迷宮での出会い
迷宮に足を踏み入れると一瞬で空気が変わるのを感じた。
単純に洞窟など特有のひんやりした感覚もあるのだが魔力の濃度など外界とは異なる雰囲気。
これが迷宮だ、という感覚なのだがギルバートはそれを感じる瞬間が未だに好きなのだ。
「ここは結構暗いですね。灯りを用意しましょうか?」
「……ここは、私の魔法でいいよ?」
そういうと詠唱破棄で炎の塊を顕現させる。
それにともない周囲は一気に明るくなり周囲の様子を確認できた。
所謂岩を削って出来たような壁であり天井はそこそこ高いようだ。
壁際や地面などは土の部分もあり植物も転々とだが存在はしているらしい。
「よく詠唱破棄でそこまで出来ますよねお嬢様は」
「……フフ、伊達に永く魔法使いをしてないってことだよ」
周囲への警戒を怠らずゆっくり前に進む。
100メートルほど進んだところで下に降るための梯子が掛けられていた。
「降りますよ。俺が先に降りますのでお嬢様も続いてください」
「……フフ、私のスカート、覗くチャンスだね?」
「何を今さら。別にお嬢様の下着だって洗濯してるんですから下着ごときで邪な感情は抱きません。て言うか嫌なら浮遊して降りたら良いじゃないですか」
「……その方が楽だね。ギルバートも降ろしてあげようか?」
「いや、念のため俺一人で降りてみて問題なさそうならお嬢様も来てください」
「……了解。任せたよ」
慎重に梯子を下っていく。
しっかり固定はされているようで多少ビクつくものの壊れるというような雰囲気は感じられない。
10メートルほど下ると地面が見え着地する。
周囲を見渡すと広い一本道になっているようだった。
よく見ればチラホラと魔物なども確認できる。
ただギルバートを認識するや否や一目散に逃げ帰っていった。
「……なるほどね?そこそこ賢いヤツが多いな」
魔物に限らず魔獣などの類いはある程度知恵があったり実力があればその差を理解して自分より上位の存在と争いをすることは殆どないとされている。
最下層レベルの魔物などであれば向こう見ずで襲っても来る事があるためそれはそれで注意も必要だ。
しかし周辺の魔物は皆ギルバートを見て逃げた。
つまりはそれがこの周辺の魔物の格を示す“答え”である。
「━━━お嬢様!問題ないので降りてきてください」
声掛けをするとゆっくりとアリスがギルバートの元まで着地する。
「……結構大きい道なんだね」
「ええ、そのようで。魔物自体はこの辺からいるようなので油断はせずに行きましょう。今のところは俺の姿を見て逃げるくらい賢いのばかりですがいつどこから何が襲ってくるかも分からないので。それと、僅かですが奥から水の流れる音がしますので一旦そちらを目指してみましょうか」
「……うん、任せたよ」
先導するギルバートはある程度周囲に睨みを利かせながら進んでいく。
それでも時折襲撃をして来る魔物もいたがアリスの手を煩わせることもなく拳や蹴りの一撃で始末した。
歩くこと5分ほど。
水の音が次第に強くなり湿度も増してきた。
すると反響する形で奥の方から金属音や爆発音が耳に届く。
「この音……誰か戦ってますね。基本俺が対応しますのでお嬢様は服が汚れないよう気を付けてくださいね。それ、洗濯大変なんで」
「……私自身は心配してくれないんだね?」
「お嬢様強いからその辺は全く心配してないんで。
━━レーン、一応出てきてくれ」
レーンを顕現させ備える。
「レーン、気配とかから奥にいるヤツのこと分かったりしないか?」
『少々お待ちを。…………主様、おそらくこの気配はここら一帯を根城にしている魔物です。感じる魔力量から察するに問題なく対応可能かと』
「了解した。奥にいる冒険者とか怪我してそうならレーンが保護をしてくれ。魔物は俺が対処する」
『かしこまりました』
武器を取り音の方へ進む。
するとそこでは全長20メートルは超そうかという蛇型の魔物と3人の冒険者が戦っていた。
盾を構えタンク役を担っている茶髪で屈強な体躯を持つ男性冒険者は既に装備がボロボロになりギリギリといった様相。
その後ろには青い長い髪でマントを羽織る魔法使いと思われる女性と前方には魔物と袴を纏い剣で戦う赤髪を括っている女性冒険者。
どうやら魔法使いの攻撃で気を散らし隙を見て冒険者が攻撃を仕掛けるという作戦の様子。
人数は少ないがレイドバトルの基本となる立ち回りである。
ただ魔物の耐久力が想像以上に高いのか見るからに有効なダメージは入ってなさそうだ。
魔物の尻尾が魔法使いを狙って振り払われる。
その間に盾を持った男性冒険者が立ちふさがり何とか受け止めきった。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「俺は大丈夫。アスカは魔法を打ち続けて。じゃないとリンが持たない」
「ちょっと?私はまだ平気ですけど?」
リンと呼ばれた冒険者は一端後方に退避する。
彼らの目から見ても魔物には大してダメージは入っていない。
このまま続けてもジリ貧でいずれこちらが負ける。
どうするかを考えていると、
「━━━伏せろ!!」
「「「!?」」」
後方から突如そんな叫び声がし、反射的に地面に伏せる。
その直後頭上を水の斬撃が魔物に向かって放たれるのを確認した。
するとそれは魔物の胴を見事に捉える。
『━━━━━━』
耳をつんざくような悲鳴が響く。
そんな魔物めがけて後方からエンチャントを受けた剣を手にしたギルバートがやってくる。
「下がれ、ここは俺が対応する」
「だ、誰かは知らないが……済まない。リン、アスカ退くぞ」
ギルバートに促され後方に退避し行く末を見守る。
「……大丈夫だよ、ギルバートなら」
「うぉ!だ、誰!?」
「……私はアリス。彼は私の使用人。私の次くらいには強いから大丈夫、だよ?」
「は、はぁ……?」
アリスの不思議な雰囲気に飲まれる。
アリスはタンクをしていた男性とリンと呼ばれた少女に視線を向けるとおもむろに手を翳す。
すると2人の身体が光り瞬く間に先ほどの戦闘で負った傷が癒えていく。
それを見て魔法使いのアスカは目を見開く。
「い、一瞬で今の傷を。一体貴女は……?」
「……それは後で。今はギルバートを見た方がいい」
聞きたいことは既に山ほどあったが今はアリスの言う通り戦いを見守ることにする。
「レーン、あいつは俺の記憶が正しければ毒液を吐き出す。向かってくるヤツを全部落とすか浄化できるか?」
『もちろん可能です。私を信じてくださいまし』
簡単に指示を送り動き出す。
やることとしてはシンプル。
ギルバートが前衛をし、出される毒液をレーンが無効化する。
作戦と呼ぶには烏滸がましいがこの2人に限って言えばそれで十分。
ギルバートの予想通り魔物は毒液をギルバート目掛けて吐き出すが、ドンピシャなタイミングでレーンの魔法で相殺する。
その直後既にエンチャント済みの剣を構える。
先ほどは距離があったため斬撃は十分当てることはできなかった。
だが距離を詰めた今は違う。
(ここだ)
毒液を吐き隙の生まれた頭部の辺りに狙いを定める。
下から振り上げる形で斬撃を飛ばす。
威力は十分、タイミングはバッチリ。
ドスンッ!と重量のあるものが落ちる音が響く。
結果としてものの一撃で首を切り落とし魔物は絶命した。
『お疲れ様でございます主様。エンチャントも実戦で十分できるレベルまで持ってこれましたね』
「ありがとう。レーンのフォローもあったから楽に立ち回れたよ」
『えへへ、もっと褒めてくださっても良いのですよ?』
「それはまたあとで。今は彼らの方が優先だ」
そういってアリスのもとで戦いをみていた3人に視線を寄越す。
「あんた達大丈夫か?」
「あ、あぁ……助かった。俺はガイ、この二人は俺の妹だ」
「ありがとうございました、魔法使いのアスカです」
「助かったわ。私は剣士のリン」
「俺はギルバートだ。本業は冒険者だが今はそちらにいるアリスお嬢様の使用人をしている」
自己紹介を終えると話を聞く。
どうやら彼らは魔剣の噂とかは知らないようで腕試しの一貫としてギルドから比較的難易度が高くないと言われたこの迷宮に来たとのこと。
「だがあの蛇は明らかに事前に聞いていた迷宮のレベルを遥かに越える強さだった。階層主でもないのに」
「確かに野良で出るのにしては強そうではあったな。以前他の迷宮であのタイプの魔物とは戦った経験はあるがサイズが違いすぎる。恐らく迷宮では割りとよくある魔物の突然変異か何かだろう。初見で3人だけで挑むにはちょっとハードだと思うが、むしろよくあれくらいのダメージに押さえられたな」
「死にものぐるいだったからな。そもそも完全にこちらのリサーチ不足だった。ギルバートさんが居なければどうなっていたか」
「でも遠目からみた作戦は良かったと思うぞ。特に剣士の彼女の動きは良かった。経験を積めば相当強くなれるぞ」
「……ギルバートさん、一つ頼んでもいいか?」
「なんだ?」
「もし良かったら俺たちをあんたたちの冒険に同行させてくれないか?俺は兎も角、妹達にいい経験をさせてやりたい。それにその魔剣を探したいなら人数も必要だろう。俺たちには必要ないものだし横取りとかはない。と言うかギルバートさん達を欺いてそんなことは出来ないと思うし。勿論足手まといになりそうならそこで離脱する」
「…………。お嬢様?」
ギルバートは数秒悩んだがあくまでもその辺の裁量はアリスに委ねる。
「……いいと思う、よ?」
「だ、そうだ」
「ありがとう。ギルバートさんには不要かもしれないけどタンクは俺が担う。出来ればギルバートさんにはリンにアドバイスとかして貰えないか?」
「分かった。キミ達もそれでいいか?」
「は、はい……よろしくお願いします」
「ってことはギルバートさんが師匠役ってこと?」
「別に無理にとは言わないよ?リンちゃんが嫌なら別にアレコレ言わないし」
「嫌じゃないわ。むしろギルバートさんみたいな強者に教えを乞えるのはありがたいもの」
「あ、あの……ギルバートさんが連れてらっしゃる精霊は?」
アスカはずっと気になっていたレーンについて質問をする。
するとレーンはアスカの近くに向かい周回する。
『私は先日より主様にお仕えをしている精霊です。主様に施したエンチャントも私が行ったものですよ』
「一応上位精霊ってやつみたいでちゃんと意志疎通図れるし色んなお願いを聞いてくれるよ」
「や、やっぱり。私、喋れる精霊を初めて見ました」
「気になるなら色々話をするといいよ。俺は魔法のことは分からないし。リンちゃんには俺が戦い方を教えて上げるし、アスカちゃんはレーンに教えて貰えばいいよ」
「い、いいんですか?」
「レーン頼んでもいいよな?」
『勿論にございます。アスカ殿、私が答えられる範疇でしたら助言はいたします故気軽に声をかけてくださいね』
「あ、ありがとうございますレーン様」
早速レーンと話をするアスカを他所にアリスに確認をする。
「じゃあお嬢様、行きましょうか」
「……うん、そうだね。あと、ギルバート?」
「なんでございましょうか」
アリスが手招きをするので屈んであげるとアリスは少し背伸びをして耳元で━━━
「━━━……浮気は、ダメだよ?」
と、囁く。
が、とうのギルバートはと言うと。
「何の話ですか?別にお嬢様とは恋仲でもないしリンちゃんの事を言いたいなら見当違いですよ。それに、俺はお嬢様を殺すと約束したじゃないですか?それまでお側を離れるつもりは無いですから」
あっけらかんというギルバートに少しドキッとするアリス。
「まぁ、上手く行けば今回が最初で最後かもしれないですけどね」
改めてガイ兄妹を含めた面々で迷宮の奥を目指し歩みを進める。
道中何度も魔物とはエンカウントし戦闘になるがガイ兄妹の実力はまずまずある様子だった。
最初に戦っていた魔物との相性が悪かっただけで実力的にはちゃんとこの迷宮で立ち回れるだけは持ち合わせているようだった。
お陰でギルバートはいらない労力を割かず済んで内心ラッキーくらいに思っていた。
名目的にも指導をしたいという体がある。
そのためにはリンに動いて貰う必要がある。
勿論ちゃんとそれに対するフィードバックは怠らない。
更に面白いのはリンは言われたことをすぐに吸収して実行できると言う点。
一方のアスカはレーンからのアドバイスを受けているが、人間と精霊と言う種族の差もあり理解には時間を要している様子だった。
ただアスカはアスカで一生懸命この機会を活かそうと頑張っておりそれはレーンも理解している。
時折アリスも混ざりながら指導をしているようだった。
ちなみにガイは戦士としてのタイプが違うためアドバイスが出来ないが、妹たちが成長する様子を嬉しそうに見ていた。
道中ギルバートからガイに声をかける。
「すまないなガイ。キミに何かを教えることが出来なくって」
「いや、気にしてない。むしろ俺たちのような足手まといを受け入れてくれて感謝している。妹たちも成長してるし俺じゃ出来ない事だからな」
「リンちゃんは中々筋が良いぞ。師はいるのか?」
「基本は独学だ。ただ1ヶ月程極東の出だと言う老剣士がウチの故郷に滞在してた際色々教えて貰ってた事はあったな。とは言え期間も短いしそれほど多くの事は教わってないハズだ」
「なるほどね?しかしほぼ独学であれはセンスの塊だね。教え甲斐がある」
「師匠の教え方が上手だからだよ」
話を聞いてたのか前方を歩くリンが振り返る。
「今までね、何人か話を聞いたことあるんだけど感覚を言語化するのって難しいから見て学ぶばっかりだったんだ。でも師匠はちゃんと分かりやすく言葉にしてくれるしスゥーっと入るからどんどん強くなるのを感じて楽しいよ」
「じゃあ折角だし一つくらい必殺技を授けてもいいかもな?」
「え、本当!?」
必殺技という素敵な響きに眼を輝かせるリン。
「と言っても今のリンちゃんで出来るヤツだからハチャメチャに強い訳じゃないからな」
「約束だよ、師匠」
「迷宮を抜けたらな?
さぁそろそろこの道も終わりっぽいな」
そう言って歩みを進めると拓けた空間が現れる。
どういう理由か外と変わらぬ明るさが天から降り注いでいる。
小高い丘のような場所に出たことで全容がざっと確認できる。
水や草木も生えておりちょっとした森のような空間になっていた。
「ギルバートさんここは?」
「セーフポイントだな。ここなら殆ど魔獣も出現しないし普通の動物が生息している。ちょっと奥の方には煙が立ってるだろ。多分俺たち以外の冒険者がいるんだと思う。ちなみにこの明るさはどの迷宮のセーフポイントでは確認されているがメカニズムは不明だ。ちゃんと外界の時間とリンクしてるから夜は暗くなる」
「ではここで野営を?」
「そうだな。お嬢様、それでも大丈夫ですか?」
「……うん、いいよ。アテンドは任せていいよね?」
「勿論です。まずは降りて少し拓けたところを探しましょうか」
少し迂回する形で森に降りると木々を掻き分けて先へと進む。
しばらくすると水が流れる音が聞こえ出す。
音の方へ進むと少し拓けた河原と小川が視界に入る。
「レーン、ここの水は人体へ影響するか?」
『いえ、見たところとても綺麗な清流です。一応煮沸が推奨はされますがそのまま飲むことも可能です。もしそのまま飲まれたいのであれば仰って頂ければ私が浄化できますのでお気軽にどうぞ』
「ありがとうレーン。数本木を伐採して簡易的な拠点を作ろうか。お嬢様、申し訳ありませんがしばらくお待ちください」
「……なら少しこの辺見てるよ」
「分かりました。もし何かあれば教えて下さい」
「ギルバートさん、俺たちは何をすればいい?」
「ガイには力仕事を手伝って貰いたいと思っている。リンちゃんとアスカちゃんはお嬢様と一緒に辺りの散策とかしててもいいしこっちを手伝ってくれてもいいけど」
「ならギルバートさん、リンには食事の準備をして貰うのはどうだ?俺が言うのもアレだけどあぁ見えてリンは料理得意だから」
「お兄ちゃん一言余計。でも師匠、料理が得意なのは本当だから私に任せて」
「ならお願いしようかな?……ちなみにアスカちゃんは?」
視線を向けるとアスカは少し慌てた様子を見せると消え入りそうな声で
「わ、私は……料理は苦手なんです……」
と訴える。
「そう言うことだからアスカは私と食材調達に行きましょう」
「ならレーンも一緒に行ってくれ。もし何かあれば俺がすぐに向かうし」
『承知いたしました。ではリン殿、アスカ殿向かいましょうか』
レーンが先導するような形で3人は森の方へと入っていった。
アリスはというと靴を脱いで小川に足を付けてパチャパチャと水を蹴っていた。
「さて、大きいヤツを4本くらい伐採させて貰おう。簡易的に骨組みを組んで雨風を凌げるようにしたい」
「分かった。伐採は俺に任せてくれ。切り分けも指示してくれたらその通りに俺がする」
「そこまでいいのか?」
「勿論だ。寧ろ戦闘以外のこう言うところで仕事しないと申し訳ないからな」
そういうとガイは戦いでも使っていた斧を手にすると横一線に振り抜く。
するとおおよそ膝くらいの高さの切り株を残して丁度4本の木を切り落とした。
柱と簡易的な屋根と壁様にガイに加工をして貰い、後はギルバートが設置を行う。
一方その頃リン達は。
「アスカ!動き止めて」
「うん!」
リンとアスカが連携し野生のシカを捕獲しようと試みる
。
森を駆け抜けるリンはその視線の先に逃げ惑うシカを捉え続けている。
「━━━【ショット】」
簡易的な魔力だけを固めた放出魔法である【ショット】をシカの周りを狙い撃ち抜く、
アスカの魔法の補助を貰うとシカの足が止まる。
威力を抑えた放出魔法がシカの前に放たれ反射的に横に回避する。
そこを狙っていたリンは一閃、シカの首を切り落とす。
一撃で絶命したところでレーンがシカの前にやってくる。
『素晴らしいです。では保存しましょう』
レーンが手を翳すとシカの身体が青白く光る。
光が収まると流れていた血は無くなっている。
『血抜きは済みました。肉が痛まぬよう低温で保存できるよう私の魔法でコーティングも完了です』
レーンの魔法で血抜きも終わらせると次の食材調達に向かう。
「ねぇリンちゃん、今日は何を作るの?」
「さっき仕留めたシカと持ってきた調味料で簡単にステーキでも作ってみようかなって。ソース作りに欲しいから木の実も探すよ」
木の実など見つけてはレーンに食べられるものか鑑定して貰い良さそうなものについては採集する。
「これだけあれば十分かな?下ごしらえもあるし帰ろっか」
食材調達に出掛けて2時間ほど。
どれほど拠点が出来ているか楽しみにして帰る。
拠点に帰ると思わず3人は眼を見開いた。
そこに映っていたのは━━━
「え、ログハウス???」
平屋ではあるものの延床面積としては十分すぎる大きさのログハウスが完成間近であった。
屋根の取り付け中だったギルバートは3人に気付くと作業を止めて降りてくる。
「お疲れ様。獲物は取れたか?」
「う、うん。……師匠?これたった2時間で作ったの?」
「あぁ、ちゃんと個室も作ったからプライバシーは確保できるし安心してくれ」
「え、どうやって作ったの?本当に」
「上に木材を運ぶとかはお嬢様のお力添えもある。が、基本は俺とガイで作り上げている。あ、まだこっちはかかりそうだし何か炊事とかするなら釜戸とかは川の辺りに作ったからそっちで頼む」
言われるまま川の方に向かうと釜戸が2個設置してあった。
その脇にはアリスが座っており再び水に足を付け、今度はボーッと空を見つめていた。
「あの~アリス……様?何をしているの?」
声をかけられリン達に気付くと足を引き上げて立ち上がる。
「……あ、お帰り妹ちゃん。立派なシカだね」
「あ、うん。ありがとうございます」
「…………」
「…………」
(気まずい!まだ出会って数時間だけどアリス様の表情に感情が無さすぎて何考えてるか分からないんだけど!?ちゃんとコミュニケーション取れてる師匠凄すぎ)
リンとアリスが沈黙の中見つめ合う。
あの間を割るようにレーンが動く。
『アリス様、釜戸を用いたいのですが炎をお願いしてもよろしいですか?』
「……うん、じゃあ━━━はい」
人差し指を釜戸に向けると触媒無しで火が点る。
「凄い!流石アリス様」
「!?」
「……フフ、このくらい朝飯前だよ?」
素直に魔法使いとして尊敬の眼を向けるアスカ。
一方のリンは純粋にその異次元の能力に対して一種の恐怖心を抱く。
こう言ってはなんだが、アリスが本気を出せば間違いなく自分達は一矢を報いること無く殺される。
それだけの力量差があることは明確。
絶対に敵に回してはならないタイプだと改めて強く認識する。
「……どうかした?」
「い、いえ。ありがとうございますアリス様」
「……料理、期待してるね?」
アリスは純粋に料理を楽しみにしているのだが、変な警戒心を抱いたリンは下手なものを出そうものなら殺されるくらいのプレッシャーを勝手に感じることとなった。




