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エンシャント・クルーレ① ー『鳥』の章。異世界上司は美くびれ・美乳・美尻の最強くのいち!? 超絶忍術チートバトル!!ー  作者: 藤村 樹
新たなる風

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次元の狭間の囀り鳥

 鵺野天神は雲雀アシュナとの戦いに決着を着けるべく、再び上空高く飛びあがった!


 彼が飛びあがったのは、上空に呼びよせた雷雲から雷を集め、更なる力を得るためだ。

 轟音とともに雷雲から幾筋もの雷が彼へと降りそそがれ、雷電が蓄えられていく!


「雲雀アシュナ! これで終わりだゴルァッ!! 喰らえ、『烙雷鳴衝(ろくらいみょうしょう)』ォッ!!!」


 天神が両手を組み、渾身の『烙雷鳴衝』をアシュナへと撃ちはなった!

 ……だが、彼はすぐに異変に気がつく。


 ーーアシュナのヤツは、どこに行きやがった!? 


 狙いすまして技を放ったはずなのに、彼女の姿がどこにもない。

 移動した気配は感じられず、いついなくなったのかさえ分からない。そもそも自分に戦っている相手が果たして本当にいたのか疑いたくなるほどだ。


 ーーアシュナがどこにいるのか分からねぇ。てか、技を発動したはずなのに何も起こらねぇ。

 そして俺は今、いったい()()()()()()()!?


 天神は技を放った体勢のまま、見知らぬ空間のなかをただよっていた。

 さまざまな色彩の光が織りなす空間。右も左も上下も分からなくなり、体はグニャリと曲がってしまっているように感じられた。

 それはあたかも夜鷹が元いた世界の画家、サルバドール・ダリが描いた柔らかい時計のようであった。


「なんだ、ここは……!?」

「ココはあたしが操る空間のひとつさ。いわゆる『異次元空間』ってヤツさね」

「!? アシュナ、てめぇっ!!」 


 足場も何もないはずの空間で、アシュナは天神のすぐ傍らを悠然と歩いて通りすぎていった。

 すかさず天神が裏拳でアシュナの背を狙ったが、拳は空振り。気付けば彼女ははるか後方に立っていた。

 いつどのようにして移動したのか、今度もまるで分からなかった。


「てめぇ、さっきから何をしてやがる! いったい俺に、何をしやがったんだ!?」

「だから言ったろ? お前をあたしが操る『異次元空間』のなかへと放りこんでやった。お前はもう、あたしの手のなかにいるのも同然だ」

「あんだと……! わけの分かんねぇこと言ってんじゃねぇぞ、ゴルァッ!!」


 天神は力尽くで状況を打破しようと、アシュナへと襲いかかった。

 自身の肉体を電子化し、光速でアシュナへと迫り寄る!


 ……だが、それでも今の彼女の動きを捉えることはできなかった。

 代わりに聞こえてきたのは、しきりに囀る小鳥の鳴き声のような音。


 チチチチチチチチチチチチチチチッ!!!


「ッ!!? ゴパァッ!!!」


 光速で動いているはずの天神が、一方的に殴られつづけた。

 その手数、数千発。だが、天神にはアシュナの姿を目で捉えることさえできていない。


 ーー速さで誰にも負けねぇはずのこの俺が、反応することすらできねぇだと……!?


 ……『八百万の壱』雲雀アシュナは自身が操る7つの『異次元空間』の間を自在に行き来することができる。

 その空間のなかでは時間軸がねじ曲がり、光速をも越える速度で行動することが可能。

 さらに、7つの『異次元空間』にはそれぞれに絶対法則があり、アシュナは空間を重ねあわせることで目的の効果を得ることができる。


 荒唐無稽とも思える、唯一無二の次元忍術。これこそが彼女の固有スキル、『第七(せぶんす・)次元(でぃめんしょん)』。


 そして、彼女が次元と次元の隙間をくぐり抜けるとき、まるでしきりに囀る小鳥の鳴き声のような音が鳴る。

 彼女の術を受けた者は何が起こっているかも分からずに、その音を聞きながら倒れることとなるのだ。

 小鳥の囀りとともに異次元世界を自在に行き来する彼女のことを、人々はこう呼んだ。


 チチチチチチチチチチチチチチチッ!!!


『次元の狭間の(さえず)り鳥』!!


 これが『八百万の壱』・雲雀アシュナを最強たらしめてる能力であり、彼女を形容する呼び名なのであった。


「ふざっ……けんなよ……ッ!! このままボコられて終わってたまるかよ!! 『烙雷鳴衝』ォッ!!!」


 天神は自身に残されたありったけの力を振りしぼり、技を放った。

 ……だが、やはり彼の手から雷は撃ちはなたれなかった。


 ーーなぜだ、なぜ技が出ねぇ。

 いや、技は出てるが、メチャクチャ遅ぇ……!?


 必死の表情。天神が組んだ両手を差しのばした、すぐ目と鼻の先で。

 アシュナは腰に手をあて、悠々と笑っていた。


「カカカ♪ ムダだよ、天神くん。今キミがいるのはあたしが操る空間のひとつ、『界絶(かいぜつ)』。そこは時の流れがゆっくりな空間でね。とりあえずお前が放つ技の速度を10億分の1にさせてもらったよ」


 ーー10億分の1だと……ッ!? そんな出鱈目(デタラメ)アリかよ……!!


「てめぇ、ズ……」

「おっと、ズルいなんて言うなよ? 相応の代償としての『(しるべ)』の消費はあるし、無計画に『異次元』を重ねあわせすぎるとあたしも元の世界に戻れなくなる。こっちだっておいそれと使える能力じゃないのさ」


 次元忍術の『導』の消費量、コントロールの難易度、ともに他系統の忍術の比ではない。

 固有スキルの有り無し以前に、使いこなすことができるのはアシュナの天才性があるからこそなのである。


「と、ゆーわけであたしも帰れなくなる前に終わらせるぞ。ホレっ♪」


 アシュナは天神へと向かって片手をかざすと、軽やかにその手を振りはらった。


次元斬(じげんざん)』!!


 アシュナの次元忍術のひとつ。次元ごと物体を斬り裂く技であり、防御することは不可能。

 物体の硬度に関係なく切断することができ、抵抗(レジスト)することも不可能である。


 アシュナのひと振りにより、天神は腰から下が切断され、消滅した。


「かはっ……!!」


 腰から下を失った天神は、そのまま地へと倒れ落ちた。


 ……気が付けば、天神は元の世界に戻されていた。

 何も知らない者から見れば、彼は技を放つために上空へと飛びたっていったはずだが、次の瞬間には半身を失って地に倒れていたように見えたことだろう。


 彼は仰向けに倒れた姿勢のまま、呆然と空を見あげていた。

 上空に立ち籠めていたはずの黒雲までもが、まるでなかったかのように消滅されていた。


 やがて、彼は悔しさが汲みあげてきて、怒りに満ちた表情を浮かべた。


「クソぉ……。クソクソクソ! クソがっ!! 人も妖も超越した存在であるはすの俺が、ただの人間ごときに負けるなんてよぉっ!!」


 空に向かって吼えつづける天神。

 そんな彼のもとに、アシュナは鼻歌交じりに歩みよっていく。彼女もまた、異次元空間から元の世界へと戻ってきていたのだ。

 

「いやぁ、天神。お前はじゅうぶん強いと思うよ?」

「なに……ッ!?」

「『八百万(ヤオヨロズ)』ってのは800万の忍の戦力に相当する8人の総称だ。その計算で今いる8人を換算するとしたら、そうさなぁ……」


 アシュナは数えるように指を折りながら、考える素振りを見せた。


「あたしが400万、天神が200万、他の連中を合わせて200万ってところだろうな。さすがにあたしにゃ敵わないが、『八百万』のなかじゃ強いほうだと思うぜ?」


 天神は驚いたように目を見開く。

 だが、彼が驚いたのは、自身が高く評価されていることなどではなかった。


 ーーコイツ、他の『八百万』が全員まとめてかかっても、自分ひとりで張りあえるって言うつもりかよ!?


 ……いや、多分、それすらもウソだ。

 コイツの強さは物差しなんかじゃ測れねぇ。他の『八百万』とは、まさしく別『次元』の強さだ。


 天神は仰向けに倒れたまま、再び空を見あげた。

 清々しい表情。今はもう、怒りも憎しみも消え失せていた。


「……分かった、負けを認めるよ。雲雀アシュナ、お前が最強だ」

「まぁまぁ、そんな気落ちするなよ天神クン♪ お前のそのバケモノじみた生命力なら、医療忍術の助けを借りれば再生できるんだろ? またいくらでも相手してやるよ。将軍をブッ倒したあとでなら、な」


 じきに幕府軍の医療班が駆けつけるだろう。アシュナは倒れている天神の脇を通って、城のほうへと向かおうとする。

 だが、そんな彼女を、天神は呼びとめた。


「おい、アシュナ」

「ん?」

「お前……すげぇ美人だな」

「んなの知り尽くしてるっつーの。カッカッカ♪」


 ……『八百万の壱』と『弐』による頂上決戦、決着。

『八百万の壱』雲雀アシュナの勝利ーー




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