十周年記念式典 ⑨
そして葉流と真純の闘いが始まった。
「葉流、俺の動きを読めるんだろ。なら、さっさと攻めてこいや」
真純が気を貯めてながらそう口走ると、葉流がすぐに答えた。
「はは、兄ちゃん。今、隙だらけだよ」
真純はそう聞いてすぐに脇を締めた後に再び葉流をじろりと見た。予選はこの術で相手を見事打ち負かしてきたので、その一言が妙に癇に障った。
「じゃ、よう。お前もさっきの奴と同じようにしてやるだけだ」
真純がそう答えた後、すぐにそれを葉流へ解き放った。
「そりゃっ、いっけえ」
そうした二人のやり取りを香純は冷静に見ていた。おそらくこのエネルギーは致命的なものにはならないだろう。そう思いながら二、三度程片足を踏んだ。
やがて迫るエネルギー弾を見て、葉流は両目を一瞬だけ閉じてこう思った。
「こりゃ、本気だな。よし、じゃあ僕も」
直後に葉流の全身が虹色へと光始めた。
真純はその変化を見ては内心少しだけ焦ったが、このまま両手に力を込め続けるしかない。葉流の全身から放つ光が眩し過ぎて、次第に目を細めてこう言った。
「な、なんだよ、お前。おい、こんなの今まで見たことないぞ」
「warutusanerugan,ushuburunerugar・・・」
真純の声を聞きながら葉流が言葉を呟くと、すぐに自身の体が空中へ浮き出した。そして真純が放ったエネルギー弾が迫る寸前、己の姿を消した。
「瞬間移動か。いや、違うな」
葉流はどこへ姿を消したのか。今、壇上には真純しかいない。
「おいっ、葉流。一体、どこに隠れたんだ。このまま出てこないなら俺の勝ちだぞ」
真純がそう言うと後方から声がした。
「ははっ、兄ちゃん。ごめんね」
そう聞こえた途端、真純の背部がぐいっと前に押し出され続けた。誰も触っていないのに何かが背部押し出してくる。痛みはまるでない、
「お、おい、なんだよ。止まらねえぞ」
真純はそのまま舞台袖へと見えない力で押し出されて、結句はそのまま場外負けとなった。周囲の皆は一体、何が起きたのかまったくわからなかった。これは先のマジックではなく、実際には本人が意図的に場外へ歩いたのではないか。そう議論しているとふと再び姿を現し、葉流が鼻の下を擦ってこう言った。
「どう、この術。すごいでしょ」
次にリンの出番を迎えた。対戦相手は同年齢の男の子で近所では見ない容姿の持ち主だった。リンは横目で何度もその姿を自然と追っていたが、たまたまふいと相手と目が合った。ちょうど二人が壇上呼ばれた直後のことだった。
「やっ」
そうした声がしたのでリンがそこへ目をやると、相手が満面の笑みで右手を広げていた。
「これから闘うのに、何よ」
リンはそうこぼしながら、すれ違いざまにその手へ軽くタッチした。そこに不思議な余韻が残っている。
「やっ、久しぶりだねっ。リンちゃん」
「えっ、あれっ」
相手の言い方はまるで久しぶりに合った友達同士のようで、まるで敵意を感じなかった。しかしリンは念の為、この人をじっくり見てみることにした。
相手の年齢は同じくらいで身長は150㎝程度、細身で笑顔がとてもよく似合う男の子。きっと同じ学校にいる女子の間では話題の人だろう。そうと思っていると、相手が右手をそっと差し出してこう言った。
「ははっ、元気そうだね」
全く初対面のはずだが今、確かに久しぶりと言った。
「えっ、ちょっと待ってよ」
そう言った後、リンの表情はそれまでと一変した。それからは全く曇りない笑顔で答えた。
「わかった、イシ君だ。ねっ、イシ君でしょ」
「さ、さあ、どうかなあ。まずはその前に質問。リンちゃんが一番、好きな食べ物ってなあに」
これは随分前にリンがイシへした質問だった。それを覚えていたリンが
「何だ、やっぱり知らないんだ」
呆れ顔でそう言うと、イシは急に姿を変えた。
「おやっ、これは」
それを見たリンの眼の前にはその食べ物が現れた。腹が減っていたのでその一つを手に取り食べてみたらとても美味しかった。しかし、何かが足りない。
「ううん、おしい。でも・・・、ほぼ正解」
イシは予想とは異なる反応を見てこう返した。
「えっ、ほぼって。何」
するとリンが真顔でこう答えた。
「だって、これはイシ君が作ったものだもん」




