第二話 西へ
ベリッツェン駅構内では、既に輸送列車の準備が進められていた。
黒い貨車がいくつも連なり、蒸気機関車からは白い蒸気が断続的に噴き出している。
蒸気の吹き出す音が、構内に低く響いていた。
新兵たちは命じられるまま、ホームに並ばされていた。
「乗車準備。」
短い号令が飛んだ。新兵たちは一斉に動き、貨車へと向かった。
その車両は人を運ぶために作られたものではない、一目で分かった。
新兵たちは貨車に押し込まれ、重厚な扉が閉まり、外が見えなくなった。
その車両には窓はなく、鉄と油の匂いがした。
「……どこへ行くんだ?」と呟く新兵もいたが、誰も答えられなかった。
そこから貨車は大きく揺れながら進んだ。
揺れは時折、新兵たちを壁に叩き付けた。
そこから1日ほど経ち、初めて車両は停止した。
「なんだ?」「トラブルか?」
そんな声が飛び交った。
数秒後、貨車の扉は開いた。
外から差し込んだ光に、新兵たちは一斉に目を細めた。
そこは駅ではなかった。
小さな停車場とも言えない場所で、周囲には低い建物と土の地面があるだけだった。
看板は無く、地名もわからない。
「降りろ。」
短い命令が飛んだ。
新兵たちは順番に貨車から降ろされ、整列させられた。
外はすでに夜だった。
夜気は冷たく、長時間閉じ込められていた体には、余計に堪えた。
周囲には同じような輸送列車が何本も止まっており、別の貨車からも新兵たちが吐き出されていく。
誰もが同じ制服、同じ表情をしていた。
下士官は名簿を手に、淡々と名前を読み上げる。
返事の声に感情はなかった。
「帝国陸軍第363歩兵連隊、第二大隊は前へ。」
その言葉に、数人がわずかに顔を合わせた。
だが、疑問を口にする者はいなかった。
整列が終わると、即座に次の命令が下った。
「ここからは徒歩移動だ。私語は禁止。」
理由は説明されず、行き先も告げられなかった。
列はそのまま闇の中へと進み始めた。
遠くで、低く鈍い音が響いていた。
砲声だった。
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