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零式魔導設計士 ~全属性適正ゼロ判定の俺、実は世界の設計者候補でした  作者: 白峰アキラ


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第18話 炎と無色

 北塔の位相乱流が収束してから、研究院の空気はさらに張り詰めていた。


 “共鳴”。


 アルトとセラフィナが同時に干渉点を捉えた事実は、偶然では片付けられない。


 構造解析室の一角。


 セラフィナは静かに座り、水晶を見つめていた。


「……さっきの、どうやったの」


 リシアが腕を組んだまま問いかける。


 声音は平静を装っているが、わずかに鋭い。


「どう、と言われても」


 セラフィナは首を傾げる。


「見えたから、触っただけ」


「見えた、って」


「歪み」


 簡潔な返答。


 アルトが横から補足する。


「凍結の隙間です。完全封鎖ではなかった」


 リシアの視線がアルトに向く。


「あなたも同時に言ったわよね」


「はい」


「どうして分かったの?」


「構造が薄かった」


「だから、どうして“同時”なのよ」


 一瞬、空気が固まる。


 アルトは言葉を選ぶ。


「視点が近いからだと思います」


 その一言。


 リシアの胸に小さな火が灯る。


「近い」


「はい。属性未固定型とゼロ型は、層の見え方が似ています」


 理論的説明。


 だが感情は置き去りだ。


「ふーん」


 短い返事。


 セラフィナは二人を交互に見る。


「……迷惑?」


「何が」


「私がいること」


 無色の瞳が、まっすぐリシアを見る。


 逃げ場がない。


 リシアは一瞬だけ言葉に詰まる。


「迷惑じゃない」


 嘘ではない。


 だが胸の奥がざわつく。


「でも」


「でも?」


「アルトの隣は、簡単じゃない」


 宣言に近い。


 セラフィナは瞬きをする。


「簡単?」


「危険だし、敵も多い」


「知ってる」


 即答。


「それでも行く」


 迷いがない。


 リシアの炎がわずかに揺らぐ。


「どうして」


「初めて、説明が通じたから」


 またその言葉。


 アルトの胸が微かに熱くなる。


 リシアはその表情を見逃さない。


(今、嬉しそうだった)


 その瞬間、胸の奥で炎が弾ける。


「ねえ、アルト」


「はい」


「ちょっと来なさい」


 腕を掴み、廊下へ引っ張る。


 セラフィナは無言で見送る。


 廊下の角。


 リシアが振り向く。


「何?」


「何、じゃない」


 声が低い。


「あなた、あの子といるとき」


「はい」


「少し楽しそう」


 アルトが瞬きをする。


「そうですか」


「自覚ないの?」


「共鳴が成立するのは興味深いです」


 理論的回答。


「理論の話じゃない!」


 思わず声が大きくなる。


 通りかかった研究員が驚いて振り返る。


 リシアは一歩詰め寄る。


「私は?」


 核心。


「私は、隣にいる?」


 アルトは迷わない。


「はい」


「本当に?」


「不可欠です」


 即答。


 だが今日は、それだけでは足りない。


「不可欠って、どういう意味」


「炎の制御と戦闘適応力は代替不能です」


「そういうことじゃない!」


 胸を拳で軽く叩く。


「ここ!」


 アルトは一瞬だけ言葉を失う。


「……感情の話ですか」


「そうよ!」


 静寂。


 アルトは少し考える。


「あなたが傷つくと、効率が落ちます」


「また効率!」


「違います」


 初めて、少しだけ焦りが滲む。


「あなたが傷つくと、嫌です」


 空気が止まる。


 リシアの心臓が強く跳ねる。


「嫌?」


「はい」


「どう嫌なの」


 追い詰める。


 アルトは視線を逸らさない。


「……痛いです」


 一瞬、意味が分からない。


「胸が」


 自分の胸に手を当てる。


「ここが、少し」


 リシアの顔が熱くなる。


「それ、最初に言いなさいよ」


 顔を背ける。


「本当にずるい」


 だが口元は緩んでいる。


 そのとき。


 廊下の向こうで、小さな衝撃音。


 振り向くと、セラフィナが壁に寄りかかっていた。


 周囲の空間が微かに歪む。


「……大丈夫?」


 アルトが駆け寄る。


「平気」


 だが顔色が悪い。


「共鳴の反動」


 ミレイアが現れる。


「無理をしましたね」


「私のせい?」


 リシアが問う。


「違います」


 セラフィナが首を振る。


「私が、追いつこうとしただけ」


 その言葉に、リシアの胸が揺れる。


 嫉妬と同時に、理解。


(この子も必死だ)


 炎は強い。


 だが無色は不安定。


 どちらも、隣に立とうとしている。


「今日は休みなさい」


 ミレイアが告げる。


「均衡が揺れています」


「均衡?」


 アルトが反応する。


「七中枢の一つが微弱振動を検出」


 空気が変わる。


「七中枢?」


「まだ話していませんでしたね」


 ミレイアの銀の瞳が光る。


「この世界は、七つの維持中枢で支えられています」


 リシアが息を呑む。


「それが揺れている」


「ええ」


 視線がアルトとセラフィナに向く。


「あなたたちの共鳴が、鍵かもしれない」


 遠く、王城地下。


 黒い水晶に亀裂が入る。


「共鳴率、危険域」


 クロノスの声が響く。


「均衡、再計算開始」


 炎と無色。


 二つの存在が、同時に世界の深部に触れ始めた。


 そしてリシアの炎もまた、


 新しい形へと変わろうとしていた。

ここまでご覧いただきありがとうございます。


明日からは1日1話の投稿予定です。


ブックマークをして、続きを楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。

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