第11話 白髪の少女
セシルが調べてくれた馬車を借りられるお店へ進む。城からの距離はとても近く、この小さな体で15分ほど歩くと着いた。そのお店は周囲の煌びやかなお店とは違い、落ちついたモダンな外装だった。
店内に入って受付まで行くと、店員さんが一人だけいた。その人に馬車を借りたい旨を伝えると一枚の書類を差し出してきた。記入を促されたので書いたのだが、それは名前だけだった
本当にこれだけでいいのか迷っていると、セシルが頷いてくれた。 本当にいいんだ。
そのことに驚いていると、セシルもすぐに記入し提出した。
すると、店員さんは初めて話した。
「あまり準備に時間はあまりかかりませんので、お外で待機していてください」
そう簡潔に言われたので外で待っていると、すぐに馬車がきた。その御者さんはふくよかで優しそうな人だった。その人にとにかく南西に向かってほしいと伝えた。すると、何も聞くことなく乗せてくれた。
少しの間揺られていると、始めて御者さんが話した。
「お嬢さんと坊ちゃんがなぜ南西に行きたいのか聞きませんけど、気を付けた方がよいですよ。何やらその方面は魔物の被害が多いと聞きました」
有益な情報をいただいてしまった。やっぱりこの人は良い人そうだ。魔物が何か良く分からないけど、被害と言っているから悪い事をしているのだろう。
「…それで魔物って悪魔と何が違うの…?」
小声でセシルに尋ねてみる。魔物の存在を知らないのは少し不自然かもしれない。なので、御者さんに聞こえないようにしないと。その意図を汲んでくれたセシルも小声で話してくれる。
「…魔物とは元は悪魔たちの眷属でした。ですが、神様が魔王を封印した際に支配の効力が切れて、各地に分布していったんです。故に普通の動物と変わらないものも多いですが、一部はマナが扱えて人間に敵対する魔物もいるのです…」
だから人に被害が出るのか。ならば、今の僕では対処は難しそうだ。それでも僕には神眼があるのだから活かせれるように頑張らないと。
心構えをしっかりして、舗装のされていない道を揺られながら進み続ける。
進むにつれて段々霧のようなものが濃くなっていき、地面もどこかぬかるんでいるようで進行速度が落ちてきた。なので、馬車で進むのは限界かもしれない。
「セシル、そろそろ降りようか。このまま進んでも馬の疲労が溜まっちゃうだけだろうから」
セシルは頷いてくれて一緒に馬車から降りた。御者にはそのまま帰っていいと伝えた。複雑な表情をしていたが、止められることはなかった。こちらの事情を汲んでくれたのだろう。
ここは湿地帯なようで歩きづらい。さらに樹木のせいで見通しが悪い。こんな悪条件が揃っている中でもゆっくりと確実に進んでいく。 すると、いきなり体感温度が下がった。自分だけがそう感じているかもしれないのでセシルの方を見る。やはりセシルも体を震わせている。 陽が落ちているとはいえ、ここまで急に寒くなるのはおかしい。
疑念を募らせていると、遠くで何かがぶつかった音がした。その余波で木々が揺れる。何かアクシデントがあったのだと思い、2人で走った。
走っている間にも音はどんどん大きくなり、体感温度もさらに下がっていく。吐く息も白くなり始めている。ここでようやくマナが見えてきた。
白くなった息と被って見づらいが、強い力を感じる。
「どうやら魔法の影響でこうなってみたい。誰かが戦っているのかな?」
「この現象が魔法由来のものだとすると、戦っている以外の理由は考えにくいですね」
となると尚更確認しておかいといけない。なぜなら、そのマナの場所近くに僕のマナを感じる。これは何か関係しているに違いない。
踏ん張りづらい地面だからそこを避け、木の幹を足場として走る。この方が速度を出しやすい。
風を切って音のする場所に向かうとなぜか白髪の小さい子がいる。僕と同い年ぐらいだろうか?そんな子からものすごく強いマナを感じる。が、どこかで同じ色のマナを見た気がする……。
その子をきちんと視認するため、さらに近づくとひらけた場所に出た。すると、白髪の子の奥に巨大な"何か"が見えた。それから白髪の子よりも強大なマナを感じる。
セシルもそれを感じ取れたのか、顔が青ざめている。
僕たちが来たことにその子も気づいたのか、こちらを見ている。そして、こちらに何かを伝えたいということだけ伝わる。それでも内容が分からないので、できるだけ近づかないと。
そう思って走っていると、巨大な"犬のような何か"から光を伴うマナが放たれる。それに気付かず白髪の子は未だこちらに投げかけている。そのせいで、放たれたマナの反応に遅れてしまっている。
その子は急いで氷の盾を展開した。それでも受けきれないのか苦しそうにしている。
盾でも防ぎきれないのか、徐々に押されていっている。小さな体であれほどのマナを防いでいるのが不思議だが、そんなことは重要ではない。あの子に放たれているマナをどうにかしなければ。
そう思うと体に少しだけあるマナが目へと移る。ブレイズと戦った時はよく分からなかったが、今ならはっきりと分かる。これでマナを霧散させることが出来るはずだ。
【魔法破綻】
そんな言葉が勝手に頭に浮かぶ。そして、無意識の内に唱えていた。すると、目の前の放たれているマナのほとんどが霧散した。しかし、全てがそうなったわけではなく、一部は今でも盾に振り注がれている。
「あれっ…?ミリアじゃない…」
走って駆けつけています中、隣からそんな戸惑っている声が聞こえる。知り合いなのだろうが、僕も見たことがある気が……そうだ、Sクラスの教室にいたじゃないか。雪を体現したかのような白髪で、僕と同じぐらいの身長な子がいた。
その子の正体が分かったところで、ミリアは少しふらついてしまった。そのせいで盾を維持できなくなり、盾が粉砕してしまった。このままではミリアに当たってしまうーーー寸前で僕がミリアの元までたどり着いた。セシルに加速魔法を行使してもらわなければ間に合わなかった。
「僕がどうにかするから、下がって!」
目の前に学校で出会った神を自称する少年、いや幼子が飛び出してきた。しかも、私に下がれと言っている。元は私が近づくなと叫んでいたのに。
不覚にもかっこいいと思ってしまったが、彼にどうにかできるのか?そんな疑問があるが、さっきも彼の瞳が煌々と輝いてから攻撃の手が弱まったけど…。
彼の言葉を信じきれていなかったが、再び瞳が輝いた。
【魔法破綻】
その声が聞こえると同時に私に放たれていたマナは完全に霧散した。彼がいなかったら私はあれに潰されていただろう。救われてしまった…。けれど、こんな姿をクラスメイトに見せ続けるわけにはいかない。
だからこそ立ち上がる。そして、魔法を行使する。忌々しい魔物のデカい犬っころに。まずは氷で口を塞いであげよう。
氷で魔物の口を覆う。その際に首を振ったりして藻掻いているが関係ない。氷の剣を魔法で生成し、彼の頭上を飛び越える。そして魔物の機動力の要である、足を切り落とすべく氷剣を振る。
「私もサポートさせていただきます!」
セシルも追いついたようで咄嗟にミリアの動きに合わせる。支援魔法でミリアの魔法を強化する。その影響で氷の剣から冷気があふれる。ミリアはその剣を大きく振る。
すると、魔物から血のような液体が足から噴き出る。そのまま倒れてくれたので攻撃のチャンスがやってきた。それを見逃さずミリアは魔法を行使する。
魔物の叫び声が響く中でも尚、ミリアの声は透き通ってこちらまで聞こえる。
【氷剣の雨】
ミリアは既に持っていた氷の剣を視界いっぱいに展開する。それは神眼でようやく視認できるほどの速度で落下する。次々に魔物へと突き刺さり、ようやく魔物は動きを止めた。
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