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零式魔導設計士 ~全属性適正ゼロ判定の俺、実は世界の設計者候補でした  作者: 白峰アキラ


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第16話 無属性少女

 クロノスとの接触から二日後。


 王都下層で、再び異常反応が検出された。


 だが今回は、炎でも雷でもない。


「……色が、ない?」


 リシアが眉をひそめる。


 研究院の水晶球に映るのは、淡い揺らぎ。


 属性反応が検出されない。


「無属性、というより」


 アルトは水晶球に手を触れる。


「層が薄い」


「薄い?」


「第一層が定着していない」


 通常、魔法は属性という“色”を帯びる。


 だが映像の中心には、色のない揺らぎがある。


「場所は?」


「北下層、廃教会跡」


 ミレイアが短く告げる。


「観測値が不安定です。慎重に」


 廃教会は崩れかけた石造りの建物だった。


 人の気配は少ない。


 だが内部から、微かな振動が伝わる。


「いる」


 アルトが呟く。


 祭壇の前。


 一人の少女が立っていた。


 銀に近い淡い髪。


 年は十七ほど。


 瞳は無色透明。


 足元に、不完全な魔法陣。


「……あなたたち」


 少女がこちらを見る。


 感情の起伏が少ない声。


「それ以上、近づかないで」


 空気が震える。


 だが炎も雷も生じない。


「属性が、出ていない」


 リシアが驚く。


「違います」


 アルトは一歩踏み出す。


「出ていないのではなく、固定されていない」


 少女の周囲、層が揺らいでいる。


 まるで世界との接続が不安定なように。


「……見えるの?」


 少女が初めて表情を動かす。


 わずかな驚き。


「少し」


 アルトは答える。


「あなたも?」


 少女の瞳が揺れる。


「私は……ずっと、違和感があった」


 足元の魔法陣が歪む。


「属性が、決まらない」


 空気が軋む。


 第一層が安定せず、第二層が暴走しかける。


「下がって!」


 リシアが炎を展開する。


 だがアルトが手を上げる。


「待って」


 少女を見つめる。


「呼吸を整えて」


「……」


「第一層を、外に出そうとしないで」


 少女の眉がわずかに寄る。


「中に?」


「はい。固定ではなく、受け入れる」


 意味不明なはずの言葉。


 だが少女は目を閉じる。


 揺らぎが、わずかに落ち着く。


「……あなた、変」


 目を開ける。


「初めて、同じことを言われた」


 アルトは小さく息を吐く。


「名前は?」


「セラフィナ」


 静かな声。


「セラフィナ・ルーン」


 リシアが警戒しながら問う。


「あなた、何をしようとしてたの?」


「確認」


「何を」


「私が、壊れているのかどうか」


 無感情な言葉。


 だがその奥に、微かな痛み。


 アルトは首を振る。


「壊れていません」


「……根拠は?」


「層が薄いだけです」


 少女の瞳が揺れる。


「属性が固定されないのは、欠陥ではありません」


「じゃあ何?」


「可能性です」


 沈黙。


 リシアの胸がざわつく。


(可能性?)


 アルトが、こんな目で誰かを見るのは初めてだ。


「あなたは、属性に縛られていない」


 静かな声。


「だから不安定」


 セラフィナは小さく呟く。


「……ずっと、異端だと言われた」


 魔法学院にも入れなかった。


 適性測定は“判定不能”。


「私、何色でもないから」


 リシアが一歩前に出る。


「色がないなら、自分で作ればいい」


 強い声。


「炎だって、最初から赤かったわけじゃない」


 セラフィナがわずかに目を見開く。


「あなたは?」


「リシア」


 胸を張る。


「炎」


 短い自己紹介。


 セラフィナはアルトを見る。


「あなたは」


「ゼロです」


 即答。


 沈黙。


 そして。


「……同じ」


 小さな呟き。


 アルトの胸が微かに揺れる。


「あなたも、どこにも属していない」


 その言葉に、リシアの指がわずかに握られる。


 距離が、近い。


 感情が読めない少女と、理論を語る少年。


 廃教会の空気が静まる。


「研究院に来ますか」


 アルトが言う。


「あなたの層を安定させられるかもしれません」


 セラフィナは迷わない。


「行く」


 即答。


 リシアが目を細める。


「即決なのね」


「迷う理由がない」


 無色の瞳が、アルトを見つめる。


「初めて、説明が通じたから」


 その一言に、リシアの胸がちくりとする。


 研究院への帰路。


 セラフィナはアルトの隣を歩く。


 距離が自然に近い。


「あなたは、どうやって“視ている”の?」


「構造を分解するだけです」


「分解……」


 興味深そうに聞く。


 リシアは少し後ろから二人を見る。


(……何、この感じ)


 胸の奥がざわつく。


 理論を共有できる存在。


 自分とは違う繋がり。


 研究院の塔が見えてくる。


 その上空。


 黒衣の影が遠くから見下ろしていた。


「第二観測対象、確認」


 低い声。


「無属性個体、共鳴開始」


 風が吹き抜ける。


 均衡は、さらに揺らぎ始めていた。

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