第二十二話
レイチーは激しい衝撃に震え、その身体は青白い光に包まれた。光は次第に濃くなり、彼女の輪郭は柔らかく溶けていった。
そして、その意識は小さな飴玉の中へと吸い込まれていく。飴玉は戦場の中心で青く煌めき、膨大な情報の波が内部でうごめいているのがわかる。さながら"小さい牢獄"である。
かつての凶暴な姿は消え失せ、結晶の中の重く鋭い波だけがそこに残っていた。
仲間たちは息を飲み、その不可思議な光景を見つめていた。
安堵の空気がやっとわずかに戦場に満ち始める。
だが、表情の硬いホシノとテッサは互いに視線を交わしーー
「これで、終わったんだよな?」
「ええ、ダンジョンの成長にどういう影響を及ぼすかわかりませんが」
「まさか飴玉がコアになるとはな……」
「監視を強めるよう指示を出します」
テッサは小さく頷き返す。
二人の決意は冷静で重みがあり、周囲の空気を引き締めていた。
やがて、落ちていた飴玉をじっと見ていたフィナが、飴を拾った。
彼女は中に渦巻く波を見つめ、深く息を吸い込むと、静かに心を決めた。そして小さな飴玉を口に含んだ。
瞬間、時間がほんの一秒だけ止まったように感じられた。
「「「「「あーーっ!!」」」」」
仲間たちの驚きと不安が交じった声が、一斉に戦場に響き渡る。
膨大な情報が一気にフィナの身体に流れ込む。目の奥が揺らぎ、呼吸が乱れ、全身に激しい衝撃が走る。
彼女は膝をつきそうになりながらも必死に踏みとどまる。
ホシノが慌てて駆け寄り、肩をつかみ声をかける。
「フィナッ!!お前何やってんだ!?」
フィナは震える声で答えた。
「……あの……その…………」
その揺らぐ瞳の奥には、決意の火が灯り続けていた。しばらくの静寂の後、フィナは小さな声でぽつりと言った。
「美味しそうな味に見えたの……」
それは思わず漏れた無邪気な一言に、仲間たちは息を呑み、一斉に罵声を上げた。
「拾い食いすんなって言わなくてもわかんだろ!コアだぞ?ダンジョンのコ!ア!!」
「フィナさんが!!盲点でしたっ!!!」
「頭は大丈夫か」
「これもうフィナちゃんが素手でとどめ刺したのと一緒じゃないッ!!!」
「……トメ、待たせたな。結婚してくれ」
「あなた、現実逃避しないで、絶対今じゃないですよ?」
苦しみながらもフィナの顔に僅かな笑みが浮かぶ。
しかし、その身体は徐々に重くなり、意識は遠のき始めていた。
彼女の呼吸は浅くなり、視線は次第に薄れていく。
フィナは深い闇へと沈みゆくように、ゆっくりと目を閉じた。長い混濁の果て、光は霧散し、静かなる眠りが彼女を包み込んだ。




