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エンシャント・クルーレ① ー『鳥』の章。異世界上司は美くびれ・美乳・美尻の最強くのいち!? 超絶忍術チートバトル!!ー  作者: 藤村 樹
狂乱の宴

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VS.蛇腹婉駝

 食糧と大型家財が雑多に置かれ、視野が悪い貯蔵室のなか。

 西園寺ツグミ・早乙女ヒナの両名は、大鷲狂乱の懐刀(ふところがたな)である蛇腹婉駝(じゃばら わんだ)と激闘を繰りひろげていた。


 だが、2対1という状況にも関わらず、彼女らは婉駝に押されていた!


「くっ!」

「わわわっ……!」


 婉駝の武器は刃を取りつけた両腕と両足。自在に伸び縮みし、曲がる腕と足は、死角から的確に彼女らの急所を狙ってくる。

 近距離タイプのツグミとヒナは攻撃の射程外から絶え間なく攻撃をつづけ、躱すだけで精いっぱいだ。

 さらに厄介なのは……!


横這い蛇(サイドワインダー)』!!


 婉駝が右手に握る刀。

 この刀は、刀身が横向きにしなり、ねじれ、予測不可能な動きで襲いかかってくる。

 まさしく鎌首をもたげた蛇のように、油断ならぬ動きを見せる刀なのだ。


 おまけに、刀身の(へり)からは毒液が滴っている。

 この毒は体内に入ると全身から出血し、ものの数分で人間を死に至らしめる猛毒である!


 恐るべき性能をもつ、蛇腹婉駝の固有武器。

 だが、戦闘経験の豊富なツグミは、この刀が毒をもつ可能性を即座に見抜いていた。


 ーー刀から滴る液体。

 手足に付けた刃は的確に私たちの急所を狙ってくるけど、このしなる刀は当たりさえすればいいという動きをしてくる。

 蛇を連想させる動きをしていることから見ても、毒を持たないと思うほうがどうかしてるわ……!


「ヒナっ! この刃にだけは絶対に斬られてはダメよ! 気をつけて!!」

「はいっ、ツグミさん!!」


 ツグミとヒナが必死に逃げ、躱し、防御に徹さざるを得ないのに対して、蛇腹婉駝には攻撃の手を緩める気配はいっさい見られない。


「ジャララララ……。いったい、いつまで逃げまわっているつもりダ? 特に、そちらの細っこいお嬢さんはあと少しも保たなそうダがな」


 婉駝が指摘するとおり、ヒナは柔軟な身のこなしでなんとか躱しつづけているものの、もはや幾ばくの余裕も残っていない。

 先ほどから刃先を何度も掠められて、服がはだけてきてしまっている!


「わっ、わっ、わわわわ……!」


 ーーさっきから物陰に隠れてるのに、どうして手に取るようにこちらの居場所が分かるのぉ?

 体を伸ばすときにわずかに鱗の擦れるような音がするのが唯一の救いだけど……。

 あのしなるような刀から逃げるのは、もう無理!!


 蛇腹婉蛇は白蛇と黒蛇の2匹を常に身にまとわせている。

 この2匹の蛇はピットという器官によって獲物の体温を感知し、主である婉駝にその位置を教えている。


 婉駝は敵の死角に隠れながら攻撃をしつづけることができるうえに、足もメチャクチャ速い。

 ツグミが婉駝の位置を特定しても、その場に駆けつけたときには全く別の場所に移動しており、攻撃の機会を与えないのだ。


 ツグミは迫りくる刃を棒で打ち据えながら、ヒナに限界が近づいているのを感じ取っていた。


「お城の備品を壊すのは気がひけるけれど……細かいこと気にしてる場合じゃないわね!」


 ツグミは自身の固有武器、『金華棒(きんかぼう)』を高く振りかざすと、地を這う虎のように低く身構えた!


「西園寺流打混術、『戦塵舞踊(せんじんぶよう)』!!」

「ッ!!」


 目の前の障害物を全て撃ちくだきながら、超高速で婉駝へと迫っていくツグミ。

 その荒々しくも華麗な棒術は、さながら戦塵のなかで舞い狂う踊り子のようであった!


 一方的に攻撃を仕掛ける側であった婉駝は虚を衝かれ、ツグミの接近を許してしまう。

 間合いに入ったツグミは、婉駝の胴体へと強烈な一撃を叩きこんだ!!


 ーー()った!


 撃ちこんだ瞬間、勝利を確信したツグミ。

 だが、ツグミの一撃が入った瞬間、婉駝の胴体はビヨ~~~ンと伸び、打撃の衝撃を受け流されてしまった!


「なにっ!?」

「ジャラララ……。残念ダが、オレは『物理耐性』持ちダ。その程度の打撃では、オレに傷ひとつ付けることすらできないぞ」


 ツグミは婉駝のおよそ人間らしからぬ伸びた胴体を目の当たりにしながら、ある事実に直面していた。


 ーー恐らく、私とコイツのランクは同等。決して格上の相手なんかじゃない。

 だが、障害物だらけで視野の悪いこの状況。明らかにこちらに不利。

 そして、何より……。私にとってコイツは、決定的に相性が悪い!!


「ジャラララ……。反撃はもうおしまいか? ならば、早々にケリを付けるぞ!」


蛇襲猛牙(じゃしゅうもうが)』!!


「くっ!」

「きゃあっ!!」


 今までの死角を突く狡猾な一撃ではなく、自在に伸びる四肢を存分に使ったラッシュ!

 まるで無数の獰猛な蛇に、一斉に襲われているかのような激しい連撃であった。

 ツグミはなんとか全ての攻撃を防ぎきったが、ヒナが『横這い蛇(サイドワインダー)』の刃で片腕を斬られてしまった!


「あっ……!」

「ヒナっ!!」


『横這い蛇』の毒により、ヒナはその場にへたり込んでしまった。

 傷口がジンジンと赤く腫れあがり、意識が朦朧としてくる。


 ーーヤバいヤバいヤバい。アカデミーで習ったことを思いださなきゃ。

 毒の攻撃を受けたときは、『(しるべ)』の操作で体内循環を抑えて、毒のめぐりを遅くしないと……!


 ヒナは焦る心を必死に抑え、『導』の操作に集中しようとする。

 そうして心を静めたときに、頭によぎるのは一抹の後悔。


 ーーああ。夜鷹くんと仲良くなろうだなんて、不純な理由で付いてきたからこんなことになるんだ。

 ツグミさんの足を引っぱるだけ引っぱって、何もできずに死んでいくなんて……。


 そこまで考えて、ヒナはブンブンと首を横に振った。


 ーーううん、ダメ!

 このまま死んだら、夜鷹くんのことを好きになったことまで後悔することになってしまう。

 何か、何かしなくちゃ……!


 ヒナは震える手で印を組み、術を発動した。


「火遁、『炎狸狐(えんりこ)』!!」


 ヒナが術を発動するのとともに、炎の塊があたりを駆けめぐり、散乱していた家財に火をつけた!

 火がつきやすい食材などもばら撒かれていたため、またたく間に火の手は広がり、あたり一面火の海となった。


 この状況の変化に蛇腹婉駝は戸惑いを覚え、動きを止めることとなる。


「! なんダと……!?」


 ーーあちこちで炎が激しく燃えさかり、迂闊に死角に手を伸ばすことができん。

 しかも炎の熱に紛れ、白蛇と黒蛇の『体温感知』も効かなくなった……!


「おのれ、小癪な! ダが、毒を受けた小娘の位置は分かっている。まずはそちらのほうからトドメを刺してくれる!!」

「! 蛇男め、待てっ!!」


 婉駝はヒナが隠れていた位置めがけて、脱兎のごとく走りはじめた!

 ツグミも慌てて追いかけたが、半歩遅れた。婉駝の足が速すぎて、追いつけない!


 燃えさかる炎の合間を駆けぬけ、いち早くヒナのもとへとたどり着いた婉駝。

 身動きの取れぬ彼女にトドメを刺すのには、じゅうぶんなだけの時間。だが……!


「なにっ! どこに行ったんダ!?」


 ヒナが隠れていたはずの場所に、彼女がいない! 彼女は今ごろ毒がまわって動けぬはずなのに。

 訳が分からず、婉駝はキョロキョロとあたりを見まわした。


 ……そのときヒナは、蛇腹婉駝のすぐ後ろ、彼の背後にいた。

 とうてい人がいるとは思えぬほどに狭い、崩れた家財の隙間。そんな狭い隙間に、彼女は身を畳みこんで入りこんでいた。


 早乙女家の特性。関節が非常に柔らかく、細長い隙間にも潜りこんで任務を遂行することができる。

 暗殺を生業にする者たちの血が、彼女にも濃厚に流れていた。


 ヒナが隙間から抜けだして姿を現したことに、まず白蛇と黒蛇が気がついた。

 蛇たちが、主に彼女の出現を知らせようとする。


柔産毛(やわうぶげ)


 蛇は自分たちの死に気づくことなく首を断たれ、絶命した。

 しかし、婉駝は自身の身に絡みつく愛蛇たちの胴体から力が失われたことを感じとり、後ろを振りむく。


「! キサマ、オレのかわいい蛇たちになんてことしやがるんダ!!」


 ヒナはすかさず婉駝へと追撃し、勝負を決しようとしたがーー


横這い蛇(サイドワインダー)』ッ!!!


 鋭くしなる刃が、ヒナの腹を貫いた!!


「ジャラララ! キサマはこれで、終わりダッ!!」

「ごふっ……!」

「ヒナぁーっ!!!」


 ーーこれでこの小娘は確実に戦闘不能。毒も大量に体内に入り、じきに死に至る!


 手応えから、ヒナへの勝利を確信した婉駝。格下相手に愛蛇を殺されてしまうとは予想外の抵抗であったが、これで残りはもうひとりのみ。

 ……しかし、ヒナは腹を刺されながらも印を組んでおり、すでに次の術を発動していた!


「氷遁、『氷霞(こおりがすみ)』!」

「! なんダとっ!?」


 ……氷遁、『氷霞』。

 冷気のこもった霞をぶつけるだけの、基礎中の基礎忍術。

 だが、至近距離で放たれた冷気は婉駝の胴体を凍りつかせ、その伸縮性を失わさせていた!


 ーーコイツ、はじめからオレを道連れにするつもりで……!


「ツグミさん、お願いしますっ!!」

「おのれ、キサマらっ……!」

「はああああああっ!!!」


 駆けつけたツグミの渾身の一撃が、婉駝の胴体へと撃ちこまれる。

 柔軟性と伸縮性を失った胴体は容易く撃ちくだかれ、彼の胴体は分断されたーー。



 戦闘を終えたツグミは、ヒナのもとへと駆けよる。

 燃えさかる家財に囲まれるなか、倒れているヒナのそばにひざまずくと、彼女の体を抱きかかえた。


「ヒナっ! ヒナっ! 目を覚ませ、死ぬな!!」


 ヒナは目をつむったまま、グッタリとしている。毒がまわり、体のあちこちから出血しはじめていた。

 ヒナはツグミから必死に呼びかけられ、うすく目をひらいた。


「……ツグミさん。私、少しは役に立てましたか……?」

「役に立ったどころの話ではない! 殊勲の活躍だ!」

「ホントですか? よかった……」


 最後にそれだけ言うとヒナは目をつむり、意識を失ってしまった。

 ツグミは自分の懐をまさぐると薬瓶を取りだし、その蓋を開けた。薬瓶のなかには、白くトロリとした軟膏が詰まっている。


「これは西園寺家に伝わる妙薬だ。この薬を塗れば解毒することはできなくとも、一時的に毒のめぐりを止めることができる。私もこの薬に、何度も命を救われた」


 ツグミは薬をヒナの傷口に塗り終えると、彼女の体を抱えて立ちあがる。


「すぐに氷渡の医療班のもとへ連れていくからな……。絶対に死なせはしない!」


 そうしてツグミは走りだし、その場を離れた。

 西園寺ツグミ・早乙女ヒナの両名、蛇腹婉駝に勝利。ただしその後、戦線離脱ーー




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