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零式魔導設計士 ~全属性適正ゼロ判定の俺、実は世界の設計者候補でした  作者: 白峰アキラ


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第23話 初敗北

 水界中枢――結晶海の中心にそびえる、水晶塔。


 塔の内部は、透き通る青い光で満たされていた。


 床も壁も、巨大な結晶で構成されている。


 その中心。


 脈打つ核。


 七中枢の一つ、水界位相安定核。


「……揺れている」


 セラフィナが小さく呟く。


 塔の最深部。


 巨大な水晶柱が、断続的に明滅している。


 光が強くなり、弱くなり、また強くなる。


「振幅が大きすぎる」


 アルトは視界を深く沈める。


 第一層から第四層まで、複雑に絡み合う構造。


 都市魔法陣とは桁が違う。


「修復可能か」


 レオンが問う。


「干渉の痕跡があります」


「クロノス?」


「恐らく」


 リシアが炎を纏う。


「壊せば止まる?」


「駄目です」


 アルトが即答する。


「中枢は楔です。抜けば全体が揺れる」


 その瞬間。


 空間が歪んだ。


 塔の中央に、黒い裂け目。


 クロノスが現れる。


「到達、確認」


「やっぱりあなたね」


 リシアが構える。


「観測最終段階」


 冷たい声。


「触媒の選択を測定する」


「選択?」


 アルトが眉を寄せる。


 クロノスが手を掲げる。


 中枢の光が急激に強まる。


 振幅が限界に近づく。


「停止処理、開始」


 水晶柱が凍りつく。


 青い光が白へと変わる。


「止まる……!」


 セラフィナが震える。


「中枢が完全停止すれば、周辺位相が凍結する」


 クロノスの声が重なる。


「都市、海域、生命活動、すべて」


 リシアが叫ぶ。


「狂ってる!」


「崩壊よりは無」


 冷酷な理屈。


 アルトは歯を食いしばる。


(止める)


 視界を最大まで開く。


 構造が、複雑すぎる。


 固定層が厚い。


 干渉すれば弾かれる。


「セラフィナ!」


「分かってる!」


 二人が同時に魔力を流す。


 だが反発が強い。


 中枢が拒絶する。


「触媒単独では不足」


 クロノスが告げる。


「無属性個体、同調率不足」


 レオンが前に出る。


「必要なら王家権限を解放する」


 胸元の紋章が光る。


「中枢接続権限、限定開示」


 水晶柱に、別の回路が浮かぶ。


 アルトの視界が一気に広がる。


(深い……!)


 だが。


 深すぎる。


 理解が追いつかない。


 構造が、桁違い。


「アルト!」


 リシアの声が遠い。


「集中しろ!」


 中枢の振幅がさらに上がる。


 白光が塔を満たす。


「臨界到達」


 クロノスが静かに言う。


「停止確定」


「まだ!」


 アルトが叫ぶ。


 理論を組み立てる。


 層を分解する。


 だが、干渉が弾かれる。


「……足りない」


 初めての感覚。


 届かない。


 セラフィナが苦しそうに言う。


「私、繋がりすぎてる」


 無色の魔力が暴れ始める。


「引き込まれる」


「離れて!」


 リシアが腕を掴む。


 だが中枢の吸引が強い。


「触媒、決断を」


 クロノスが告げる。


「中枢を停止させ、崩壊を防ぐか」


 一拍。


「維持を試み、崩壊リスクを負うか」


 究極の選択。


 レオンが低く言う。


「停止なら、被害は局所で済む」


「でも、止まる」


 リシアが歯を食いしばる。


 アルトは震える視界の中で、中枢を見つめる。


(完成させる)


 だが今は。


 理解が足りない。


 時間も足りない。


 振幅が限界を超える。


 亀裂が走る。


「崩壊波、発生」


 クロノスが呟く。


 塔が激しく揺れる。


 アルトは最後の手を打つ。


「第三層固定、強制安定!」


 魔力を全放出。


 視界が焼ける。


 だが。


 中枢は、動かない。


 白光が弾ける。


 衝撃波。


 アルトの体が吹き飛ぶ。


「アルト!」


 リシアの叫び。


 視界が暗転する。


 最後に見えたのは。


 水晶柱が、完全に白く凍りつく瞬間。


 ――停止。


 意識が沈む。


 耳鳴り。


 遠くで声がする。


「中枢、停止確認」


 クロノスの声。


「局所凍結成功」


 冷たい宣告。


「触媒、未到達」


 レオンが歯を食いしばる。


「……撤退だ」


 リシアがアルトを抱き起こす。


「起きて……!」


 セラフィナの瞳から、初めて涙が落ちる。


「ごめん……私、足りなかった」


 塔の光が完全に消える。


 水界中枢、停止。


 均衡は守られた。


 だが。


 アルトは、敗北した。


 理論は届かなかった。


 初めて、世界に弾かれた。


 遠く、王都の空が微かに暗くなる。


 均衡は保たれた。


 だが、触媒は傷ついた。


 そして世界は静かに告げる。


 ――まだ、お前ではない。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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