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真の聖戦戦争  作者: ガネスー
第一章 目覚め(続き)
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第二章 罪と祈り(拓也の過去)

今から六年前。

それは、世界中の山々が一斉に噴火し、“悪魔”が地上に現れた年。

人類が最初に絶望した年であり、拓也にとって家族を喪った日だった。



「お兄ちゃん……!怖いよっ!」


まだ9歳だった妹・優奈の手を引きながら、拓也は山麓の村を必死に走っていた。

空からは黒い火山灰が降り注ぎ、地面は揺れ続けていた。


村の外れに突如現れた“それ”は、赤黒い翼を持つ獣のような悪魔だった。

人々は、逃げる間もなく焼かれ、喰われ、潰された。


だがその時——


もう一体の悪魔が現れた。

白銀の鎧のような姿をしたその悪魔は、炎を吐く獣の首を切り落とした。


「………………」


何も言わず、ただ優雅に剣を構えるその姿は、まるで——守護者だった。


「お兄ちゃん……あれも、悪魔?」


「……分からない。でも……助けてくれた」



彼は、その日から“悪魔”に対して単純に「敵」とは思えなくなった。

その白銀の悪魔はすぐに姿を消し、政府も報道も「確認されていない」と否定した。

だが拓也だけは、確かに“助けられた”という事実を忘れなかった。


後に彼は同盟軍に志願し、戦闘能力を高めながらも

灰翼グレイフェザー”という共存派の秘密組織に身を寄せる。


表向きは優秀な兵士、

裏では「悪魔にも意思がある」と信じ、行動する異端者。


その信念の核には、幼き日に見た「救ってくれた悪魔」が存在した。



そして今——


拓也は気づいていない。


エリシアと出会った時、彼の心がどこか懐かしさに震えたのは、

あの日、彼と優奈を守った“白銀の悪魔”が、彼女の「時間のスキル」で未来を知り、過去に送り込まれた彼女自身だったからだ。


この因果が、いずれ拓也に大きな選択を迫ることになる。

悪魔を守るか、人類を守るか。

過去を変えるか、それとも——未来を託すか。


物語は静かに、その運命の交差点へ向かい始めていた。







―妹、優奈の現在―


拓也は廃屋の屋上から、遥か遠くの“同盟軍中央本部”を見下ろしていた。

そこは、悪魔との戦争を指揮する巨大な指令塔。

そして——かつての妹、優奈が今、所属する場所。


「あの子が……“黒羽”の副司令だって?」


共存派の仲間からもたらされた報告に、拓也は耳を疑った。

妹は病弱で、戦いとは無縁の存在だったはずだった。

だが現実には、彼女はたった数年で同盟軍内で異例の昇進を果たし、

悪魔狩りの象徴的存在として扱われていた。



その夜、拓也のもとに、黒い封筒が届けられた。

中には、短い手紙と写真——


「兄さんへ

生きていたのね。

……でも、私たちはもう、同じ道を歩けない。

あなたは“悪魔”を守る。私は“人間”を守る。

それだけのこと。


優奈」


写真には、黒羽の軍服を纏い、冷徹な瞳をした少女の姿があった。

その手には、炎を操る能力の証——赤黒い魔力の痕跡が浮かんでいる。


(……まさか。お前も“心臓を……”)


拓也は拳を握り締めた。

優奈が自ら、悪魔を狩り、その力を身に宿していることを悟った。


あの心優しかった少女が、

今は誰よりも冷酷に「共存」を否定する立場に立っている——

そして、その背景には、彼女の中に消えない“恐怖”があった。



——回想:6年前


火山が噴き、村が崩れ、人々が喰われる地獄のような光景の中。

優奈は拓也の腕に抱かれながら、必死に目をつぶっていた。


「怖い、怖い、怖い……!やだ……悪魔なんて全部、消えればいい……!!」


あの日の記憶が、少女の心に“憎悪”という種を植えつけた。

それは成長とともに膨らみ、

「悪魔を殺すことこそが人間の正義だ」と信じる狂信へと変わっていった。



「優奈……お前がこんなところにいるなんてな」


拓也は封筒を火にくべ、夜空を見上げた。


そして決意する。


「それでも、俺は信じる。お前を……そして悪魔と人の共存を」


彼はまだ知らない。

次に戦場で相まみえる敵が、“妹・優奈”自身になることを。


そして、少女エリシアと優奈の間にも、

「時間の交差」が生んだ重大な因縁が眠っていることも——


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