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零式魔導設計士 ~全属性適正ゼロ判定の俺、実は世界の設計者候補でした  作者: 白峰アキラ


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第7話 退学勧告

 翌朝、アルトは学園長室に呼び出された。


 重厚な扉の前に立ったとき、嫌な予感はしていた。


「入りなさい」


 低い声。


 室内には学園長とガルド、そして数名の上級教師が並んでいた。


 空気が重い。


「アルト・ゼイン」


 学園長がゆっくりと口を開く。


「君の行為は学園の秩序を乱している」


「秩序、ですか」


「構造理論を無断で広め、他生徒の魔法行使に干渉した」


 干渉。


 昨日の公開検証。


「だが結果は安定化でした」


「問題は結果ではない!」


 ガルドが声を荒げる。


「理論化は危険だ! 未熟な者が真似すれば暴走が増える!」


「未熟なのは理論ではなく、教え方です」


 静かな反論。


 空気が凍る。


「……君は自分の立場を理解しているのか?」


 学園長の声が冷える。


「全属性適性ゼロだ」


 その言葉が、改めて突きつけられる。


「本来、在籍基準を満たしていない」


 沈黙。


「よって、退学を勧告する」


 静かだが決定的な宣告。


 アルトは数秒、何も言わなかった。


 驚きはない。


 予想していた。


「異議は?」


「ありません」


 教師たちが一瞬ざわつく。


 あまりに淡白な返答。


「だが一つだけ」


 アルトが顔を上げる。


「理論は止めません」


 静かな宣言。


 ガルドが拳を握る。


「好きにしろ。ただし学園の名を使うな」


 それで話は終わった。


 廊下に出る。


 胸の奥が静かだ。


 痛みはある。


 だが、それ以上に。


(選ぶだけだ)


 足音が走る。


「アルト!」


 リシアだ。


 息を切らしている。


「本当なの?」


「はい」


 簡潔。


「退学って……」


「勧告です」


 言い直す。


 だが実質は同じ。


 リシアの瞳が揺れる。


「私のせい?」


「違います」


「昨日、あんなこと言ったから――」


「違います」


 強めに言う。


「これは、最初から決まっていた」


 理論を語った時点で。


 才能主義の学園には居場所がない。


 沈黙。


 リシアの拳が震える。


「王都に行くの?」


「……分かりません」


 本音。


 研究はしたい。


 だが。


「あなたはどうしたいんですか」


 逆に問う。


 リシアは言葉を失う。


 どうしたい?


 家の期待。


 首席の地位。


 炎の名門。


 全部が頭をよぎる。


 だが。


「私は……」


 胸の奥が熱い。


「あなたと、続きをやりたい」


 素直な言葉が出る。


 顔が熱くなる。


「炎を、壊したくない」


 アルトは静かに見つめる。


「王都に来ますか」


「え?」


「研究院なら、正式に理論を学べます」


 未来の提示。


 リシアの心臓が跳ねる。


 家は許さない。


 でも。


「行く」


 即答。


 自分でも驚くほど迷いがない。


「私も行く」


 アルトの目がわずかに見開く。


「本気ですか」


「本気よ」


 一歩近づく。


「あなた一人で行かせない」


 距離が近い。


 息が触れそう。


「私がいないと、あなた生活能力ゼロでしょ」


「……否定はしません」


 思わず小さく笑いがこぼれる。


 緊張が少し解ける。


 そのとき。


「覚悟はありますか?」


 後ろから声。


 ミレイアが立っていた。


「王都は学園より冷酷です」


 銀の瞳が二人を見る。


「感情では生き残れません」


 リシアは視線を逸らさない。


「それでも行きます」


「理由は」


「私が選んだから」


 強い。


 昨日よりも。


 ミレイアは数秒見つめ、そして小さく頷く。


「良いでしょう」


 視線がアルトへ。


「研究院はあなたを正式に受け入れます」


「条件は?」


「能力の開示と検証」


 合理的。


「受けます」


 即答。


 ミレイアはわずかに口元を上げる。


「では三日後、王都へ」


 決定。


 学園生活は終わる。


 その夜。


 訓練場。


 最後の補講。


 リシアが炎を出す。


 安定。


 美しい。


「……ここで終わりなのね」


「始まりです」


 アルトが言う。


「あなたの炎は、まだ伸びる」


「あなたが設計するの?」


「あなたが使います」


 その言葉に、胸が震える。


 自分の力で。


 だが、一人ではない。


「王都でも、教えて」


「はい」


 沈黙。


 夜風が吹く。


「……ねえ」


「何ですか」


「私がいなかったら、王都に行ってた?」


 核心。


 アルトは少し考える。


「分かりません」


 正直。


「でも」


「でも?」


「あなたがいる方が、効率が良い」


 一瞬、意味が分からない。


 そして。


「それ、褒めてるの?」


「はい」


 真顔。


 顔が熱くなる。


「……本当にずるい」


 小さく呟く。


 炎が二人の間で揺れる。


 ゼロと呼ばれた少年と、


 炎に縛られていた少女。


 才能の檻を抜け、


 王都という新しい舞台へ。


 だが。


 王都では、もっと大きな檻が待っていることを、


 まだ二人は知らなかった。


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