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おっぱいを揉むことで相手を気絶させる能力を持って異世界で戦う話

作者: 国後要
掲載日:2014/08/04

某チャットでの会話の結果生まれてしまった謎の作品です。

エロとか期待しても無駄なので、そう言うの嫌な人は読まないでください。

真面目にアホやってるとか、シリアスなギャグとかそう言う感じですので。

真面目に書きましたし、途中まではかなりいい感じに見えますが、ひっでぇ下りが度々ある上にオチがクソなので。


一言でいうなら、これはひどい

 彼、不知火陽炎は戦場に立っていた。

 その身に不釣合いな、三尺三寸余り……一メートルを超える、かの佐々木小次郎の物干し竿も書くやと言う長大な刀を持って。


 周囲を埋め尽くす敵兵の全ては血に飢えた餓狼の如く死を求めている。

 戦場にあって人は狂う。集団心理とはげに恐ろしきものか。人は戦いの中で狂わねば、敵を斃す事すらも出来ぬ。自らの死と言う恐怖が故に――――。


 しかして、不知火陽炎は決して狂ってなどはいなかった。

 胸は熱く燃え、心は研ぎ澄まされた刃の如く。

 秋水の如き心はただ一人戦場に立ってなお小波一つ立ててはいなかった。


 彼は死を恐れてなどはいない。手には一刀、纏うは矜持。

 この身こそが必勝の策なれば、敗北などありえない――――。

 そう、彼は勝利する心算であった。彼にはそれ以外、何一つとして見えてはいないのだ。

 誇大妄想狂の愚か者とすらも言える考え。絶望的な戦力差の中で、彼は勝とうとしている。


 そして、その信に足るだけの力を彼は備えている。


 自らが執る剣もまた必勝の策の一つ。

 彼が修めた剣技はかつて動乱の日本において名を轟かせた名だたる剣豪が残した剣技。

 野太刀と呼ばれる、本来ならば戦闘に適さぬ剣で以て最強の名を欲しいままにした剣豪。

 その剣技の凄まじさたるや、かつてその強大な力を怖れた国主が永久に動く事無かれと、その開祖に不動の名を与えたほど。


 故に、この異界の地においてもなお、彼の振るう剣技は必勝の策足り得た。

 彼がその剣技を振るった現代においても、人斬り包丁を振るう殺人の技と恐れられ――――この世界において、無数の敵を切り裂いたように。

 されど、この無数の軍勢を前にして勝てると思い込めるほどに彼は甘い幻想を持ってはいなかった。


 斃すは敵軍勢の全てなどではない。斃すはただ一人――――。


 この軍団を率いる将軍、それを仕留める事でこそ目的を達成し得る。

 故に、彼はこの敵の包囲網を潜り抜け、その後に剣聖と名高き敵将軍を打ち倒さねばならない。


 自身の振るう剣は常に最強。彼はそう信じて今まで剣を振るってきた。


 その剣技の型稽古。あるいは套路。

 それは自身の迷い全てを切り捨て、無念無想の領域に達する事を目的とする。

 そのまま剣舞に用いる事も出来るその流麗なる攻撃的な型は、全て自身の弱さを切り捨てる刃。

 全てを切り裂き、迷いの悉くを切り捨てる。それが、彼の剣技の型稽古。

 型そのものの習得など意味はない。もとより型などないのだから。


 その剣技にあるのはただの技法のみ。


 すなわち、あらゆるものを切り裂く斬。

 すなわち、いかなる硬き守りも抜く徹。

 すなわち、最速にて絶死の刃を生む円。


 高速の刃に的確な引きと角度を与え、最適の斬撃を繰り出す、一瞬の判断力と手首の柔軟性を要とする斬。

 敵の守りを無力化する高速の刃。いかなる硬き守りの隙をも貫き、変幻自在の幻惑をもって守りをすかし、攻撃を徹す徹。

 長大なる刃を全身運動と手首の強靭さによって超高速にして振るうための、全身の連動した的確なる身体操術、円の軌道を描く斬撃、円。


 その三つの基本技を究極にまで高め、相手を一撃で切り裂く剣技。それこそが、彼の習得する剣技。

 いや、剣術とは、そういうものだ。ただ生き残ればよい。そんな血腥い技に、見目良い技など不要。ただ勝てばよい。

 小手先の技など不要。長大なる刃を的確に扱うための技術をもってすれば、人を切り殺す事などたやすい。

 後の全ては戦いの中でつかみ取ればよい。卑怯、騙し討ち、全ては戦場にて許容される。ならば、それをも使って勝つ。ただそれだけ。

 技とはそれに尽きる。いや、それしかない。技とは、ただ野太刀を扱うための技術でしかないのだから。


 そう、彼の剣技とは、長大な野太刀を個人武装として扱うための基本技術に他ならない。

 介者剣術に用いられ甲冑の上から敵を倒すためにあった野太刀を、素肌剣術に用いるために生み出された基本技術でしかない。

 開祖が最強の極みにあったのは、単にその基本技術が究極の領域にまで高まり、戦闘技巧者として最強の領域にあったというだけの事。

 そのあまりに常軌を逸した強さが、本来存在しないはずの流派を作り出してしまった。


 開祖はその剣技以外に、複数の流派を創り出している。

 その全てが集結すれば、国家転覆をも容易いと恐れられた最強の戦闘集団。

 その戦闘集団こそが開祖の生み出した本命の剣術であって、彼の振るう剣技など、ただそこに野太刀があったから振るってみただけなのだろう。

 恐らく、開祖をしても野太刀にて流派を起こす事は困難と判断し、流派の形が与えられなかった。

 だが、その技を盗み出した弟子たちが居た。そして、それが今彼に受け継がれ、彼の中で脈々と息づいている――――。


 無銘に伝わるものは、ただの基本技術。そして、開祖の心構え。それのみ。

 その全てが口伝として伝えられ、千年の時をも超えてなお語り継がれていたのだ。


 それが今、この異界の血において戦場に咲き立つ徒花を芽吹かせようとしている。


 その必勝の策の一つを用いて包囲網を突破した後、彼が次に振るうは剣技などではない。

 彼の本音で言えば、剣技で以て剣聖とまで謳われた名将を打ち倒すが剣士の本懐。

 されど、この戦を止めるためには将軍を倒さねばならない。

 それを思えば、彼に取れる手段はただ一つ。

 彼の諸手は何とも頼りなく、剣を振るった事によって出来た肉刺が無ければ剣士としてみる事すらも出来ないだろう。

 だが、その諸手には如何なる致命の刃よりなおも恐ろしい力を秘めていた。


 そう、それは、おっぱいを揉む事で相手を気絶させる能力――――。


 彼は相対する敵のおっぱいを揉みし抱く事で、如何なる常識を超えて強制的に意識を刈り取る力を持っているのだ。

 戦場において意識を刈り取られた者の末路など言うまでもない。

 それを思えば、その手はただ触れられたのみで命を刈り取る死神の鎌とすらも言えた。


 彼はその手で以て、将軍を打ち倒す心算であった。

 だが、その一瞬前、彼の脳裏に不安がよぎる。

 剣聖とまで謳われた名将、その剣技を乗り越えて、相手のおっぱいを掴む――――。

 それがどれほどに困難な事か、ただ一寸の間合いを詰めるために血の滲む修練を積み重ねてきた彼には、懐に入りこむ事が不可能とすらいえるほどに難しい事を理解していた。


「――――やれるか?」


 この手はおっぱいを掴む事で相手を強制的に気絶させる神秘の力を備えている。

 即ち、敵に肉薄し懐に潜り込んだその時点で勝ちは確定すると言っても過言ではない。

 しかし、あの剣の防壁の中に突撃し、その雄っぱいをつかむ事が、この俺に出来るのか……。

 出来る……出来るのだ……! この身に纏うは矜持ただ一つ。されどその矜持が鎧となり、空をも駆ける翼となろうぞ。

 されば剣の防壁ごとき何するものぞ。この手に掴むはただ一つ。勝利の栄光それのみ。

 しからばあるのは前進それのみ。この手はいかなる益荒男をも屈服させる魔手である――――。


 迷いは断ち切られ、彼に一瞬過ぎった不安は消え去った。

 もはや何一つとして迷う事は無い。

 ただ前に進む。それだけだ。

 そして、この手で以て勝利を掴む。

 相手のおっぱいを揉みし抱く、ただそれだけにどれほどの困難があろうものか。


「さぁ、往くぞ――――!」


 そして、彼は敵兵へと躍りかかった。

 振るわれる神速の魔剣は道を塞ぐ敵兵を次々と屠り去った。

 その剣技は何よりも疾く、何よりも鋭く、何よりも優雅であった。

 まるで剣舞であるとすらいえるほどに流麗な剣技で以て、彼は敵軍勢を突き破っていく。

 たったの一個人で以て軍勢を切り開く――――その困難さは筆舌に尽くしがたいものがあった。

 だが、彼の剣技は本来戦場で花開いた剣技。ただ一人で以て複数の敵と戦う技法など、既に織り込み済み。


 たったの一個人で対多数と戦う場合において最も重要なものは流れ。

 自らが絶対的な勝利の道筋を掴むために流れを生み出さなくてはならない。

 大多数と言う脅威に対し、一個人が勝つためにはそれが必要不可欠。


 そして、彼はこの無数の軍勢を前にして、それを完璧に実行していた。

 まるで無人の野を往くが如く、彼は、彼は突き進む。

 脅威を備えた敵兵に一切の恐怖を感じぬとばかりに眉ひとつ動かさずに、この戦場に血で描かれる花を次々と咲かせていた。

 そして、それを眺める剣聖と謳われる将軍、デュール・アスランは笑っていた。


「久方ぶりに面白いやつが現れたものよ」


 当年とって47歳。既に戦士としての旬は過ぎ去ったと言ってもよい。だが、それでいながら彼の肉体は今なお壮健であった。

 そこらの女の腿よりも太い首。その剛腕たるや女性の腹回りよりも太いだろう。

 それほどの豪壮な肉体を持ちながらも振るわれる剣技は繊細。豪放磊落な男としての獣性と、まるで女性のような繊細さを兼ね備えたこの男は、剣聖と言う称賛を当然のように受けるべき存在であった。


 そして、今戦場を往く不知火陽炎はその男のおっぱいを揉みし抱き、勝利を掴むために心血を燃やしていた。

 その命をまるで燃やすかの如き奮闘。そう、不知火陽炎、彼の剣士としての全盛期は、今この瞬間であった――――。




 そして、遂に不知火陽炎は剣聖将軍デュール・アスランの前へと立った。

 相対する二人の間に言葉はもはや不要だった。

 不知火陽炎が自らを斃すために軍勢を突破してきた事など、デュール・アスランは容易く理解出来た。

 デュール・アスランが自らの挑戦を受けるために、そこで悠然として佇んでいた事を不知火陽炎は容易く理解出来た。


 故に、対峙したその瞬間にこそ戦いの火蓋は切って落とされる――――。


 初手は不知火陽炎。放つは袈裟の一撃。

 全身運動を用いた秀麗にして鋭い刃はデュール・アスランを以てしても驚愕に足るほどに速い刃であった。

 戦場で戦う不知火陽炎の剣もまた速かったが、相対して見る剣はそれよりもなお速い――――。

 否、それは正確ではなかった。不知火陽炎の剣士としての最盛期、それは今この瞬間であった。

 それはすなわち、彼の剣技が最高の伸びを見せているのがこの瞬間であると言う事だった。

 一瞬前よりも速く、鋭く、巧く。彼の振るう刃は一斬一斬毎にその力を沸々と高めていく。

 今この瞬間であれば、流派開闢以来、開祖の他誰一人として至ったことのない奥義にまでも手が届くやも知れぬ……そう不知火陽炎に思わせるほどの冴えであった。

 その凄まじいなまでの剣技の冴えは、無数の剣士と戦ってきたデュール・アスランをして驚愕なさしめるものであった。


 速さ、鋭さ、巧さ……それらただ一つを持つだけの剣士ならば、デュール・アスランは無数に対峙しそれを打倒してきた。

 だが、今彼の前に立つは全ての技を供えた剣士。

 デュール・アスランは老醜を晒して将軍にとどまり続ける自身に拘泥たる思いを抱き、自らを将軍に据え続けなければならない国に失望すらしていた。

 だが、今の彼はそのような想いなど無かった。いや、むしろ、自身を将軍に据え続けてくれていた国に感謝すらしていた。

 この剣士と闘う機会を与えてくれた王に、そして神に、何より……目の前に立つ勇壮なる剣士に。


 自らに並び――――あるいは超えているとすらも思える剣士と闘う。それ以上の誉れが剣士にあろうか。いや、あるわけがない。

 デュール・アスランの長きに渡る剣士としての戦い。それが今、幕を閉じようとしている。

 戦いがどちらの勝ちに終わっても関係ない。

 今この瞬間こそが不知火陽炎の全盛期であり、そして、デュール・アスランの振るう剣が最高の冴えを見せる瞬間なのだから。

 この戦いが終わった後に、再び同じだけの剣技を振るえる剣士が現れる事もなかろう。たとえ現れたとて、その時すでにデュール・アスランは年老いて剣を振るえる事も無い。まして、生きていられる保証すらもない。


 だからこそ、今なのだ。


 今、デュール・アスランが最高の剣士として戦え、そして、それに拮抗し得るだけの剣士が目の前にいる……そう、この瞬間こそが最後の時間なのだ。

 故に、デュール・アスランの剣技は至言の冴えを見せていく。

 確かに、身体は老いたかもしれない。だが、未だ振るわれる剣技の冴えは健在。やもすれば、好敵手を得て今もなお成長を続けているようにすら思える。

 いや、彼もまた成長している。不知火陽炎が最盛期だと言うのならば、デュール・アスランは絶頂期を迎えている。


 最盛期の剣士と絶頂期の剣士。


 その双方がぶつかりあう戦いは至高の美しさを兼ね備えるようにすらも見えた。

 速く鋭く巧い刃。それを返すは白銀の煌めきを放つ長剣。

 双方の振るう銀の剣閃。それは余人が立ち入れば、次の瞬間には物言わぬ骸となる事が容易に想像できた。

 故に、二人を取り囲む敵兵たちは彼らの戦いをただ茫然と眺めていた。


 自らたちの将軍であるデュール・アスランを応援する声すらも無い。言葉を出す余裕すらも無い。

 それほどまでに、二人の振るう剣技は美しかった。

 言葉を忘れるとはまさにこのことだった。


 そして、互いに対峙する二人の剣士の心境もまた同じ。

 双方にあるのは互いへの驚愕と敬意。相手の類稀なる技巧に惜しみない称賛を送り続け、それは次なる刃となって表れる。

 自身の全力を受け止めえる剣士。それに出会えた喜びが互いの剣戟を加速させていく。


 細い刀でありながら自身の剣とぶつかり合ってなお折れず、それどこから曲がりもしない刃。

 それが的確に過ぎる剣の運用であることにデュール・アスランは気付いている。

 剣とて器物。いくら武人の蛮用に耐えうる堅牢性を有していようとも、力いっぱい叩き付ければ壊れる事もあろう。

 それを防ぐための技巧があり、デュール・アスランもまた当然それを備えている。

 だが、不知火陽炎のそれは、デュール・アスランのそれなど到底及びもつかないほどの至高の領域にある技だった。

 それはもはや、入神の域にあると言っても過言ではなく。

 激突の瞬間に的確な刃筋を立て、鎬を削らず滑らせる。

 決して剣を噛み合わせずに、まるで撫ぜるように刃を振るう。

 それも、一メートルを超える長大な剣を片手で、だ。

 全身運動を行い、諸手の一方で身体操作を行っている事に秘密があるのかとデュール・アスランは思案するが、それともまた違う。

 偏執的とすらいえるほどの正確性が、刃に異常なほどの長寿命を与えているのだ。


 そして一瞬の隙を見抜き、やもすれば守りなど無かったかのように迫る高速の刃も有り余るほどの正確性が生むもの。

 的確な刃の方向も、また正確性が生むもの。寸分の狂いもなく剣舞を踊る剣士は、まるで精密機械とすら言えた。


 この剣士はまさに技巧のみであればもはや究極と言ってもいい領域にある。


 それがデュール・アスランの心情。


 そして、もう一方の不知火陽炎もまた、デュール・アスランの剣が如何なるものかに気付いている。

 彼の剣はとかくに繊細。繊細に過ぎるその剣技は彼の豪壮な外見に似つかわしくないとすら思えた。

 だが、その身に刻んできた武威は決して虚言を弄さない。

 デュール・アスランの技巧の冴えは似つかわしくなくとも純然たる事実であった。


 そして、その繊細な技巧の冴えは、堅い守りに現れていた。


 凡百の剣士であれば、二合目、三合目などと言わず、ただ一太刀でもってそっ首を叩き落とす自信が不知火陽炎にはある。

 だが、既に百を超えようかという剣戟の最中にあって、首を落とせると確信した瞬間は一度足りとも無かった。

 いくら首を狙おうとも的確に守る。それでいながらデュール・アスランは守るだけでなく苛烈な攻めを行う。

 その秘訣はデュール・アスランが備える天才的なまでのリズムを読み取る力に起因している事も、不知火陽炎は読み取っていた。


 身に着けた技巧は個人の癖によって流れを産む。

 その流れを読まれてしまうのは剣士にとって致命的な失策である。

 それ故に、抜くべきでない刃は抜かず、必殺の心持ちの瞬間にのみ刃を抜くべきであると言う考えこそがある。

 たった一斬であろうとも、それを見られれば対応される恐れがある。それ故に、誰もが剣を秘する。だから秘剣と呼ばれる技巧がある。


 しかし、デュール・アスランはそのリズムを初見で的確に読み取る能力を有している。

 それ故に、不知火陽炎の剣を的確に受け止め続けているのだ。


 そう、デュール・アスランは剣士としてのみならず、戦士として、如何なる相手とも的確に戦える力を持っている。


 剣士として至高と言ってもいい才能。それを備え、最高の剣士として君臨するデュール・アスランと闘えることに、不知火陽炎は無上の喜びを感じていた。

 断じて勝たなくてはならぬ戦い故に、おっぱいを揉むと言う選択をした不知火陽炎だが、それを捨て去って剣技でのみ勝利を得たいと思ってしまうほどに。


 歯噛みしたくなる想いを抑え、デュール・アスランは己の手に備わった魔技を想う。

 おっぱいを揉みし抱けば如何なる相手の意識をも刈り取る力。

 剣技はそれを届かせるための前座に過ぎないのだ。

 それが無念でならない。だが、デュール・アスランの守りを撃ち抜くのは困難。未だ剣の戦いは続く。

 それを思えば、まだ幸運な方であったのかもしれない。


 そして、両者の想いは一致する。


 類稀なる技巧の冴えと、至高の才能を備えた剣士。その双方は戦いの行く末をごく自然に感じ取っていた。


 ――――この戦い、長期戦となる。


 どちらの刃も肌どこから衣服の一つを切り裂く事も無い。

 ただ延々と続く剣舞は終わる事など知らぬかのよう。

 軍勢との戦いで消耗した不知火陽炎の体力も、老境に差し掛かったデュール・アスランとの基礎体力の差を思えば五分の条件。

 それ故に、この危うい拮抗は未だ続いていた。

 分水界が変わるのはいつか。それは杳として知れぬ。だが、この戦い、長期戦となろうが、終わる時は一瞬で終わる事も双方共に理解していた。


 それ故に、お互い共に一瞬一瞬を最高にまで楽しんでいた。


 この人生最大の好敵手との戦いを、決して忘れぬように。

 天国に上ろうと地獄に堕ちようと、決して忘れぬように。

 二人は剣士として、最高の瞬間を生きているのだ。


 そして、拮抗は突如として崩れ去る。


 不知火陽炎の振るう刃。それが歪みを見せた。

 南無三! これは拙い! 不知火陽炎の心に焦りが走る。

 元より、名刀とは言えぬ程度の刀。大切に手入れを施して来たが、この異界に来てよりの蛮用と、無数の軍勢を切り裂いた事でついに限界が訪れた。

 刀身の歪みは僅かといえど、振るう刃は雄弁に、そして残酷なまでに真実を告げる。

 不知火陽炎の振るう刃の速度は毛筋一本分の衰えを見せ……そして、デュール・アスランほどの剣士ともなれば、たったそれだけの遅れがあれば、絶対的な有利をもぎ取る事が可能だった。


 ついにデュール・アスランが更なる攻勢に転ずる。


 絶死の刃と化した兇器は止め処なく流れる濁流の如く。

 必死の応戦でそれを全て捌き、流す不知火陽炎であるが、一度崩れた均衡は決して戻らない。


 ただ一手、デュール・アスランの逞しいおっぱいに手を届かせれば、それだけで勝利が拾える。

 それだと言うのに、こうして戦いは途方もない不利を極めていく。


 ――――ああ、だからこそ戦いとはこうも面白いのか。


 未だ知らぬ好敵手と出逢った事で、不知火陽炎はようやく理解した。

 刃先三寸潜り込めば死に至る人間。それで居ながらそう易々とは死なぬ。

 武士道は死狂ひなり。一人の殺害を数十人して仕かぬるもの――――葉隠の一説において謳われる言葉。

 その言葉を如実に表すこの状況こそが、最高の戦いである。それが、剣士として楽しくないわけがあろうか。

 故に、不知火陽炎は笑っていた。清々しく、今まさに自身へと致命の刃が届く事など知らぬかのように。

 この今にも死に至る状況で、それでもなお勝とうと、相手を殺そうと、そう考えている。


 その飽くなき勝利への欲求。相手よりも強くなりたいと言う、弛まぬ向上心が、遂に実を結ぶ。

 彼の中で何かが噛み合う。


 そして、自然と構えは生まれる。


 本来、彼の剣技に構えなど無い。

 強いて言えば無形の位こそが構え。

 手に一刀を携え、脱力し切った姿で構え、そこから如何なる方向へ最速の刃を放つ。

 弛緩と緊張。その差が生む速度こそが最速故の構え。


 しかして、彼の取った構えは全く異なった。


 全身運動を是とするその剣技に似つかわしくない、まるで抱え込むかのよう構え。

 両手を用いて僅かな歪みを抱える刀を手に、構えた。

 デュール・アスランの脳裏は今までにない速度で回り、それが如何なる技であるかを推測する。

 今まで変幻自在、縦横無尽に戦ってきた剣士が構えを取る以上、そこに何かがある。

 だが、考えても分からぬのでは埒が開かない。故に、逡巡はただ一瞬で終わり、デュール・アスランは一挙に踏み込んだ。


 そして、不知火陽炎が最高の一斬を放つ。


 それは何よりも速く、何よりも鋭く、何よりも巧い――――。

 デュール・アスランを以てしても、反応するのが困難なほどに、その一斬は凄まじかった。

 かろうじて、刀の過ぎ去る道に剣を置く事だけが出来た。


 致命の刃だけは防げる。剣がどうなろうかは神のみぞ知る。

 そのような想いを抱えたデュール・アスランを後目に、剣と刀は遂に激突した。


 鳴り響くは鈴鳴るかの如く美しい音色。


 そして鉄の塵が、陽光を反射して煌めく。


 不知火陽炎が振るった刃。それはデュール・アスランの剣を微塵に砕いた。

 度重なる交合で積み重なった疲労が故か、あるいは凄まじい技巧の冴え故か。

 いずれにせよ、そこにあるのはデュール・アスランの剣が砕けたと言う事実のみ。


 そして、不知火陽炎は一挙に踏み込む。

 もはや諸手となったデュール・アスランに先ほどまでの脅威は無い。

 戦士としての技量を備えて居ようとも、刃を失った剣士の力は著しく減退するのだから。


 そして、遂に不知火陽炎の手が、デュール・アスランのその逞しいおっぱいへと辿り着いた。


「逝けぇぇぇぇぇぇぇ―――――ッ!」


「なぁっ! はあああああああ――――んっ! 逝っちゃうぅぅぅぅっ!」


 不知火陽炎の指が、筋肉に覆われたデュール・アスランのおっぱいを強く揉みし抱く。

 打ち倒すと言う強い意志が込められたその指は、何よりも強くデュール・アスランを打ちのめした。

 デュール・アスランは奇怪な悲鳴を上げ、どうと地面に倒れ伏す。

 もはやその心身に満ちていた力が消え、その意識を喪失している事は疑いようのない事実だった。


「オレの勝ちだ! デュール・アスラン将軍のおっぱい討ち取ったり!」


 ―――――そして、今日また一人新たなる英雄が生まれた。

 致命の魔手を備えた剣士、不知火陽炎。

 男のおっぱいを揉みし抱いて相手を討ち取る変態が――――。

ああ……これはひどい……

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― 新着の感想 ―
[良い点] 良い暇つぶしになった、面白い [気になる点] 途中真面目に読んでたら逞しいおっぱいとかやめてくれよ… [一言] これはひどい。
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