駆出しのプライド
楔 砌
スキル3つ持ちの侍崩れ……みたいな奴
無礼な所が度々見受けられる女好き
情に厚く、なんだかんだ他人をほっとけないお節介焼き
所持スキル
・剣豪の力……刀を持つとちょーつよい
・熟練剣術……剣類を持つとつよい
・見切り……当たりそうな攻撃に即座に対処できそう
「それでこそ男や!……んぁ、兄ちゃん名前は?」
「ニクス……ニクス・レイだ」
「おぉ、ええ名前やんな!」
上機嫌な砌は刀を床に叩きつけた。衝撃波が床から伝わり、地面が浅く裂けた。
「剣豪の力、熟練剣術に見切り!楔 砌、行くぞ!」
刹那、刀と人の影が頭上に現れた。間一髪で縦斬りを避け、即座飛んでくる横斬りは剣で打ち流した。自分以上に素早い身のこなしから来る連撃を躱したり受け流したりしてやり過ごす。
「はっ!なんや、大した実力もないやんけぇの!」
目まぐるしく繰り出される攻撃を目で追って、なんとか打ち流すので精一杯だった。このままじゃ本当にやられかねない。
……それだけは何としても避けなければならない。
「このっ……喰らえっ」
ごく一瞬、誰も認知できない秒未満、隙を突いた剣先が――
「おっ?!」
あっさりと弾かれた。
そして同時に砌の峰打ちが命中し、俺は蹲る。
「がふぅ……っ……」
「言ったろ?俺のスキル、見切りをよぉ」
下品な笑いを見せながら俺の手を取り、無理矢理起こしてくる。
「まっ、さっきの突きは流石にびっくりしたんやけどな」
「……っあぁ、クソっ!」
「お、なんや?まだやるんか?」
「当たり前だ……敗走なんかできるかよ!」
「まぁまぁ落ち着けや!今からでも遅ないからスキル貰ってき!」
「ふざけるな!……俺はっ、俺の力で強くなるんだ……そう決めたんだ!」
「お?そうかぁ……ま、そりゃしゃーないわな」
「畜生……もう一回、もう一回だ!」
「まぁ落ち着けって!」
結局、怒りが収まるまで剣を振るい続けたが、かすめる事すらしなかった。寧ろこっちに傷が付いた。悔しさでその場に座り込む俺を引っ張り、砌はバーへと向かった。
「オレンジジュースでええか?」
「………」
「すんません!オレンジジュース2本!」
「ほんで……なんで実力で強くなりたいんや?」
「……俺さ……女手一つで育てられたんだよ。だから母親にいい思いして欲しくてさ、それでさ、いい稼ぎが欲しくてさ、でも……ッあぁ、それでガキん頃思ったんだよ……何か別の能力、生まれ持った天賦とか、例えば、そういうのに頼ってたら、いつか道が切り離される気がすんだよ、だからさ……」
「そうかぁ……ほな、先ずはその高くそびえたってるプライドを捨てな」
「うるっせぇ……」
「はっはっは、だって自分磨きするにゃ、先ず誰かから教わる所から始まるんやで。兄ちゃんは耐えられるんか?」
「………」
一理ある。一理しかない。だからムカついた。
「ま、恨みも一種のエネルギーやけどな……せや、俺が兄ちゃん鍛えたるわ、どや?」
「はぁ?お前……お前なんかに、頭を下げろって?」
「そうや。実際、俺に負けたんだから俺に弟子入りしても変やないやろ?」
「……な、舐めやがって……」
「はっはっは、それでこそ男や」
「やかましい!」
ジュースを飲み切った砌は立ち上がり、服を軽く正した。
「ま、でもなぁ…兄ちゃん、あんたは間違いなく強くなれる。もっともっとな」
「……ふん」
「あの鬼を一人で、しかもスキル使わずに仕留めるなんてなぁ……怯える事なく」
「……何が言いたい」
「あん時軽口叩いたのはほんますまんかった!でも断言できるで。兄ちゃん、このまま鍛えりゃいつか俺なんか軽く超えられる!」
目の前のライバルの顔を見る事が出来なかった。
「俺がどうしても嫌なら、他の人にでも稽古つけてもらい。俺でええなら、明後日の朝ここにまた集合な」
そういって砌はお金を置いて、店を出ていった。
多分続きます