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エンシャント・クルーレ① ー『鳥』の章。異世界上司は美くびれ・美乳・美尻の最強くのいち!? 超絶忍術チートバトル!!ー  作者: 藤村 樹
狂乱の宴

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潜入 ー流れる水に身を委ねてー

 俺は城の壊れた隙間から飛びだし、潜水艇へと侵入を開始した。


 傾いた船の内部では、氷渡城から略奪した物資を、高山藩の兵士たちがせわしなく運びこんでいる。

 不幸中の幸いで、物資を詰めた箱がちょうどよい目隠しとなり、隠れる場所には困らなかった。


 ここで、アシュナさんに課された『スズメ捕り』の訓練が役に立った。

 スズメたちは人間よりはるかに気配に敏感であったため、自然と隠密術の訓練になっていたのだ。


 気配を消したり、物陰に隠れたり、ダンボールの箱(?)を被ったり……。

 俺は敵に見つからぬよう、細心の注意を払って奥へと進んだのだ。


 ……それにしても、すごい船だ。

 潜水艇……いや、軍艦といったほうがふさわしいだろう。


 船に搭載された機械は『(しるべ)』を原動力としているようだが、元いた世界での近代以降にも負けない機械技術なのではないだろうか。

 装飾やデザインも洋風だし、北方の島々の現住民族が造ったものでは、とうていなさそうだけど……。

 もしかして、外国から輸入された船なのかな?


「ハァッ、ハァッ、ハァッ……ふぅ」


 いつ敵に見つかって、大鷲狂乱のもとに連れてかれるかもしれないという緊張感はすごかった。

 隠密活動にかなりの集中力を要したし、気配を消しながら移動するのはけっこう体力を消耗する。中腰のまま足音を立てずに歩くのって、意外と疲れるよね。


 俺は人気のない倉庫のなかに入ると、物陰に隠れて小休止することとした。

 大きなコンテナのような木箱がずらっと並んでいるので、その列と列のあいだに身を潜めたのだ。

 ジメジメとしてちょっとカビくさいが、ひっそりとした雰囲気が今は落ち着く。


 休みがてら、戦いのための準備もしっかりとしておこう。

 俺はひづきを呼びだし、懐から先ほど手に入れた刀を取りだした。


 ……信楽ヒクイ丸の固有武器、『燻炎刀(くんえんとう)』。

 先ほど氷渡城の祝宴場を通過したとき、ちゃっかり回収しておいたのだ。

 我ながらちょっとセコいなとも思ったが、これからあのISRR・Sランクの大鷲狂乱を相手どるかもしれないのだ。なりふり構ってなどいられまい。


「ひづき、こんなときだが合成を頼む!」

『ハイハイ、分かってるわよ』


『炎熱ブースト』・『火属性吸収』・『熱力変換(ねつりきへんかん)』ゲット!!


『炎熱ブースト』……すべての火属性攻撃の威力が3倍となる。


『火属性吸収』……火属性のダメージを吸収。


 ついに属性吸収をゲット! これはかなり嬉しい。

 ただし、あくまで発動スキルのひとつなので、発動する前に攻撃されたら意味を成さない。


 また、他の属性の要素が合わさっていたら、すべてのダメージを吸収することはできない。

 例えば炎をまとったパンチなら、炎は吸収することができるが、パンチの分のダメージはしっかりと食らうわけだ。


『熱力変換』……火属性エネルギーを肉体エネルギーに変換し、身体能力を向上させることができる。


 これはヒクイ丸に特異的な、かなり珍しいスキルであるようだ。

『火属性吸収』と併せて使用し、自分で自分に火遁の術を使い、戦闘能力を強化する。非常にユニークな使いかたができそうなスキルである。


 ……めちゃくちゃすごいスキルばかりだ。

 恐らくヒクイ丸は、Aランクに食いこむだけの強さを持っていた男だと思う。Aランクの固有スキルともなると、これだけの能力を得ることができるのか。

 早く実戦で試してみたくて仕方がない。


 敵陣のまっただなかに居て、これは元気づけられた。よし、探索を再開してみようかな。

 と、そう思ったところで、『魂珀の腕輪』から画面が投影され、ひづきが顔を現した。彼女にしてはとても珍しく、心配そうな顔をしている。


『夜鷹、今回だけは決して無理しちゃダメよ。大鷲狂乱はその気になれば、一瞬であなたを消滅させるだけの力を持っているわ。まともに相手取らなくて済む方法を考えることに徹するべきよ』

「アハハハ……。でも、戦うとなったらどうやったって無理をしなきゃいけない相手だよ。それにしてもひづき、もしかして俺のことを心配してくれてんのか?」

「バッ……! ち、違うわよ! 勝手に死ねば? もう知らない、フン!」


 そう言って、ブツン、と画面は切れてしまった。

 せっかく心配してくれたのに、なんだか悪いことしちゃったかな。でも、拗ねてるひづきはいつにも増して可愛いかった……。


 おっと、イカンイカン。余計なことを考えてる場合じゃないぞ。早く鶴姫さんと海燕さんを助けにいかねば!

 俺は倉庫を抜けだし、再び船内の捜索を開始した。


 船の奥底、先へ先へと進むほどに、通路は狭く、隠れる物陰も少なくなってきた。

 まるで暗い迷宮のなかを進んでいるようで、人影も少ないのが救いだが……。


 しまった!

 今自分がやってきた道と、これから曲がろうとする角の先と、両方から人がやってくる気配がする。

 迷宮のように道が入り組んでいるので、気配を読み違えてしまったのだ。


 敵兵に前後を挟まれてしまった形だ。隠れようにも、狭い通路には隠れる場所などない。

 このままではどちらかの兵士たちに警報を鳴らされ、乗船員全員に俺の居場所が知れわたることとなってしまうだろう。


 クソッ! このまま敵兵全員を相手どって、死ぬまで戦うしかないっていうのかよ。

 なら、足掻いて足掻いて、最後の瞬間まで暴れ尽くしてやるぜ!


 俺が腹をくくった、その時だった。

 俺の鼻先にポツン、と冷たい何かが滴りおちた。とっても冷たいけど、ちょっと気持ちいい。


「ん? 水……?」


 雨漏りだろうか。いや、ここは船の中層だしな。水道管でも破裂してるのかな?

 水はしとしとと廊下の天井から滴り落ちてきて、俺の足元に水溜まりを作っていった……。


「ン、見回りご苦労。そちらは何か異変はなかったか?」

「ハッ! 船首方面は侵入者など特に見られませんでした。猫の子1匹、見逃しません!」

「よし、その意気だ! もう少しでこの船も出航である。それまで気を抜かぬようにな」

「「ハッ!!」」


 敵兵たちは互いに異変を起こってないことを確認しあうと、狭い廊下をすれ違っていく。


「……ん? 何ですか、この水溜まりは?」

「そんなの構っている場合ではないだろ。あとで拭いとけ!」

「ハッ!」


 兵士のひとりが床に溜まっている水に気がついたが、司令官に無視するように言われて結局、何もせずに立ち去っていく。

 そして通路には、誰もいなくなった。


「……さぁ、夜鷹くん。もう大丈夫ですよ」

「はい、湖水さん! ありがとうございます!」


 流水のように流れる碧き長髪をもち、整いすぎた目鼻立ち。

 湖上をただよう霧のように淡く儚い雰囲気を身にまとわせているイケメン。

 俺の前に姿を現したのは『八百万の陸』、白戸湖水(しらとこすい)さんだ!


 俺は湖水さんに水溜まりのなかに引きずりこまれ、敵をやりすごすことができていたのだ。


 ーー湖水さんの固有スキルのひとつ、『潜湖(せんこ)』。

 およそ体が通るほどの面積の水面があれば、水面下に亜空間を作り、そこに潜りこむことができる。


 しかも、『導』の操作によって水を動かすことができれば、亜空間に潜りこんだまま移動することができる。

 亜空間のなかでは完全に気配が消滅し、敵に気付かれる心配はいっさいない。

 敵から見たら、ただの水溜まりにしか見えないというわけだ。


 う~ん。さすがは『八百万』の一員、隠密術ひとつ取ってもなかなかユニークなスキルである。

 水が染みわたる場所であればいくらでも潜りこむことができる。潜入術として、極めて優秀なスキルであると言えるだろう。

 下から何かを覗きこむときにも、とても役に立ちそうだ(湖水さんはやらないと思うケド)。


「でも、湖水さん。怪我は大丈夫なんですか? かなり派手に吹き飛ばされてましたけど……」

「ええ。どうやら少しのあいだ、意識を失っていたようです。多少のダメージは残りますが、戦うのに支障はありません」


 湖水さんは一度は狂乱に吹っ飛ばされてしまったものの、意識を取りもどしてすぐに駆けつけてくれたのか。

 ここにきて、最高に頼もしい人が復活してくれたもんだなぁ。


「さぁ、夜鷹くん。鶴姫さまと海燕さんの気配はもう少し下層から感じられます。この先に進みましょう」

「はい!!」


 俺と湖水さんは水に潜りこんだまま階下へと染みわたっていき、さらに下層へと進んでいった。

 流れる水に身を委ねるような、不思議な感覚だ。狭い箇所を通過するときなど、自分がスライムになったみたいにぐにゃり、プルルンと亜空間ごと変形してしまうのが楽しい。


 そしてーー。

 俺たちは、目的の場所へとたどり着いたのであった。




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