第14話 病は気から?
「あまり聞きたくないけど、ファンクラブって何?」
開いてしまった……。開きたくない話題だが、己の知らない場所で変なクラブができているのなら知っておかないといけない。それにこの子の怯えようはただ事ではない。
「…私の口からは言いづらいですけど、分かりました。実は先日のブレイズさんに勝った強さと、その愛らしい容姿が人気でファンクラブができたんです。中でも熱狂的なメンバー4人は四祈徒と呼ばれ、クラブの権力を握って幅を利かせているんです…」
教室を出る時に僕を観に来た生徒は昨日とは打って変わっていなくなっていた。少し不思議に思っていたが、好都合なので気にしていなかった。もしかすると、僕のファンクラブのせいか?
「…ですから、ゼノン様と話している姿を見られると何をされるか分からないんです…」
この子は依然として萎縮しきっている。それでも僕やセシルが怖いのではなく、そのクラブが怖いのならなんとかできるかもしれない。
「それに関しては安心していいよ。僕がなんとかする」
僕が迷惑をかけているなら解決しないといけないので、きちんと宣言する。そして、恥ずかしい気持ちを抑えて空気を吸い込んで大声を出す。近くにいるであろう四祈徒に。
「僕の知り合いに手を出したら許さないよ!」
声が廊下に響く。その波を遮るものはここには無いため、広がり続ける。これだけの声を出せば届くだろう。姿も何も知らない人たちに。
これで不安材料はひとまずクリアしたと考えていいかな。
「よし、これで怯える必要はなくなった。だから、まずは名前を教えて。僕の名前は知っているみたいだから」
「…わ、私の名前はエルフィナと申します。一応Aクラスに在籍させて頂いてます…」
エルフィナは怯えた様子はなくなったが、未だに覇気を感じられない。やっぱりまだ不安が取り除けないのだろうか。それとも元々そういう性格だったかもしれないけど。
それにAクラスってどれぐらいの立ち位置なのだろう?Sが特別で、それ以降はAから段々下がっていくようなイメージを自分の中で持っている。けれど、実際のところはどうなっているのかな?
なんて考えていると、エルフィナが先日急いでいた理由を話してくれる。
「…あの日は母が原因不明の病で倒れていたんです。ですから、回復魔法の使えるお医者さんを呼びに行っていたんです…」
明らかに気分が沈んでしまっている。今でもこの状態なのだから、おそらく完治はしていないだろう。ならば、役に立てるのはここだろう。
あれ……僕の性格ってこんなだっけ?こんなお詫びのために自ら動くような高潔な人間だったか?
まぁ、気にしても仕方ないか…。
「事情は何となく分かった。じゃあ、僕とセシルに任せてくれない?僕たちならその原因不明の病を治せるはずだ。セシルは聖女だしね、回復はエキスパートだよ」
勝手にセシルも巻き込んでいるが、本望だろう。セシルも何か出来ないか考えていたし。
この提案は予想外だったのか、エルフィナは口をポカンと開いて目を潤ませている。
「い、いいんですか?わざわざお手を煩わせて…」
「もちろんだとも。お母さんのために頑張らせてもらおうか。そのために今日は放課後お家に邪魔させてもらうからね」
エルフィナは何度も強く頷いてくれた。同意を得られたということで、セシルに話しておかないと。
この後は授業もあるので、この場は解散した。そして、放課後に再び会う約束をした。それにしても原因不明の病とはなんだろう?お医者さんが匙を投げるということはそれだけ重篤なのか、それとも魔法……の可能性もあるかな。
何にしても一筋縄ではいかなさそうだ。
セシルに事の経緯を説明して、エルフィナと合流した。そのままエルフィナのお家へと向かった。
どうやら学校からは少し距離があるようだ。そもそも学校の周りは物価が高いらしく、貴族や富豪でないと住めないんだそうだ。世知辛い世の中だな。
歩いている間はエルフィナにお母さんの様態について聞いた。すると、寝たきりで食事もろくに取っておらず植物状態と変わらないということが分かった。
いきなりこんな状態になることは珍しい出来事なのかセシルに聞くと、もちろん中々ない出来事だそうだ。それは当たり前だから、新種の流行り病の線も消えたかもな。
「…着きました、ここが私の家です。母は奥の部屋にいます…」
案内されてお母さんの部屋に入る。そこにはベッドの上で呼吸を荒くして寝ている妙齢の女性がいる。非常に苦しそうにしているのが素人目からも分かる。
「セシル、任せたよ。病かもしれないから気をつけてね」
「もちろん理解しております。まずは体温を測ってみたいと思います」
僕では医療や回復魔法の知識が足りないので、大人しくセシルに任せる。僕ができることといえば濡れたタオルを用意したりすることだろう。そう思い水場の場所を聞こうとすると、セシルが叫び声を上げた。そして、何かがぶつかった音がした。
急いで振り返ると、セシルが壁に打ち付けられている。
何があったのだろう?
セシルの元へ急いで駆け寄る。エルフィナも慌てて一緒に駆け寄る。
「どうしたの、大丈夫!?」
打ち付けられているセシルに声をかける。壁に強打したような音がしたが、セシルはゆっくりと体を起こした。その様子を見てエルフィナは涙を浮かべている。
「はい、これくらいなら大丈夫です」
セシルは倒れた際に汚れたスカートをはたきながら答える。
あんなに大きい音がしたのに本当に大丈夫そうだ。セシルはこう見えて頑丈なのかもしれない。
「体温を測るためにおでこを触ろうとしたんです。そうしたら、何かの力で弾かれました」
弾かれた…?やっぱりただの病気とかではなさそうだ。明らかに魔法に連なるものの影響でしょ。こうなったら神眼で確かめるしかない。
神眼を使いエルフィナのお母さんを見る。すると、ドス黒いマナが取り巻いていた。その色はブレイズよりも黒く、濁っている。明らかにこのお母さん生来のものではないだろう。
「セシル、回復魔法を使ってみて。どんな反応をするか知りたい」
「やってみます!」
セシルが打てば響くような返事をして、早速取り組んでくれた。セシルのかざした手から薄緑色の粒子がふわりと浮かび上がる。
これが回復魔法の色なのだろう。
どうなるかと思ったら、ドス黒いマナは回復魔法を飲み込んだ。飲み込むという表現が適当か分からないが、そう表すことしかできない。
どうすればこれを解決できるんだ?
「ゼノン様、昨日のミリアさんの時みたいにできませんか?」
昨日のミリア……あぁ、神眼でマナを消したやつか。自分でしたことなのに忘れていた。これも同じマナなんだから魔法破綻を使えるはずだ。
「そうだ、その手があるじゃないか。ありがとうセシル」
【魔法破綻】
エルフィナのお母さんに向けて行使する。これで解決するーーと、思っていた。確かにマナは消えた。しかし、さらなる問題がやってきた。エルフィナのお母さんの体から異形の化け物が飛び出したきた。
それは消したマナと同じ色を纏っている。明らかに実体を持っていて、魔法破綻では対処しきれない。直接戦うしかないか…。
化け物もこちらを威嚇?してきている。こんな家の中で戦うわけにはいかない。だから、急いで家から出て広い場所へと向かう。ここにくるまでに通りかかって良かった。
たどり着いた場所は空き地のような場所で、人っ子一人いない。
「セシル、サポートは任せた」
僕は広い空き地に出てから、セシルを自分の後ろに行かせた。バトルは専門外らしいので僕がやるしかない。エルフィナは化け物に驚いて腰を抜かしていた。だから、増援は見込めない。
状況は悪いが、僕には取り戻したマナもある。そのマナの使い方は自分の中にいる妖精に教えてもらおう。
《もう、私の扱い雑すぎない?あんたのお世話係じゃないんだからね》
そう言いつつも、ちゃんと応えてくれる妖精であった。
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