十周年記念式典 ②
それから十年後となった現在もリンはその約束を守り続け、自身の力を底上げするため切磋琢磨していた。やがて記念式典の開催が決まり、ようやく皆の前でこの力を見せることが出来るので気分が高まってきていた。もちろん香純やトクもこの機会を無駄にしないようにと夜遅くまで訓練し、子どもたちそれぞれの力に頷き始めた時のこと。実際に父の術を見てみたいと子ども達がせがむので、香純は肩幅程度に両足を広げて少し膝を曲げて両手を空へ挙げながら言葉を念じた。すると眩しい光の球体がそれぞれの手に現れ、そして大きな声を発するとそれぞれがその手を離れて勢い良く飛んで行った。
「ふう、このくらいやらねえとな」
香純がそう言うも二人は腰を抜かして後方へ転げていた。
「痛てて、そんなことが出来るならもっと早く教えてくれよ」
「それじゃお前達のためにならんだろう。よし、もういっちょやるからしっかり見とけよ」
「わ、あわわわ。ちょっ、ちょっと待って」
「ははは、よし行くぞ」
香純はそう言いながら自身の両手掌を胸元に近づけ、そして次に小声で何かを呟くと今度はサッカーボールくらいの大きさで熱を帯びた白い球体が次第に大きくなりながら現れた。父は今度は上空ではなくこちらへ向けている。迎え撃つか、それとも回避するか。兄妹二人はそろりと近寄り、それぞれの耳元で小声で囁いた。
「リン、どうするよ。お父ちゃん本気でやってくるかも」
「うん、まず私が先に行く。お兄ちゃんもその間にあれをやってみてよ」
「ううん、まだまだ完璧じゃないんだけどなあ。まあ仕方ない、やってみるか」
リンはそう言うとすぐ父の懐めがけ颯爽と走り出した。それを見て香純はにんまりと笑みを浮かべ、そのまま両手掌に念をさらに集中した。そしてサッカーボールほどそれをリンの方へ放ち、閃光と爆音が鳴周囲に鳴り響いた。リンはその光った瞬間、自身の姿を香純の頭上二メートル程の高さへ移動した。そのため香純はその向きを変えて頭上へとやったが、再びリンが姿を消したので放出を止めた。
「何それ、かめは○波みたい」
「そうだろ、漫画で覚えたんだ」
「うそ、うそだあ。そんなやり方なんて書いてなかったもん」
「ん、あったぞ」
「じゃ、どうやってやるの」
「こうやるんだ」
香純はそう言って再び両手に念を集中すると再び球体が再び現れた。
「いいかい、これは単に念の大きさだけじゃないんだ。どのくらいの量をここに出現させるのかを最初に心の中で決めるんだ」
「え、どういうこと」
「だからまず相手を見てから判断するんだ、この量を与えるとどうなるのか。そこまで理解するとこうして現れるんだ」
「リンには難しくて全然わかんない」
「はっは、まずはちょっとやってみろ」
リンは父に言われた通り強く念じ始めると、真純がいつの間にかその後方にいた。
「お、おい」
驚いた香純は息子へそう言ったが、すでに真純の手掌からりんごサイズの二つが放たれた直後だった。
「お、おい、俺はまだ放ってない。と、止まれー」
そう言って即座に両手を引っ込めたが父の背へ命中した。
「う、うわあああ」
直後に爆音が鳴り、土煙で何もかもが見えないまま尽くしていた。先程まであったそこにあった父の背中が全く見えない。もしやと思いながら真純はゆっくりとリンの方へ振り返った。
「お、おい。こりゃあやばい。お、お父ちゃんが・・・」
爆風の中で長い髪を片手で掻き上げながら、リンは何も言わずにうつむいていた。さすがにまずいと思ったリンは数秒後にこう言った。
「ど、どうしよう」
その一言から二人が少し沈黙していると、山の向こうが一瞬だけちらりと光ったのが見えた。
「あれっ、今、あそこ光ったよな」
真純が何度か目を擦ってそう尋ねるとリンも同じように言った。
「う、うん、光った」
次の瞬間、二人の目の前へつむじ風が巻き起こった後に香純が戻った。その額には少し汗を滲ませ、そして息もやや弾んでいた。
「ふうう、今のはちょっと危なかったな」
「お父ちゃん」
最悪のことを考えていた時にこうして再び現れたので、二人は嬉しくて父に飛びついた。
「お、おいおい、お前ら」
真純は相当堪えたのか、その顔を見るなり飛び込んで行った。父がそっと両手で抱きしめるとリンもその背に抱きついたまま涙ぐんだ。
「驚かせて悪かったよ。本当はすぐにでも帰れたんだけど、これも必要だと思ってね」
香純は笑顔で二人の頭を優しく擦りながら続けた。
「いいかい、これはそれくらい危険な術だ。これを使う時は自分や誰かを守る時だけ。よく覚えとけよ」
そう言って二人の頭を両手で優しく撫でた。
「それにしても真純、お前いつの間に出来るようになったんだ。驚いたぞ」
「本当は今度の式の時に見せようと思ってたんだけどね」
「良かったわ、本番にぶっ放す前で」




