からブスリとお腹を刺される。

 おお、これマジでヤバイかもしれない。


「チッ…悲鳴の一つでも上げろよ、このバケモノ」

「きゃー(棒)」

「バカにしてんのかぁっ!?」

「え、悲鳴の一つでも上げてみたんですが」


 リクエストにちゃんと応えたのに。うーん、理不尽だ。

 このまま大人しく身体を捌かれるのもやっぱり嫌だし、そろそろ動くとしますかね。


 …ああ、それにしても。


「あの二人は何やってんですかねぇ」

「あ?」


 不機嫌そうな声を軽く流して、私は腕に思い切り力を込めた。


 ブチブチブチッ!


「なっ…!?」


 連続する引きちぎれる音。散っていく荒縄。

 ああ、開放感が堪らない。その勢いで思わず立ち上がり、諸手を挙げてポーズを取ってしまう。

 えーと、確かこの場合は…。


「大成功!(`・ω・´)キリッ」

「どこの三文手品師だ!」


 表情筋が死滅した現在でも出来る魔法のキリ顔(ドヤ顔とも言う)。

 しかしながら相手はお気に召さなかったようだ。青筋を立て、凶悪な顔でこちらを睨んでいる。


「クソッ、このバケモノが!」


 おおぅ、ぼーっとしてる場合じゃない。マッドサイエンティストさんがナイフ携えて向かってくる。

 しかし避けることはない。真正面からその鋭利物を受け止めて、マッド(ryの動きを封じる。


「!?」

「先程からバケモノ、と仰っていますが」


 がしり、とナイフを持つ腕を掴む。


「ぐぁっ…!」


 ミシッ、と嫌な音が男の手首から聞こえた。

 あ、ヤバイ。ヒビ入ったかも。ごめんよマッド(笑)。


「私みたいなのなんて、ゴロゴロいますよ?

 死体が動いているだけで大騒ぎしてたらキリないですよ。ねぇ」


 そうでしょう?


 マッドを押さえ込む私の視線の先。この部屋の出入り口であるその場所に、ここ最近でよく知った男女二人の姿があった。


「いや、正直な所オレはお前みたいなゾンビ見たことねえし。

 そもそもゾンビで知り合いってお前しか知らねえし」

「それ以前に貴様には友人知人の類が存在し得ないだろうが、グリフ。

 マミヤの心情も弁えず勝手な事を抜かすなこの愚弟め」

「相変わらずグラハドールは口が厳しいな。

 知人じゃなきゃ何だ?通りすがりの男か?」

「今すぐそこらの道にでも転がって馬にでも蹴られていろ」

「こらこらこら、登場して早々喧嘩しないで下さいよお二方」


 男性の方はグリフさん。

 ダークブラウンの髪に猛禽類のような金色の目。ぱっと見は痩せているけれど、結構鍛えているらしい。この間腕を触らせていただいた時に驚愕した。(表情筋は相変わらず死んでいたが)


 一方の女性はグラハドールさん。

 グリフさんと同じく髪はダークブラウンだが、目の色は深い緑色だ。女性らしい、しなやかなボディラインをしている。私に負けず劣らず無表情。


 グラハドールさんの愚弟、という言葉からも分かる通り、この二人はご姉弟だ。

 仲は良くも悪くもない、と言ったところか。グラハドールさんが一方的にグリフさんを敵視していて、当のグリフさんはいつもどおりという感じ。何とも不思議なご姉弟だ。


 いつもの二人の光景に、思わずうんざりとした顔で見遣ると、気付いたグリフさんが近寄ってくる。


「シルス、この男どうする?」


 そう言われて、私はやっと手元のマッドのことを思い出す。

 いけないいけない。どうもゾンビになってからというものの、すぐに思考がズレて目の前のことを忘れがちだ。


「どうもしませんよ。私の不注意でこうなってしまったんですし、この人だってお金が欲しくてやっただけなんでしょうし」


 私の心臓部にナイフを突き立てた状態。腕一本でがっちりと身動き一つ取れなくて、しかも腰が抜けて立つことすらままならない顔面蒼白のマッドさんを見下ろす。


「ひっ!」


 目が合うと怯えられた。失礼な。


「まぁ何はともあれ、ここはもう駄目ですね。

 さっさと次のところに行きましょう」

「コイツを殺せば探索続行出来るだろう?」

「駄目です」


 グラハドールさんの冷徹な声に、ガタガタとナイフを通して伝わってくるマッドの震え。ダイレクトに伝わってくる異質感。痛覚が無いとは言え、体の中をぐちゃぐちゃ掻き回されるのは決して気持ちの良いものではない。

 しかし、今手を離すのはマズイ。恐怖に駆られた人間が何をしでかすか知れたものではない。

 …あ、そういえば。


「あのですよ、名も知らぬ人」

「お、お、俺を殺すのか…!」

「いえいえ、しませんよそんなめんどくさいこと。

 ていうか、そろそろナイフを震わせるの止めてくれません?今、私の心臓エライことになってんですから」



 そんなことより。



「…つかぬことをお聞きしますが、私のメガネを知りませんか?」

グラハドール

 ミスクールビューティー。主の命令で“探し者”をしており、道案内を記に依頼している。

 弟に必要以上に辛辣。デレ期は来ない。


グリフ

 グラハドールの弟。主の命令で“探し物”をしているが、記に対しては依頼をしておらず、どちらかというと勝手に同伴している状態。

 姉には無関心。そんなことより記を見ていたい。

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