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零式魔導設計士 ~全属性適正ゼロ判定の俺、実は世界の設計者候補でした  作者: 白峰アキラ


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第9話 白亜の塔

 王都の城門をくぐった瞬間、空気が変わった。


 魔力の密度が違う。


 通りを行き交う魔導車、空を横切る伝達用の光球、至る所に刻まれた魔法陣。


 ここは学園とは比べ物にならない規模で“魔法が運用されている”都市だった。


「……すごい」


 リシアが思わず呟く。


 炎の名門に生まれ、王都を訪れたことはある。


 だが今回は違う。


 客ではない。


 内部へ入る。


 研究院の塔は都市中央にそびえていた。


 白亜の外壁に幾重もの魔法式が刻まれ、塔の上部には巨大な演算環が浮いている。


 アルトは足を止めた。


(第六層まである……)


 外壁に重なる層構造。


 学園とは桁が違う。


「驚いていますね」


 ミレイアが横目で言う。


「高度です」


 素直な感想。


「ええ。ですが未完成です」


 さらりと言う。


 リシアが目を見開く。


「これで未完成?」


「だからあなたを呼んだのです」


 塔の内部へ。


 高い天井。


 円形の大広間。


 中央に巨大な魔導演算装置。


 複数の研究員が忙しなく動いている。


「観測官殿」


 一人の中年男性が歩み寄る。


「例の“ゼロ”ですか」


 値踏みする視線。


「アルト・ゼインです」


 淡々と名乗る。


「こちらは?」


「補助研究員候補」


 ミレイアがリシアを見る。


「リシア・フレイムハート」


 名を告げると、周囲の視線が変わる。


「フレイムハート家の……?」


「なぜここに?」


 ざわめき。


 リシアは胸を張る。


「私が選びました」


 はっきりと。


 その言葉に、アルトの胸がわずかに温かくなる。


「まずは基礎検証を」


 ミレイアが指示する。


「アルト、こちらへ」


 中央の演算装置へ導かれる。


「この装置は都市全体の魔力流を監視しています」


 巨大な水晶球が淡く光る。


「構造が見えますか?」


 アルトは近づき、目を細める。


 層が重なっている。


 だが――。


「……歪んでいる」


 小さく呟く。


 周囲がざわつく。


「どこが」


 中年研究員が問い詰める。


「第三層と第五層の接続が不安定です」


「あり得ない」


「補正係数が古い。都市規模が拡張したのに更新されていない」


 沈黙。


 ミレイアが目を細める。


「検証を」


 研究員が急いで計算式を確認する。


 数分後。


「……一致している」


 ざわめきが広がる。


「本当に見えているのか」


 値踏みが、警戒に変わる。


 リシアは横で拳を握る。


(やっぱりすごい)


 誇らしい。


 だが同時に、遠く感じる。


「修正案は?」


 ミレイア。


「第五層の演算を分離し、独立補正に」


 即答。


 研究員が動く。


 数分後、装置の光が安定する。


 空気がわずかに軽くなる。


「魔力流が均衡した……」


 小さなざわめき。


 アルトは装置から手を離す。


「これで暴走リスクが下がります」


 静かな報告。


 ミレイアが微笑む。


「正式に研究員として迎えます」


 宣言。


 周囲の研究員たちがざわつく。


 ゼロと呼ばれた少年が、王都の中枢へ。


 そのとき。


 警報が鳴り響いた。


 塔が揺れる。


「南区画で魔力暴走!」


 研究員が叫ぶ。


 水晶球に映像が映る。


 炎が暴れ、建物を焼き始めている。


「干渉装置の誤作動です!」


 ミレイアが即座に指示を出す。


「鎮圧班、出動!」


 リシアが前に出る。


「私が行く」


「待ちなさい」


「現場の炎、私なら制御できる」


 視線がアルトへ向く。


 一瞬の無言の会話。


「行きましょう」


 アルトが言う。


「現場で構造を見ます」


 ミレイアは数秒考え、頷く。


「許可します。ただし無理はしないこと」


 塔を飛び出す。


 南区画。


 炎が建物を包む。


 住民が逃げ惑う。


 リシアの瞳が鋭くなる。


「紅蓮――」


「待って」


 アルトが腕を掴む。


「外側から制御すると反発します」


「じゃあどうするの!」


「内部位相を切る」


 炎を見つめる。


(第四層が暴走している)


「中心の補助装置を壊す必要があります」


「場所は?」


 アルトが指差す。


「三階、東側」


 リシアは頷く。


「私が道を作る」


 炎を細く鋭く放つ。


 破壊ではなく、道を切り開く制御。


 アルトがその隙間を駆け上がる。


 熱が迫る。


(第四層……ここだ)


 小型装置を見つける。


 歪んだ魔法式。


「切る」


 手を触れ、干渉箇所を断つ。


 瞬間。


 外の炎が弱まる。


 リシアが増幅を抑え、炎を包み込む。


 数秒。


 そして。


 完全鎮火。


 静寂。


 住民の安堵の声。


 リシアは息を整え、アルトを見る。


「大丈夫?」


「はい」


 少し汗をかいている。


「あなたこそ」


「平気」


 だが胸は激しく鳴っている。


 怖かった。


 でも。


 一緒だった。


 ミレイアが到着する。


「見事です」


 周囲の研究員がざわめく。


「構造解析と実戦制御の連携……」


 リシアはアルトを見る。


 誇らしい。


 そして。


 強く思う。


(この人と、もっと先へ行きたい)


 炎の天才ではなく、


 共に戦う存在として。


 だがそのとき。


 遠くの塔上部で、黒い影が一瞬揺れた。


 観測。


 監視。


 王都には、別の“目”がある。


 ゼロの存在は、既に知られ始めていた。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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これからもどうぞよろしくお願いします!

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