第9話 大波乱な模擬戦
マナが見れるようになったので、もうこの場にいる利用はない。なのでクラスメイトの元へ戻った。すると、運動場はすごい有様になっていた。
巨大な氷の柱が乱立していたり、地面から炎が沸き上がっていたり、光を放つ光剣が大量に落ちていたりする。僕たちがマナ・レギオンに行ってる間に天変地異でも起こったのだろうか?
驚きのあまり目を見開いていると、セシルが状況を説明してくれる。
「これがSクラスの日常なんです。あの氷の柱はミリアちゃん。 炎はソフィアさん、光の剣はロード君の魔法なんです。皆さん規模が本当に大きいですよね。だから、Sクラスには第一運動場という最も広い場所を使うことになっているんです」
それにはすごく納得だ。こんな魔法を僕が思い描くような普通の場所では、キャパオーバーして校舎にも被害がありそうだ。
そんな風に思っていると、目の前から見たことのない黒いマナが見えた。誰のマナなのか分かっていなかったが、瞬きする間にその持ち主であろう人がやって姿を見せた。
その余波で髪が揺れる。
その生徒はなぜか僕に格んできたあの柄の悪い人だ。
「そんなに早く帰ってきてどうしたんだ神様さんよお!」
こちらをバカにするように言い放つ。それを聞いたセシルは鬼のような形相で睨みつける。今にでも魔法を行使しそうだ。僕は急いで手をセシルの前に出して静止させる。
「マナを感じられるようになっただけだよ」
そう端的に答える。その際にこの人のマナを注意して見てみる。黒色の中に僅かに何かが交わっているような気もする。しかし、それは黒のせいで上手く見えない。
「お…おい、なに見てやがんだよ。そんな眼を光らせやがって。どんな原理か分からねぇが」
眼が光っている?僕の眼は今光っているんだろうか?
もし、光っているとしたら神眼のせいかもな。少し眼が熱を持っている感覚もあるし。
この時ゼノンの眼は確かに光っている。しかしその光はあまり強くなく、正面から見ている生徒でやっと視認出来る程度でセシル達は気付けていない。
目の前の生徒は先程の弱腰な姿勢は飛んでいって、再び強気に戻った。
「じゃあマナはどれぐらい保有しているんだ?お前からは全然マナを感じねえ。まだあの平民の方がマナを感じるぞ。そんな体たらくで神だなんて名乗れるなぁ!」
自分でもそれは思っていた。マナを感じられるようになってからセシルやサヤカ先生を見た。すると、僕とは比べ物にならないほどのマナが見えた。セシルに限って言えば、量が多すぎて全体像を僕はまったく理解出来なかった。
「ブレイズ、そこまでにしてください。それ以上の狼藉は私が許しません」
セシルが一歩前に出て宣言する。それを受けてもなおブレイズの勢いは止まらなかった。こんなに両者がヒートアップしていると、周りにも被害が出てしまうかもしれない。
「セシル、落ち着いて。彼の言い分もあるだろうし、一理あると思うよ」
目の前のブレイズもセシルほどではないが、膨大な量のマナが見える。 それだけ大規模であったり、難度の高い魔法を使えたりするのだろう。だから、これだけ威張れるのだろう。
しかし、この場を収めるためにしっかりと謝ろう。
「気分を害してしまったのかならごめん。けど、僕も名乗りたくて名乗ってる訳じゃないんだ。それを理解してほしい」
本音を言っているつもりだったが、少し煽っているような感じになってしまったかな。その証拠にブレイズの眉が引き攣つっている。言葉というのは実に難しい。伝えたいことが自分の語彙の中に存在していないのだから。早く成長しないとな…。
「よしじゃあ俺と模擬戦しようやぁ。神様ならこんなガキ相手に負けるなんてありえねぇよな」
僕は死んだかもしれない。こんな強そうな相手と戦ったらボロ負けするだろう。そんな未来しか見えない。
それでも、こんな状態なのにワクワクしてる自分がいる。自分は戦いが好きなのだろうか?
「分かった戦おう。けど一つ約束してほしいことがある。もし、僕が勝ったら変に絡んでくるのを止めてくれないかな」
「おう、その条件をのんでやるよ。ジャッジはそこら辺のやつらで勝手にやっておけ」
心配そうな表情でセシルとサヤカ先生は僕を見てくる。それでも僕が自分から戦うと言った手前、こちらを尊重してくれているみたいだ。その気持ちに応えられるように勝たないとな。
「それでは先生が審判として見守ります。両者これが模擬戦だということを忘れないでくださいね。決定的な攻撃は禁止です」
先生の説明を受けても尚、ブレイズは頭の中でどのようにボコボコにするか、ということを考えていた。
あの眼については不気味だが、俺様があいつの前に移動した時は反応出来ていなかった。そもそも出来るわけねぇ、あんなガキに。だから、速攻で空の彼方まで殴り飛ばしてやろうか。
まぁ普通にやったら勝てるか。
「それでは模擬戦開始!」
サヤカ先生によって戦いの幕は切って落とされた。その途端に空気が張り詰めたのと同時に、目の前にブレイズが移動してきた時に見えた黒いマナが現れた。なので、後ろに大きく下がる。
すると、避ける前の場所に彼が現れた。
拳を振り上げているが、僕が下がったせいで腕のリーチが足りていない。なので、空を切ってしまっている。
ブレイズはその状態のまま唖然として固まっている。避けられるとは思わなかったのだろう。
少しの膠着の後、鋭い視線を刺されながら今度は手をこちらに向けてきた。
その瞬間に左右と背後から再び黒いマナが見えた。しかも複数だ。これを避けるためには………前に進むしかないみたいだ。僕に向けられてる手の方に意識をさせて、確実に攻撃を当てる作戦かもしれない。残念だけど、僕には無意味だ。
足に力を入れて全力で前に姿勢を倒す。そのままブレイズの元へと走る。なぜかいつもより速く走れているような気もする。
それからすぐに背後からけたたましい音が響く。上手く避けれて良かったと思う。この眼に感謝しなくては。
「はぁ?どうなってやがるんだ。なぜそうも避けられる!」
それはこの眼のおかげなのだが、わざわざ教えて上げる義理はない。
僕も予備動作として小さいながら足を下げる。そのまま勢い良く蹴り上げる。それは余裕をもって避けられてしまう。それから眼の前のマナが自分の後ろに移動しているのが見えた。なので、蹴り上げた勢いを殺さずさらに速度をつけて後ろに足を振り上げた。
すると、その場所にちょうどブレイズが現れた。
「っぁ゛……!」
ブレイズは思わずうめき声を上げてしまっている。その声がこの運動場に響く。しかし、誰の反応もなく虚空を切った。
どうやら顔にクリーンヒットしたようでかなりのダメージになっているみたいだ。このまま畳み掛けよう。
そう思って拳を握りしめる。普通ならこんな子供のパンチなど攻撃力皆無なはずだが、今の僕ならいける気がする。
そんな気持ちだけが先行していた。
【黒槍】
ブレイズから一つの魔法が行使された。それは触れたものを腐食させて消すという恐ろしい魔法だった。何の防御手段も無く受けると100%死に至るそれを放ってしまった。
これは不意の事故だった。行使した本人は殺そうなどとは微塵も思っていなかった。しかし、咄嗟のことだったので思わずオーバーな魔法を使ってしまった。
自分でもなぜ行使したのか理解出来ず、頭が真っ白になっていた。
セシルとサヤカ先生の呼吸が止まる。そして時間が止まったかのように静かになる。それは絶望を如実に表すようで、不気味な空間だった。
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