第一話 帝国陸軍第363歩兵連隊
第一話です。
帝国陸軍の動員手続きは、驚くほど簡素だった。
表に名前を書き、指示された場所に移動するだけだった。
「ボルナー・エカート」
名前を呼ばれ、前に出る。
「帝国陸軍第363歩兵連隊、二等兵。」
と下士官は顔も上げずに告げた。
その背後で、誰かが小さな声でつぶやいた。
「……363か……不運だな。」
エカートはその言葉の意味を問い返すことはしなかった。
既に列は動いており、立ち止まることは許されていなかったからだ。
次に行われた身体検査も、ほぼ形だけのようなものだった。
下士官はエカートを下から上まで見るように首を上げ、簡単に頷いた。
「持病は。」
「ありません。」
「問題なし。」
次に案内されたのは、装備受領所だった。
装備受領所の中は油の匂いがしていた。
そして机の上に無造作に置かれた制服、軍靴、ヘルメット、水筒、そしてライフルが、番号と引き換えに渡される。
ライフルは冷たく、そして重く、使い古された跡があった。
「次。」
下士官の声は単調で、誰に向けられているのかも分からなかった。
制服のサイズがあっているかどうかは確認されず、破れがあるかどうかも問題にはならなかった。
必要なのは数だけだった。
周囲の新兵たちも、同じように無言で装備を受け取っていた。
新品かどうかを確認するものはおらず、違いがあるとすれば、胸にある部隊番号だけだった。
363の数字を見て、視線を逸らすものが何人かいた。
その理由を、エカートはまだ知らなかった。
その次、命令が下った。
その内容は非常に簡素なものだった。
「本日十八時、ベリッツェン駅構内集合。遅れるな。」
そう告げると、その下士官は去っていった。
夕方、駅のホームには身長も体格まばらな同じ制服の若い男たちが並ばされていた。
行き先は告げられていない。
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