プロローグ
季節は初夏。
いつものように太陽が地面を焦がそうとするような日照りの日……。
俺はアイスを食いながら道路を歩いていた。
「あ、熱い……死にそうだ……」
日照りに負けてはいるが俺は2ヶ月前の永遠の終わりを食い止めた霊操師の一人、羅蕊悠迩だった。
俺は霊操師としてトップクラスの実力を持っていた。
俺はあの日見た不思議な夢をきっかけに、霊操師の道を歩むことになった……。
▼ ▼ ▼
季節は戻り初冬。
雪がしんしんと降り積もり寒さが肌を突き刺すような日の夜……。
「起きて……起きて……」
どこからか不思議な声が聞こえてくる。
俺は意識がもうろうとしていた。
辺りを見回すと何もなく自分が立っているのか、それとも浮いているのかすら分からなかった。
「目が覚めたみたいね……良かった」
声がさっきよりも近くで聞こえてきた。
声のしたほうを見てみるとそこにはツインテールの黒色の髪をしたで優しそうだがどこか悲しそうな17歳くらいの少女が居た。
良く見ると背中には白い羽と黒い羽が生えていて白と黒の混ざったスカートが短いドレスを着ていた。
その子は不思議な感じで例えるなら天使のような暖かさと悪魔のような冷たさを持っていた。
「君は……誰だ?何でだろう?君とはどこかで会ったような気がする……」
少女は小さな声で言った「良かった……」と……。
少女は天使の様に微笑みそして姿が消えていった……。
▼ ▼ ▼
アパートの一室……。
外では雪が降り積もり部屋が冷蔵庫の中に匹敵するほどの寒さで目が覚めた。
布団から上半身を起こし部屋の寒さで身震いをした。
「あれは夢だったのか……?」
しかしあの少女はどこか遠くで見た記憶があるような……無いような……。
布団の上にある時計を覗いてみると時刻はまだ朝の4時を回ったところだった。
再び寝ようとしても寒くて寝れそうに無かったので布団から出た。
布団を出ると全身に細い針が刺さるような寒さだった。
俺はストーブをつけるためドアの近くのストーブのスイッチを入れた。
俺はこのアパートの一室で一人で暮らしていた。
俺の家族は3年前に家が火事により亡くなった。
俺はその時、丁度友達と出かけていて帰ったら家が無くなっていると言う残酷な現実を目の当たりにした……。
俺は焼け果てた家をただただ見つめていた……。
その時見知らぬ高校生位の女性が俺の近くに来て「これはあなたの家?」と聞いてきた。
俺は頭が真っ白になっていたので顔は良く覚えていなかった。
それにその先のことは綺麗に覚えていなかった。
まるで何者かに記憶を消されたかの様に……。
そうして気づいた時には祖父母の家に転がり込み、高校に入ってからはこのアパートに住んでいた。
ってか今頃なんでこんなこと思い出したのだろう?
そう思いながらも高校に行くための準備をして家を出る。
▼ ▼ ▼
高校について自分の教室に入ろうとドアに手をかけると突然頭痛がした。
「うっ……な、何て痛さだ……!」
数十秒で頭痛は治まった。
しかし頭痛が消えると共に廊下に居た生徒の声が聞こえなくなった。
辺りを見回してみても辺りには誰も居なくなっていた。
「一体どうなってんだ……!?」
俺は教室に入れば誰か居るだろうと教室に入ってみた。
ドアを開けるとそこにはたった一人だけ俺に背を向けて立っていた少女が居た。
その少女はなんだか不思議な雰囲気で周りの人が居ないことが普通だと言わんばかりの様子だった。
俺はすこし戸惑ったが声をかけてみた。
「なんか廊下の人たちが急に居なくなっちゃったんだけど……」
すると少女は振り向かずに低い声で言った。
「この世界はまもなく滅びるでしょう……」
「えっ?滅びる?な、何を言ってるんだ?」
すると少女は振り向き真っ直ぐに俺を見てきた。
髪は茶色で長く、背丈は160cm位で澄んだ青色の瞳をしており、物静かそうな感じの美少女だった。
「その運命をもし変えることが出来るとすれば……あなたは死ぬかもしれない戦いに自ら飛び込むことは出来ますか?」
彼女の真っ直ぐな目には迫力があり目をそらすことが出来なかった。
「だから何のことを言っているんだ?」
すると少女は小さい声だが気迫がこもった声で「黙って答えなさい」と言った。
俺は良く分からなかったがこれだけは分かった。
「もし世界が滅びるのを防げるなら俺の体を幾らでもくれてやる!俺はこの世界を守りたい!」
すると少女は安心したように笑った。
「これで貴方と契約は完了しました。……これからはよろしくお願いします。霊操師」
「君は一体何者なんだ?」
彼女は顔色ひとつ変えずに説明した。
「私は貴方様の召使い……言わば戦いを共にしていく者です。そして貴方様は私との契約により霊操師になられました……霊操師とはその名の通り霊を操り世界を滅する者を倒す者の事です。」
ってか何か凄い事に巻き込まれてしまった……。
この時から俺は普通の高校生では無く、霊操師としての道を歩んでいくことになった……