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零式魔導設計士 ~全属性適正ゼロ判定の俺、実は世界の設計者候補でした  作者: 白峰アキラ


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第21話 観測者

 王都北区画。


 鐘の音が止んだあとも、空気は不自然に静まり返っていた。


 研究院から急行したアルトたちは、石造りの広場に立つ。


 地面に刻まれた古い魔法陣が、淡く黒く明滅している。


「これは……中枢の補助式」


 ミレイアが低く言う。


「王都設計初期の遺構です」


 アルトは膝をつき、指先で陣をなぞる。


「第三層が逆位相に捻じれている」


「自然劣化じゃないのね」


 リシアが炎を抑えながら問う。


「違います」


 即答。


「誰かが“観測”している」


 その瞬間。


 空気が、ぴたりと止まった。


 広場の中央に、黒い歪みが現れる。


 音もなく、影が立ち上がる。


「観測対象、集合確認」


 低い声。


 仮面の男。


 クロノス。


「またあなた」


 リシアが炎を纏う。


「警告はした」


 感情のない声。


「触媒は加速している」


「あなたが加速させている」


 アルトが静かに言う。


「干渉で中枢を揺らし、反応を見ている」


「是」


 即答。


 周囲がざわめく。


「目的は?」


「均衡の維持」


「壊しているのに?」


「揺らぎは測定値だ」


 クロノスが一歩前へ出る。


「均衡は静止ではない。許容振幅内の振動だ」


 アルトの瞳がわずかに鋭くなる。


「あなたは管理者ですか」


「観測者だ」


 短い返答。


「管理は上位層」


 上位層。


 その言葉に、ミレイアの表情がわずかに変わる。


「七中枢は、外界からの干渉を防ぐための楔」


 クロノスが続ける。


「構造改変者は、楔を緩める存在」


 視線がアルトに固定される。


「排除対象」


 空気が重くなる。


 リシアが前に出る。


「やれるものならやってみなさい」


 炎が唸る。


 だがクロノスは動かない。


「排除は最終手段」


 仮面の奥で目が細まる。


「今は観測」


「何を」


「共鳴値」


 セラフィナが小さく息を呑む。


「……私?」


「無属性個体は誤差ではない」


 クロノスの声がわずかに低くなる。


「変数だ」


 アルトの胸がざわつく。


「あなたは中枢と接続している」


 セラフィナが一歩下がる。


「接続?」


「七中枢の一つと、位相が重なっている」


 静寂。


 リシアが驚きの目で見る。


「そんな……」


「だから定着しない」


 クロノスが言う。


「固定外個体」


 アルトは即座に否定する。


「彼女は装置ではありません」


「個体も装置も、世界にとっては同義」


 冷酷な理屈。


 リシアの炎が強まる。


「あなた、本気でそんなこと言ってるの?」


「感情は計算外だ」


「なら計算し直しなさい!」


 炎が放たれる。


 だが黒い膜が展開し、弾く。


「局所位相、凍結」


 空間が歪む。


 アルトの視界が再び白む。


 だが今回は、隣にセラフィナがいる。


「……見える」


 同時に呟く。


「凍結は完全じゃない」


 アルト。


「中枢側と繋がってる」


 セラフィナ。


 二人の声が重なる。


 リシアが叫ぶ。


「指示!」


「中央、三秒後!」


 アルト。


「逆位相、私が持つ」


 セラフィナ。


 炎が集中する。


 黒膜が揺らぐ。


 クロノスが一瞬、視線を細める。


「学習速度、想定以上」


 空間が砕ける。


 凍結が解除される。


 だがクロノスは消えていない。


「観測完了」


 低い声。


「触媒、共鳴者、炎」


 三人を順に見る。


「均衡値、再計算」


 そして、ゆっくりと後退する。


「次は中枢で会おう」


 影が溶ける。


 静寂が戻る。


 リシアが息を荒げる。


「中枢って……」


 アルトは広場の魔法陣を見つめる。


「呼ばれている」


「何に」


「七中枢の一つが、不安定化しています」


 セラフィナが小さく呟く。


「北」


 無色の瞳が遠くを見る。


「水界中枢」


 ミレイアが顔を上げる。


「そこは王都外だ」


 レオンが駆けつける。


「報告は受けた」


 蒼い瞳が三人を見る。


「中枢が揺れているのは事実だ」


「放置すれば崩れます」


 アルトが言う。


「均衡が壊れます」


 レオンは一瞬、目を閉じる。


「……遠征だ」


 決断。


「王家監督下で中枢を確認する」


 視線がアルトに向く。


「君も同行だ」


 リシアが即座に言う。


「私も」


「当然だ」


 レオンは頷く。


 セラフィナも小さく言う。


「私も行く」


 蒼い瞳が細まる。


「無属性個体もか」


「必要です」


 アルトが即答する。


 静かな対立。


 だがレオンは頷いた。


「ならば全員で行く」


 北の水界中枢。


 七つの楔の一つ。


 均衡の核心。


 クロノスの言葉が残る。


 ――次は中枢で会おう。


 王都の空に、重たい雲が広がる。


 物語はついに、


 都市を越え、


 世界の心臓部へと踏み込もうとしていた。

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