この小説が日間ランキングとらないと俺が死亡する件
白い世界に浮かんでいる学校らしき建物。その一角にあるどこにでもありそうな平凡極まる教室で俺は目を覚ました。
「あれ、なんで建物の外が真っ白なんだ? というか俺は何をやってたんだ?」
「それについては私から説明があるわ」
俺の目の前にいきなり女の子が現れた。水色の髪と赤い瞳をした儚げな雰囲気の美少女。正直俺のテンションはマックスを突破しそうになる。だがここは冷静にいかなくてはならない。俺は極力平静を装って女の子に話しかけてみた。
「あの、君は?」
「私に名前はないわ。まだ、作者が決めてないもの」
「作者? どういうことだよそれ」
「あなた、主人公なのに知らないの?」
少女はあきれた顔をして俺を見つめてきた。まずい、どうやらこの子にあきれられるようなことを俺はしてしまったらしい。周囲のわけのわからない状況より俺としてはそのほうが気がかりだった。なので俺は奥義、知ったかぶりを決行する。
「し、知ってるよ。しゅ、主人公だもんな」
「そう、ならよかったわ。知らないと言われたら叩きのめすところだった」
「へえ……。そ、そうなんだ」
「でも知ってたからいい。どうしてこういうことになっているのか教えてあげるわ」
少女は少しもったいぶるように間をおいた。俺は彼女のほうに全力で注目する。その一挙手一投足どころか息遣いまでも感じられるぐらいに。
「実はね、この小説を書いていた作者が逃亡したの。だからこんな惨状なのよ」
「へっ……」
小説? 作者? 何を言っているんだ。そんなことを言ったら俺がまるで小説の登場人物みたいじゃないか。そりゃあ主人公になって見たいとか思ったことはあるけど……。実際になるのとあこがれは別問題だろ。
俺の頭はぼかーんとなって、何も考えられなくなった。なんてできの悪い頭なんだろう。そう思うものの思考停止してしまったからにはどうしようもない。俺はそれからしばらく固まっていた。
すると少女は頭を手で押さえて、盛大に溜息をついた。そして俺を見下げたような目で見る。
「あきれた。やっぱり状況を知らないのね。あなたは小説の主人公なのよ。もっとも、あなたが主人公になる予定の物語はまだ書かれていないというより自分で作るんだけど」
「ど、どういうことだよそれ」
「私たちを生み出した作者はね、あろうことかネタに詰まって登場人物の私たちに物語を作るのを丸投げしたの。つまり、私たちはこれから何らかの物語を作っていかなければならないってこと」
「は、ハア!!!!」
俺が主人公で、しかも作者に物語の制作を丸投げされたって! ありえないだろそれ!
俺は思わずどんと机をたたき、少女をにらむ。だが少女は、ひるむどころかまったくの無表情でそれを見つめ返してきた。
「事実は事実。しかも厄介なことにね、この小説は『小説家になろうぜ!』ってサイトに投稿されるのだけど、そこで評価されないと即削除。つまり、私たちは消滅する」
「なんだよそれ! どこのジャ〇プだよ! 小説ってそういうもんじゃないだろ!」
「まあとにかく、騒いでも無駄。私たちにできることは与えられた作者権限を使って面白い話を作っていくことだけ。そうね、とりあえず日間ランキングに乗ることがひとまずの目標」
無謀すぎると俺は思った。あのサイトは確か八万ぐらい作品が投稿されていたはずだ。日間とはいえランキングに乗るということはその上位百以内に入らなければならないということだ。正直、凡人の俺にはそんな自信はない。
だけど、少女のほうはなんだか目を輝かせていた。そして彼女はどこからかパソコンを取り出し茫然自失としている俺に、自慢げにあるサイトを見せる。そのサイトのタイトルバーには「3ちゃんねる文芸書籍サロン板 【名作】小説家になろうぜ!スレ57【傑作】」と表示されていた。
「ここの情報があれば大丈夫。ランキング取れるわ」
「だ、大丈夫なのか……」
「大丈夫だ、問題ない」
こうして俺は謎の少女と3ちゃんソースの情報で「小説家になろうぜ!」の日間ランキング入りを目指すことになった。
うん、ぶっちゃけ人生終わったかもしれん……。




