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エンシャント・クルーレ① ー『鳥』の章。異世界上司は美くびれ・美乳・美尻の最強くのいち!? 超絶忍術チートバトル!!ー  作者: 藤村 樹
狂乱の宴

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逆転の秘策

 ようやく狂乱から受けたダメージから脱した俺は、湖水さんに加勢しようと駆けだした。


 ーーすげぇすげぇすげぇ! 湖水さん、めちゃくちゃ強くてカッコイイぜ。 

 俺が湖水さんの力になれさえすれば、狂乱に食らいつけるかもしれない……!


「湖水さん、加勢しますっ!!」

「「!!」」


 狂乱はぬかりなく湖水さんと交戦しながら、迫りゆく俺のことを一瞥した。


「ふぬぅ。この男の手助けがあったとは言え、あの一撃を受けてもう立ち直るとはのぅ。思いのほかイキのいい小童じゃ。だが、若者を勢いづかせるのは危険! 悪いが一気にカタを付けさせてもらうぞ!!」


 そう言うと狂乱は舞うように『騒乱鳴子』を振りまわし、自身の周囲の空間を激しく震わせていった。


「祭り囃子じゃ、騒ぎたてよ!! 『狂夜騒祭(きょうやそうさい)』!!!」


 狂乱が『騒乱鳴子』で空間を叩くやいなや、空気中の見えない分子や原子が激しく振動、互いに共振現象を起こして更に振れ幅を増幅させていく!

 距離が離れるほど無限に増大してゆく破壊エネルギー。その技は数十キロメートル四方を更地にすることが可能なほどの威力を秘めていた。

 あとに残るのはまさしく、狂乱の夜が過ぎた跡を見ているかのような光景である。


「夜鷹くん、全力で防ぎますよ!! 『白水面』、『弐ノ口(にのくち)』!!」

「はい、湖水さん!! 結界忍術、『円羅護環(えんらごかん)』!!」


 俺と湖水さんは並び立ち、協力して防衛を図った!

 湖水さんは自身と俺の前に『湖面』を形成して水を噴出し、狂乱の技との相殺を狙う。

 一方、俺は中級結界忍術を発動させた。初級結界忍術『羅亀沙(らきしゃ)』の強化版であり、円環の結界を張ることができる。


「はあああああぁっ!!」

「ぐうううぅぅっ……!!」


 ……あまりにも激しい、力の奔流。衝撃に飲みこまれて、存在ごと消えてしまいそうだ。

 俺と湖水さんは何度もうちひしがれそうになりながらも、なんとか狂乱の攻撃を最後まで耐えきることができた。

 だが、ふたりとも既に体はボロボロで、ほとんど全ての力を使いきっていた。


「ハァッ、ハァッ、ハァッ……。大丈夫ですか、夜鷹くん」

「え、ええ。なんとか……ゴフッ!」


 俺は先ほど腹を打たれたダメージも残っており、また血を吐いてしまった。

 普段から色白な湖水さんも、今は色白を通り越して顔面蒼白な状態だ。どちらも、限界に近い。


 対して、狂乱は俺たちを見おろして高笑いをあげている。

 あれだけの威力の技を放っておきながら、まだまだ余力があるのだ。なんという怪物……!


「阿伽伽伽! よく持ちこたえたほうだが、終わりじゃな。さて、白戸湖水よ。今からオヌシも封印して、諸国列強への見世物となってもらうぞ!」


 クソ、化け物オヤジめ! また好き勝手なことを言いやがって。

 俺は悔しさで歯噛みしながらも、必死に頭をめぐらせていた。何か一矢報いる方法はないか……。

 だが、勝負をあきらめていないのは湖水さんも同じだった。


「夜鷹くん。私は全力で攻撃できるのはもって1回のみです。君はまだ戦えますか?」

「ええ、俺も攻撃できるのはせいぜいあと1回だけです。……湖水さん、どうせ負け戦なのなら、俺の作戦に乗ってみませんか?」

「作戦……?」


 俺は思いついた作戦を、小声で湖水さんに伝えた。湖水さんは驚きでその碧い瞳を、大きく見開いてみせた。


「なんと……! しかし、夜鷹くん。それでは君が……!」

「大丈夫です、湖水さん。俺を信じて、任せてください」


 湖水さんは俺の話を聞き終えると、『導』を操作した。あたりにユラリと霧が立ちあがりはじめた。


「……分かりました。夜鷹くん、君に私たちの命を預けましたよ」


湖上(こじょう)狭霧(さぎり)』!!


 湖水さんが術を発動させると、たちまちあたりに深い霧が立ち籠りはじめ、視界が奪われた。

 水遁系の撹乱忍術。宙をただよう霧は視界を遮るだけではなく、気配や『導』の流れをも覆い隠す。

 しかし、視界を奪われても狂乱に動揺する素振りは見られない。



「阿伽伽伽。霧に隠れて、不意打ちでもするつもりか? だが、霧のような粒子の操作はワシの得意中の得意。こんな(もや)など片手で振りはらってくれるわ。破ッ!!」


 狂乱が片手で振りはらう仕草を行うや、霧はたちまち晴れていく。霧の粒子の『振動』を操作し、思うがままに操っているのだ。

 そうして、霧のなかから湖水の姿が露わとなったとき、狂乱はすかさず襲いかかった!


「男がコソコソ隠れておるでないわ! はじけ散れぇいっ!!」


 狂乱が湖水へ『騒乱鳴子』を振りおろそうとした、そのとき。彼は異変に気がつく。

 ……見当たらないのだ。湖水とともに身を潜めていたはずの、()()()()()姿()()


 ーーあの小童は、どこに行った!?



 ……もちろん、俺は消えたわけでも、逃げだしたわけでもない。

 湖水さんの固有スキルである『潜湖(せんこ)』。これは『白水面(はくみなも)』の能力の延長にすぎない。

『湖面』の奥に広がる亜空間をちょっと借りて、身を潜めさせてもらっているだけだからだ。

 さらに『白水面』は『湖面』を形成するまでは、普通の水と区別がつかない。霧の水滴に紛れこませれば、そのまま宙に舞いあがらせることもできる。


 そう、俺は狂乱の背後上空、ヤツの死角へと舞いあがっていた。

 そして、狂乱へと向けて『湖面』が開かれ、俺は『湖面』の縁へと足をかけた。ヤツはまだ、こちらの位置に気がついていない。


 ……だが、たとえこのまま俺が飛びかかったとして、それでも狂乱は反応し、俺をはたき落とすことだろう。

 俺程度のスピードでは、到達するまでのあいだに察知・対応されてしまうからだ。ヤツは、あまりにも強すぎた。

 しかしそこで俺は、湖水さんの力を全面的に借りることとした。


「行きますよ、夜鷹くん。『白水面』、『壱ノ口(いちのくち)』!!」

「なんだとッ!?」


 俺は湖水さんの術で優しく温かな水にくるまれたのち、猛烈な勢いで撃ちだされた!!


「う お お お お ぉ っ !!!」


 言葉では表現できぬほどのスピード、そして背中に感じる圧力。今、俺は背中に海と見紛うほど莫大な量の水を抱えているのだ。

 湖水さんの全力に押しだされて、俺は大鷲狂乱へと襲いかかった!!

 だが、しかし……!


「甘いわぁッ!!」

「「ッ!!!」」


 これほどまでに工夫をほどこしても、狂乱を出し抜くことはできなかった。

 ヤツは即座に振りかえり、鳴子で俺を思いきりぶっ叩いてみせた。


「ゴフッ……!!」

「夜鷹くん!!」

「小童、キサマに用はない! このまま死ねぇいッ!!!」


 俺はまたも『騒乱鳴子』に叩かれ、今度こそ上体をぶっ飛ばされそうになった。このままだと、腰から上が砕かれて粉々になっちまう!

 ……だが、これでいい。叩かれるまでが想定の範囲内だ。

 マジで、このスキルの応用性の高さには頭がさがるぜ。初めて戦った強敵が河繆氷(がびゅうひょう)ってヤツでホントによかった……!


 スキル発動、『過冷却』!!!


「なにっ!!?」


 衝撃を受けた水を凍らせるスキル、『過冷却』。

 俺のことをくるんでいた水が、狂乱に叩かれた箇所から急速に凍りついていく。


 と、同時に『氷結ブースト・改』を発動。

 ……これはあくまで、湖水さんの力を借りた()()()()。『過冷却』の効果によって、水属性だけでなく氷属性も併せもつようになる。

『氷結ブースト・改』により、俺が扱う氷属性の攻撃は威力が5倍……!!


「ぬ お お お お ぉ ッ !!!」


 ただでさえ並みはずれた圧力特性をもつ湖水さんの『白水面』、『壱ノ口』。

 俺のスキルによって威力が5倍となり、さしもの狂乱も振りあげた鳴子が押しかえされていく。

 攻撃を押しかえされて身動きが取れなくなっている狂乱に、俺は『宵食みの翼』で斬りかかった!


「これでどうだぁッ!! 大鷲狂乱!!!」

「ぐああぁっ!!!」


 俺は大鷲狂乱が振りあげていた鳴子を持つ腕を、深く斬りつけたのであったーー。




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