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間話「酒場にて〜いつかのL〜」

 あたしが思うに、一般的に信じられている通説はこうよ。

 一つ、ダンジョン内からダンジョン由来の生物は外に出てこれない。

 二つ、ダンジョン内の残骸や死体は、時間が経てば自然に吸い込まれて消える。


 間違ってはないけどね。クリーニングポニーで働く限り、二つ目なんかは“虚構”って思っておかないと仕事にならないの。


 そう、あたしたちの掃除がなければ悪臭と害虫と瘴気は溢れ、人間は都市で生活できない、と。


 なんで?って、その方がみんな余計なこと考えず、黙々と作業に没頭できるでしょ。薬剤も道具も、全部こっちが用意するし。私たちだけが真実を知ってる――ふふ、悪くないでしょ?

 

 ま、でも“真実”なんてそう簡単にはつかめない。 だってさ、ダンジョンは気まぐれで増えるし、路地裏や市場の地下、丘の下とか、いつの間にか増殖してる。こんなの全部、掃除しきれるわけがないでしょう?

 実は目の届かないダンジョンで、瘴気が地上に漏れ出て、手遅れになった場所があるかもしれない。


 そ。そういうの、ないでしょ?

 ないのよ。だってダンジョンが全てを吸収してるんだから。群体性生物ってやつ?まるで植物みたいに、何でも吸い込んで、胞子飛ばして、根を伸ばす。

 それが本能。拡張したい――飢えた生物の性よね。

 

 最近お隣さんの研究で分かったことがあって、ダンジョンの拡張スピード、魔物の種類、宝箱、罠の数、その他諸々は、宿主によって変化するってこと。


 “宿主”?宿主は宿主よ。うちで言えば、竜種。


 で、話を戻して、クリーニングポニーは何してるかっていうと、ダンジョンの成長を抑えてるの。

 清掃と修繕、壁や床に《胃毒》混ぜて抑制して、吸収優先度の高い人間の死体は、毒を塗布し吸収させる。死者の尊厳なんて二の次よ、身内だって持ち帰らない。

 そうしてダンジョンに毒を蓄積させて、拡張ではなく回復に栄養を使用させる。もちろん、それでもじわじわ成長してんだから、困ったものよ。

 

 最近?ん〜竜種が強いわねぇ、被害は半々かな。まあ、居場所が分かったから、明日には追い込みかける予定よ。

 今やらなきゃ、人間の生活がダンジョンと共生どころか、依存になっちゃう。放っておくと、じわじわ衰退するだけよ。

 あんたも気合い入れなさい。

 

 あのねぇ……あたしみたいな専業の掃除人なんかに遅れをとるなって言ってんのよ。能力あるくせに慎重なのは、あんたの悪い癖。ふふ、大丈夫よ、見た感じそこまで強くなかったから。

 それと、トメにいいとこ見せて求婚しなさい。子供は早い方がいい。


 なに?ああ、うちのチビがピーピーピーピーずっと泣いてるだけ。10歳にもなっても泣き虫……ダンジョンにぶち込んでやろうかしら。


 ふふ、冗談よ。あたしは真顔で冗談言うタイプだけど、さすがにね。旦那にドヤされるわ。

 明日も早いわね、それじゃあ、また。


 さぁ。

 竜を掃除して……ダンジョンを殺してやる。


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