第16話 悪魔たちの会議
ここは壁で遮られた悪魔が巣食う力が全てな世界。強者は優遇され、弱者は冷遇される。そんな実力至上主義社会である悪魔の中で最も強いのはもちろん魔王であった。しかし、その魔王は神に封印されてしまった。
残された魔王の配下たちは臨時政府を創設し、内政を立て直すべく奔走した。幸い配下たちは魔王さえいなければ最も強いので、統治自体は時間を少しかければ簡単に終わった。
悪魔の寿命は人間より遥かに長いので100年、1000年が経っても統治機構は変わらなかった。
その者たちは現在、今後の方針で揉めていた。
「我らは魔王様の一番の配下だぞ。神の対処より魔王様の復活の方が重要だ。それが我らの悲願だろう」
机を叩きながら強く主張したのは肌が黒く、身長もゆうに3mを越える巨体の男だ。その意見に賛同する者もいれば反対する者もいる。
それに奇抜なファッションで言葉尻の軽い女が返すように言った。
「魔王様より神を殺す方が先っしょ。魔王様を復活させる上で一番の障害は神なわけだし、そっちを殺そうよ」
2つの意見がぶつかりあって中々決められずにいた。しかし、魔王の配下の中で最も強く、第一席を与えられている者は一言も喋っていなかった。だからこそ会議はごちゃごちゃしてしまっている。
その結果ものすごい時間がかかったが、最後は第一席の判断に任せる。という結論に至った。皆が彼女の決定を待っていると、ここで始めて口を開いた。
「私はどちらかではなく、両方やっていきたいと思ってる。それでいい?」
第一席は間の抜けた声で会議の面々に言う。それでも彼女の声は力を持っている。なぜなら、この場の全員が彼女の強さを知っているからこそである。皆、席次が与えられてからその席を巡って争ってきた。より高い席を目指した、魔王に近づこうと。それでも1席の座は目指さなかった、目指せなかった。あまりの彼女の強さに。
そんな彼女が決めたことに異論はないようで、今後の方針は決まった。
このメンツの中で最初からその方針をとっている者がいた。それは壁の向こう側で暗躍している影を操る悪魔であった。彼は心の中で喜んでいた。
自分だけ勝手に動いていたわけだが、これで大義が出来た。とびっきりの。
朝の光がやわらかく教室に差し込んでくる。それに外の運動場からは子供たちが遊んでいる声も聞こえてきて、こちらも元気をもらえそうだ。
などと、その子たちよりも若い僕が思うのはおかしいかな?
年甲斐にもないことを考えていると、ミリアが僕の席にやってきた。
「なにか疲れることでもあった?お姉ちゃんに話しても良い」
いつまでお姉ちゃんと言っているんだろうミリアは。それより、こうやって聞かれるということは僕は疲れているように見えているのだろうか?最近は遅くまで動くことが多かったから、体に限界がきているのかもしれない。
「昨日変なものと戦ったんだ。そいつは強かったけど、ミリアが居れば一瞬で凍らせてくれたのに。僕も魔法が使えるようになりたいな〜」
そう言うとミリアは露骨に嬉しそうにする。その姿を見て隣のセシルは対照的に嫌そうな顔をする。この対比がすごく面白い。だからこの状態をもう少し続けていたいかも。
「もちろん、ゼノンの敵は凍らせてあげる。それに魔法なら今日の実技の授業でやるから大丈夫。すぐに使えるようになるはず」
魔法の授業が今日あるのは嬉しい。そもそも魔法学校なのだから、それが本分か。それに僕以外のメンツは当たり前に魔法を使えているから、教えてもらうという手もあるな。より効率化できそう。
「ゼノン様ですから魔法なんて楽勝ですよ。いずれ超級の魔法すらもすぐに使えるようになります。ミリアさんよりも速く」
棘のある言い方でセシルは言う。それにミリアは少しムスッとしている。
「それはお姉ちゃんの方が先に決まってる。そもそも私は上級まで使えるから、初期条件が違いすぎる」
上級?魔法にそんな区分があるのか。それにしても初等部で上級とはすごそうだ。あの時見た魔法がそれだったかもしれない。しかも、超級ということはあの時の魔法よりすごいのか。なんか地形ぐらい簡単に変わりそう。
「魔法ってどんな風に分けられてるの?上級があるということは初級とか中級もあるんだよね」
そう聞くと、ミリアが答える前にセシルが矢継ぎ早に答えてくれる。
「魔法はその習得難易度によって分けられています。基礎、初級、中級、上級、超級の5段階に。それに応じて威力も習得難易度も指数関数的に跳ね上がります。だから、より級の高い魔法を使える者が偉い、といった風潮もあるんです」
本当にミリアはすごかったみたいだ。Sクラスだとしてもそんなにすごい人たちがゴロゴロいるのだろうか?さすがにありえないと思いたいが…。
クラスメイトの実力について考えていると、ミリアが少し悪い顔をしてセシルに問い掛ける。
「それでセシルさんはどの級の魔法を使える?」
これは知ったうえで聞いていそうな顔をしている。さっきの意趣返しなのだろう。それにセシルは少し悔しそうな表情をする。上級は使えないんだな。
「ちゅ、中級ですけど、私には神様から頂いた神聖魔法があります。それが私を聖女たらしめる重要な要素ですから関係ありません」
なんかセシルが話題を逸らしている。別に中級の魔法を使えるのもすごいと思う。だから誇ってもいいのに。
ミリアは自ら聞いたにも関わらず、セシルの返答に反応せず席に戻っていった。
そんなゴタゴタの後は何事もなくスムーズに授業まで進んでいった。
今回の魔法の授業は前回と同じで、第1運動場で行うようだ。一昨日も受けたが、今は神眼もマナもあるので前提がまったく違う。だからあの時は不安もあったが、セシルやミリアのお墨付きをもらった今なら自信がある。
そんな時にサヤカ先生が動きやすいラフな格好でやってきた。まだ出会った日が浅いので言いづらいのだが、イメージがだいぶ変わった。スーツ姿は優しさの中に厳しさを感じられたが、今は活発さが際立っている。
失礼だがおいくつなのだろう?すごく若く見える。
「今日はいつも通りの魔法の授業ですが、珍しく私が授業できるんです。ですから、こうやって張り切っちゃってるんです。ゼノン君がいますから。他の皆さんはご自由にしてくださいね」
魔法の授業だけあって、きちんとサヤカ先生が教えてくれるようだ。先生だから当たり前なのだが、このクラスの実情を鑑みると教えることがないだけかもしれない。
自分の中で考察が進んでいると、クラスメイトたちはこの前のように解散していった。その中でもこの場に残ったのは僕、先生、セシル、ミリアだった。
前回とは違い、ミリアも残ってくれたので人が増えた。
「セシルさんが残るのは分かってましたが、ミリアさんも残るのですね。仲良しなのはいいことですから」
サヤカ先生はニコニコしている。生徒同士が仲良いことを喜んでくれているみたいだ。
それに気まずさを感じたのかミリアは顔を逸らした。自分のことを僕のお姉ちゃんだと吹聴するのに、こういうのは駄目なんだ。
「それでは魔法について説明する前に、突然ですがセシルさんはマナについてどう解釈していますか?」
いきなり質問を投げかけられたセシルは間髪を入れず答える。
「私は自然界に存在している半恒久的なエネルギーであり、生物であれば産まれた時から備っている武器の一つ…でしょうか?」
最後の方は難しいのか尻すぼみしている。それだけ解釈の余地があるからなのだろう。
「良い解釈の仕方だと思います。事実をベースとして、それを発展できています」
先生がセシルを褒める。たしかに神眼を使えるようになってから全ての場所でマナを見た。それでもマナの総量においてマナ・レギオンは別格だったことに気づけた。あそこは何だか過ごしやすかったな。
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