VS.尾長骨鶏① ー頼りになるア・イ・ツ(ゝω・´★)ー
◇
俺は絵心有ちゃんの手を引っぱりながら、都の中枢部に近いてれび局へと向かっていた。
今は都の辺縁部を抜けて、住宅街へと入りこんだところだ。
都のなかには暴れまわる人、逃げまわる人とさまざまだが、みんな騒ぎに夢中で、俺たちのことを気にする余裕などなさそうだ。
絵心有ちゃんは外套についた頭巾を目深にかぶるだげで、誰も彼女の正体に気づかなかった。
……それにしても、凄まじい暴動だ。どうやら幕府に味方するか、対立するかで民衆が二分されているらしい。
みんな敵と思われる人を捕まえては、トチ狂ったように殴りかかっている。
こんな状況じゃ、俺たちもいつ暴動に巻きこまれたって不思議じゃない。
俺は走りながら、手を引っぱられて懸命に走る絵心有ちゃんへと話しかけた。
「絵心有ちゃん! こんな状況でてれび局に行って、意味があるのかなぁ!? ここは都の外にもう一度出て、ほとぼりが収まるまで待ったほうがいいんじゃ……」
「ダメ! この人たちは操られてるの!」
「! なんだって……!?」
「都の人々はたぶん、私の『絶対無敵偶像』の他に、心を掴むスキルを常に使われてる状態なの。今はスキルに操られてる人々と、それに抗う人々が争いを繰り広げている……」
「そうなのか! でも、君をてれび局に連れていって、それをなんとかできるのかい?」
「てれびの画面を通して、私の『絶対無敵偶像』を最大出力にしてみる! そうすれば心の余白が奪われて、他のスキルが機能しなくなるの。争いを止められるかも……!」
「なるほどね。そういうことなら、俺は君を信じて、てれび局に連れていくよ……!」
絵心有ちゃんがそう望むというのであれば、俺は必ずや彼女をてれび局へと連れていこう。
それが、彼女を推す者としての役割なのだから!
……しかしそのとき、俺たちの頭上を何かの影が覆った!!
「ケタケタケタ!! 見つけたぜぇ、絵心有ちゃあああんッ!!!」
「!! お前はっ!!」
「てめぇは邪魔だぁ、このゴミクズおじゃま虫があああッ!!!」
『髄節混』!!
俺の脳天を刺し貫こうと、鋭い骨の尾が振りおろされた!
「くっ!」
「きゃあああっ!!」
俺は絵心有ちゃんを抱えて、紙一重で骨の尾を躱した。
前回は細い通路の狭間で振りまわしていたが、今回は周囲の建物などお構いなしに粉砕しまくっている。攻撃のキレ、速さ、破壊力は昨日とは比較にならない!
……ボサボサの黒い長髪、血の気のない顔、獣のように鋭い目の下には深いクマが刻まれている。
全身に骨の甲冑を身にまとっており、骨の尾はそこから伸びていた。
この男はたしか、昨日俺たちを襲ってきた……!
「ケタケタケタ! 周囲の目を気にせずに暴れられりゃあ、俺の力はまだまだこんなもんじゃねぇんだよ!! 『暗部』で戦闘最強の、この尾長骨鶏さまの力はなあぁッ!!!」
骨鶏は全身を覆う骨の鎧をカタカタカタと震わせると、背中から巨大な骨の翼が生え出でた!!
その姿はまるで、翼竜の姿をした悪魔のよう。見るからに恐ろしく、禍々しい姿だ。
骨鶏は新たに生えた翼で飛びたつと、空を自由自在に飛びまわった!
「ケタケタケタ!! 俺と絵心有ちゃんとの時間を邪魔するヤツは燃え尽きちまえよぉッ!! ケアアァッ!!!」
骨鶏は上空で狂ったように笑うと、口から黒紫色の炎を吐きだした!
『地獄の業火』!!!
「くそっ! 俺ごと絵心有ちゃんまで燃やし尽くすつもりかよ……!」
俺はこの炎の攻撃も、走ってなんとか躱した。
だが、俺の背後では黒紫色の炎が燃えさかり、周囲の物を煤すら残さずに燃やし尽くしている。
ただの炎ではない。炎属性に暗黒属性も加え、物体の消滅作用をともなっているのだ。
「ケタケタケタ!! 逃げ足だけは速ぇヤツだ。だが、いつまでこの俺から逃げてられるかなあああぁ!!」
「くそっ。ちょっ、待っ……!」
俺はたまらず、絵心有ちゃんを抱えて逃げだした。
だが、敵は空を高速で飛びまわることができるうえ、自在に伸びる骨の尾と、燃えさかる黒紫色の炎と、強力な遠距離攻撃をもっている。
……ダメだ。このままではどう考えたって逃げきれない。迎撃してヤツを倒さないと……!
俺は抱えていた絵心有ちゃんを物陰に座らせると、すぐさま骨鶏のほうへと振りかえった。
「絵心有ちゃん! ここで待ってて!」
「え!?」
「結界忍術、『円羅護環』!!」
俺は印を結び、円環の結界を展開させた。結界の強度には自信がある。だが、しかし……!
「ケタケタケタ! そんな脆い結界じゃ俺の攻撃は防げねぇよぉッ!! 喰らえ、『地獄の業火』!!」
そう叫ぶと、骨鶏は特大の黒紫色の炎を吐きだした!
しまった、相手の力を見誤った。俺の結界じゃ、この炎の攻撃は防ぎきれない。
かといって、結界を解除して避けたら俺のそばに隠れている絵心有ちゃんが焼き尽くされてしまう。
今から結界を解除しても、彼女を抱えて逃げるだけの時間もない。
ゴメン、絵心有ちゃん。俺は君を護りきることができなかった……!
全てをあきらめたそのとき、俺の周囲を取りかこむようにして、巨大な影の塔が立ちあがった!
陰影忍術、『影魔天楼(えいまてんろう)』!!
俺の『円羅護環』で弾かれた闇の炎は影の塔の内部へと吸収されてどんどん回収されていき、敵の攻撃の威力を半減させてくれた。
影を操る、巧妙な忍術。こんな芸当ができるのは、あいつしかいない。
気がつけば俺のすぐそばに、黒い羽毛の羽織を着た男が立っていた。
「何を手こずってんだよ、鳴瀬」
「嘴黒クン!!」
俺を助けてくれたのは同期のエース、嘴黒咲紀仁クンだった!
こんなときに、実に頼もしい仲間が来てくれたものだ。登場の仕方も素晴らしくカッコいい。
……でも、睦綿村の事件を解決したあとアヤシイ態度を見せられて以降、なんとなく意識して気まずいんだよな。
ギルドで見かけても視線を合わせないようにして、そそくさと立ち去ったりして……。
「あ……」
「ん? どうした?」
「今、手と手が触れたな……」
「やかましいわっ!!」
イチイチ頬を赤らめるなっ。
女性と見紛うくらい美形のお前にそんな顔をされて、俺がそっちのシュミに目覚めたりしたらどうしてくれるんだ、まったく。
とは言え、ここはピンチに駆けつけてきてくれて感謝。頼りにしてるぜ、相棒!
「嘴黒クン、そこの女の子を護っていてくれないか? 俺はあの骨ヤロウを叩きに行く!」
「女の子……?」
嘴黒クンは目深に頭巾をかぶった女の子の姿の姿を認めると、『影魔天楼』の下へと手招きした。
この影の城自体が、強力な結界としての役割を果たしているらしい。敵の『地獄の業火』も属性的に同系統で、吸収しやすかったようだ。
よし、これで安心して戦いに専念することができる。
勝負はこっからだぜ。覚悟しろよ、尾長骨鶏!!
今回の場面は次回に続きます!




