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最強の現人神は病んだ転生聖女に付きまとわれているようです  作者: 誠くん2F29


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第3話 失われた記憶

 目の前の聖女は掛け布団をめくった後も、こちらを上目遣いで見てくる。しかも、さらにすり寄ってくる。例え方が圧倒的に悪いが、まるで芋虫のようだ。


 やはりこの反応をされるということは、これが当たり前なのだろうな。


「なんで君がいるんだ…。まあそんなことは置いておいて、何か用件でもあるのかな?」


 そう問い掛けると聖女は険しい顔をした。まさか用もなく他人のベッドに潜り込んできたのか。それを文化と言われればそこまでだが、さすがに理由が気になる。


「そっ…それは……、まあ切り替えて朝食にしましょう」


 聖女は手を叩いて飛び上がるように立ち上がった。そして素早くドアの前まで移動している。

 あんなにきれいにベッドメイキングされていたのに、もうぐちゃぐちゃになっている。多分元に戻してくれるだろうから良いけどね。


「お腹も空いているし、分かった。じゃあ食べようか」


 聖女に連れられてきたのは大きなホールだった。その中央にはどこまで続くか分からないほどのテーブルが佇んでいる。


 そこで朝からものすごく豪華な料理を頂いた。

 その最中に密かに気になっていたことを打ち明ける。


「昨日から聞いてなかったけど、君の名前はなんて言うの?」


 これがずっと気になっていた。

 ずっと聖女聖女呼んでいたので、そろそろ名前を教えてほしい。


「すみませんお伝えし忘れておりました。私の名前はセシル・フローズと申します。よろしければあなた様のお名前を教えていただけますか?」


「僕の名前はゼノン。ゼノン・アークライトだよ」


 僕が名前を言っただけなのに、胸を撃たれたように胸を抑えている。けがでもしたのだろうか?心配していると、痛みがひいたのか分からないが普通に話し出した。


「お名前を教えてくださりありがとうございます。せっかくですから他にも質問にお答えしますよ」


 質問かぁ〜。他に気になることいったら、なぜ僕が神と呼ばれているんだろうか?昨日は眠るために考えないようにしていたが、疑問が尽きない。

 僕が神だとしたらあまりにも無力だ。神とやらならば、両親を悲しませることも無かっただろうに。


「じゃあお言葉に甘えさせてもらうけど、なぜ僕は神と呼ばれているの?自分ではそんな自覚はまったくないんだけど。それとも、役職的な名前として用いられているだけなの?」


 やはり記憶は無くされているのですね。表情からは微塵も嘘をついていないことが読み取れる。そもそも嘘をつく理由などないだろうが。

 それにしても本当に苛立たしい。神様は私のことだけでなく、以前降臨なさった時の記憶すら無さそうだ。


「それは神様の記憶は各地に散らばっているのです。なぜかというと、何者かの力が神様の転生を阻害したのです。もちろん阻害など出来る訳もないはずでした……そう、はずでした」


 神妙な面持ちで語り続けるセシル。その様子に自分も飲み込まれそうになる。それでも自分のことなのに他人事のように感じてしまう。それも記憶が無いからだろうか?


「その何者かは神様のほんの一部を奪ったのです。そのほんの一部でもその者の手には負えなかったようで、神様の一部は世界中に散らばってしまったのです。そして、その一部には神様の記憶も含まれているのです」


 記憶は奪われてしまったから、今の自分には記憶が無いのか。納得…と呼べるかは怪しいが、一応のみ込めた。今はそうするしか選択肢はない。



「100%とは言えないが一応理解できたよ。じゃあどうすれば取り戻せるの?」


 もし本来の自分の記憶があるのなら、取り戻したいと思う。セシルがこんな態度で接してくるのは記憶を失う前の自分が何かしたからだろう。その理由を明確にしておきたい。

 それだけでなく、純粋に記憶を失う前の自分に興味もある。どんな人物だったのか…人間ではないかもしれないけど。


「そっ…それは……」


 そう聞くと聖女は少し顔を伏せた。そして、申し訳なさそうな声色で話す。


「すごいアバウトな場所なら分かりますが、細かな場所までは……」


 どうやら記憶を取り戻すまでの道のりはまだまだ遠そうだ。


「じゃあ地道に探すしかいないってこと?」


「それは違います。ゼノン様の記憶には爆大なマナが込められているので、 ご自身がマナを感じられるようになったら分かるはずです」


 自分の記憶なら本人が居場所を分かって当然か。それならマナを感じられるようにならないといけないな。


 そもそもマナって何なんだろう?どうしたら感じれるようになるんだろう?

 自分の知識では限界があるので聞いてしまおう。


「そのマナとやらを感じるためには何をすればいいの?」


「う〜ん…一番ポピュラーなのは魔法学校の初等部に通うことだと思いますが、年齢的に厳しいかと…」


 たしか初等部というのは6歳から12歳までの6年間、勉学や色々なことを学ぶ場所である。今3歳なのでその年齢にまったく自分は達していない。けれど、これから 3年もの間を無意味に過ごすのは嫌だ。


「年齢はどうにかならないかな?聖女であるセシルは一番偉いんだろう。ならば権力で…」


 口を開いてから後悔の感情が込み上がってくる。明らかに無茶を言ってしまった………。いくら聖女といえども、そんな事をしてしまうと問題になってしまうか。


 そんな風に自らの発してしまった言葉を反省していると、セシルの表情はどんどん鮮やかになっていった。

 なんでだろう。僕は良くないことを言ってしまったはずだが…。



「それはとても良い案ですね!」


「えっ…」


 想像していた反応とはまったく異なる反応が返ってきた。彼女は手を叩き、満面の笑みで目を輝やかている。まるで、長年曇り続けていた空が快晴になった時のような変化だ。


「そうですよ、私は聖女セシルなのだから、無理やり押しきれば良いんですよ。ついでに一緒に登校できるようになりますし。善は急げです、直ちに命令を出しておきます」


 これは大変なことになってしまった。まさか本当に行けることになるとは。


 セシルは走って食堂のような場所から立ち去っていった。



 嬉しいことに、どうやら魔法学校に通えることになりそうだ。学校内は基本歳上しかいないはずだから、少し怖くも感じる。そもそも人との関わりは両親ぐらいしかいなかった。今はセシルとも普通に話せるが、これはちょっと例外な気もする。

 あと単純にめっちゃ浮きそうだ。


 セシルがいなくなった食事所は静寂に包まれている。そんな中で僕は淡々とナイフとフォークを動かしていった。




 もうかれこれこの城にやって来てから一週間程経った。ここでの生活にも周りの人からの扱われ方にも慣れてきた。

 人と話す練習の一貫としてメイドさんとも話してきた。最初は「恐れ多いです」などと言われていたが、今では普通に話してくれている。そのメイドさんと話すついでにこの国での常識やマナーを教えてもらった。

 学校などという開かれた空間では必要なことだから、学べて良かった。







 窓から差す光が頬を優しく掠めてくる。そのせいで少し眠気が襲ってきていた時に、いきなりセシルから呼び出された。しかもその時のテンションが異様に高くてキツかった。


「ゼノン様〜!これから一緒にお買い物に行きましょう。学校に通うための準備を色々しなくてはならないので」


 新天地に行くのだからそうか。学校で使うのに必要な物は買いに行かないと。実は買い物という行為を経験したことが無かった。この年だから当然かもしれないけど。なので、してみたいと素直に思う。それに、通わせてもらう身としては断る訳にはいかない。


「もちろん良いよ。それですぐに行くの?」


「はい、ゼノン様に似合う物を買いに行きましょうね」


 セシルが軽快なステップで歩きだす。その先には僕がこの城にやってきた時と同じ馬車があった。再びあれに乗るのだろう。

 セシルと馬車の近くまでいくと、騎士団の人たちが頭を垂れた。もうこれにも慣れてしまったが、気にせず馬車に乗り込んだ。

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