表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エンシャント・クルーレ① ー『鳥』の章。異世界上司は美くびれ・美乳・美尻の最強くのいち!? 超絶忍術チートバトル!!ー  作者: 藤村 樹
狂乱の宴

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/70

強者の蹂躙

 黒鉄の潜水艇が城に激突した瞬間、俺のそばにいた湖水さんは動きだしていた。

 湖水さんは船が城に激突するのを、ただ指をくわえて見ていたわけではない。


 彼はとっさに悟っていたのだ。船に、自身をも脅かす存在がいることを。迂闊に手を出してはいけない。

 そして、観察していた。脅威の根源となる男が船の舳先(へさき)に立っていることを、瞬時に認識。そうして彼は、攻撃動作へと転じた。

 

()っ……や……!!」


 俺が気がついたときには、湖水さんは走りだしていた。

 舞いあがる雪がなければ、いなくなったことにすら気づいていなかったかもしれない。


 彼は滑るはずの雪面を全速力で駆けぬけ、凍った湖面も渡り、垂直に切り立つ崖のような船体を駆けのぼっていく!

 彼はまたたく間に船の舳先へと到達すると、大鷲狂乱へと襲いかかった!!


「そなたが『大鷲狂乱』……。鶴姫さまに危害を与えんとする外敵、始末する!!」


 危険すぎる敵を抹殺するために、湖水さんは全力で大鷲狂乱に攻撃を仕掛けていた。

 だが、次の瞬間には湖水さんの攻撃は全て弾きかえされ、身をズタズタにひき裂かれながら吹っ飛ばされていた!!


 全ての出来事があまりに疾すぎて、何が起こったのかまったく分からない。

 目で捉えきることができなかったが、恐らく湖水さんは刹那のあいだに水遁忍術を含む数百・数千という攻撃を繰りだしていた。


 だが、大鷲狂乱という男はそれらの攻撃を全て苦もなくいなし、逆に強烈な一撃を叩きこんだ!

 どんな術を使ったのかは不明だが、湖水さんは一撃で戦闘不能へとおちいる。


 ズタボロにひき裂かれた彼の体は猛烈なスピードで吹っ飛ばされていき、城下町のはずれへと墜落した。

 あまりの勢いに雪しぶきが舞い、街の一角が壊滅した。


 そんな……。

 湖水さんは『八百万の陸』、Aランクの最上位に位置する者だ。

 そんな彼が、こんな一瞬でやられてしまうなんて。Sランクとは、なんと恐ろしい存在なのか!


阿咖咖咖咖(アカカカカ)……。最初のひとりにして、なかなかの手練れ。恐らく今のが話に聞いていた『八百万』の若造か。だがやはり、弱くて話にならんのぉ!」


 湖水さんが戦闘不能に陥ったことを確認したのち、狂乱は鶴姫さんたちがいる祝宴場へと降りたった。

 と、同時に、船から兵隊もぞくぞくと城内へなだれ込んでいる。


 信楽家の私設兵隊に……見慣れない民族衣裳を着た部隊が混じっている。

 もしかしたら、狂乱が隠遁していたと噂される北方の島々の原住民族ってヤツだろうか。


 敵兵たちは、明らかに城を落とすつもりで突入していっている。早くこちらも、迎撃しなければ!

 城外で待機していた部隊も戦おうと、城のなかへと戻っていく。

 俺も、ほかの兵たちとともに城のなかへと入っていったーー。



 祝宴場『透蟷螂(すけどうろう)』。

 ここは城の真正面側にあったため、船の直撃は免れていた。

 しかし、衝撃の余波によって氷細工の蟷螂(カマキリ)たちは全て砕けちり、粉塵と化していた。


 その氷の粉塵を踏みにじり、姿を現した男がひとり。大鷲狂乱、その者であった。


阿咖咖咖咖(アカカカカ)……。ずいぶんと散らかった祝宴場だのぅ。少しは片付けておいたらどうだ?」


 圧倒的な強者の気配を放ち、迫る大鷲狂乱。

 その場にいた真白家の人々が皆おびえ、たじろぐなか、毅然として立ちはだかる女性がひとり。


「ふざけたことをおっしゃいなさるな。散らかったのはそなたが船ごとこの城に突っこんできたから。この責任、どう取りなさるおつもりか」


『八百万の伍』、真白鶴姫(ましろつるひめ)

 花嫁姿のまま、招かれざる来訪者をにらみつける彼女。

 身にまとう極寒の冷気はますます冷たく、その場に居合わせた者たちを震えあがらせた。

 さらにーー。


「ついに姿を現したな、狂乱。貴様に全てを奪われてからの、この十数年間。貴様に仇討ちするためだけに、拙者は残りの人生を修羅と化して生きることに決めたでゴザル」


 長年探し求めた宿敵の気配を察知し、下の階からあがってきたのは国内随一の侍、武藤海燕(むとうかいえん)

 普段は表に出さぬ老練された闘気を、今は惜しみなく肉体からにじみださせている。

 鶴姫と海燕。今ここに、Aランク上位以上のふたりが揃ったのだ!


「阿咖咖咖咖! 久しぶりだな、海燕。こちらはおぬしのことなど思い出すこともなかったが、ご苦労なことだ。『八百万』と力を合わせて、多少はまともな戦いができるとよいがな。阿咖咖咖!!」

「狂乱! 貴様、自身が犯した大罪を気にも留めぬと申すでゴザルか……! 断じて許さぬ!!」


 鶴姫と海燕は、同時に戦闘態勢へと入った!


 鶴姫が印を組むのと同時に、彼女の周囲を極寒の冷気が包みこむ。

 彼女の操る冷気は容易に絶対零度に到達し、冷気に曝された物体は分子運動まで停止させられてしまう。

 その超極低温の環境下では全ての時が止まってしまったかのように感じられるが、彼女はそのなかでも自在に動くことができるのだ。


 これが鶴姫の固有スキル、『氷廟(ひょうびょう)』。この絶対能力だけでも、彼女を最強の一角たらしめている。

 しかし、彼女に関して特筆すべきは、攻撃力という面においても、彼女は極めて秀でた能力を示すことだ。


「我が愛しき氷鶴(ひづる)たちよ。寒風を運びて、我に仇なす者を砕きたもれ!」


 鶴姫は『導』の操作により、千羽の氷鶴を造りだした。

 一羽一羽に、ひとつの都市を丸ごと氷漬けにしてしまえるほどの冷気が込められている。


 海を越えてさらに北方にあるという、永久凍土の大陸。

 氷鶴たちはあたかも、大陸の寒気を身にまとって飛来する渡り鳥の群れのようでもあった。

 これが氷雪系の忍の頂点に立つ真白鶴姫の究極固有忍術!

 

寒烈白飛(かんれつはっぴ)千羽氷鶴(せんばひづる)』!!!


 冷気が超高密度に濃縮された千羽の氷鶴が、一斉に大鷲狂乱へと突撃していく!

 これだけ高威力な攻撃をまともに受けて、形を保っていられる者がいるはずがなかった。

 全ての物体は分子運動の停止によって結合力が失われ、脆くも崩れさってしまうのだから。


「コオオオオオォ……!」


 武藤海燕もまた、自身の最強の技を放とうと、大きく息を吐きだした。

 腰に差した刀に手をかけ、地を這うように低い態勢を取る。


 近づくだけで身を切られてしまいそうになるほどに研ぎ澄まされた闘気。

 その闘気から繰りだされるのは彼の固有スキル『絶対切断』。


 かつて復讐に心を駆られ、肉が腐り、骨が剥きだしになるほどまで訓練を続けた結果、彼の魂へと刻みつけられた。

 後天的に発生した固有スキルであるが、それはまさしく彼が探し求めつづけ、たどり着いた剣道の極致なのであった。


 物理的切断だけではない、液体や気体などの無形物はもちろん、魂や幽体などの精神生命体ですらも完全に切断してしまうのだ。

 その究極の刃を、彼の最終奥義でもって振りきったとき。その剣で、斬れぬ物があるはずがなかった。


「武藤開心流抜刀術 終式、『(ぜつ)』!!」


 全部で十二種ある武藤開心流の抜刀術のうち、最後にして最強の技。全身全霊を懸けて繰りだしたひと振りにより、空間を断絶する。

 剣の届く範囲に留まらず、飛ぶ斬撃となり、太刀筋の平面上に存在する全てのものを斬り伏せるのだ。


 固有スキル『絶対切断』との組み合わせにより、その抜刀術はさらに壊滅的な威力を発揮する。

 敵の斬撃耐性をも無効化し、剣技にして大破壊忍術以上のダメージをもたらす技になっていたのであった。


 惜しみなく自身の最強の攻撃を繰りだした鶴姫と海燕。

 ふたりの強者から同時に攻撃を受け、さしもの大鷲狂乱も倒れたかに思われた。だがーー。




 一時ののち。その場に居合わせていた真白家の家臣のひとりが、つぶやいた。恐怖と驚愕で、その身をガタガタと震わせながら。


「馬鹿な……! あの鶴姫さまと海燕殿が、2対1でなすすべなく敗れるだと……ッ!?」


 身をズタボロにひき裂かれ、その場に倒れふす鶴姫と海燕。

 あとに残るは、傷ひとつなく立つ大鷲狂乱のみ。


「阿咖咖咖……。口ほどにもないわ、祭りの余興にもならんのぅ!」


 真白家の人々が絶望に包まれ、静寂に包まれるなか。

 倒れていた信楽ヒクイ丸が立ちあがり、フラフラと狂乱のもとへと近寄ってきた。

 鶴姫のパンチでまだフラつくのか、片手で頭を押さえている。


「クソッ、クソッ! 狂乱、その不愉快な女を早く殺してしまえ! 見てるだけで心底腹が立ってくるぜ!」

「阿咖咖咖。ヒクイ丸殿、コヤツらはまだ祭りの見世物として利用価値があるからのぅ。ワシの船に捕虜として乗せていくつもりじゃ」

「なんだと!? そんなんじゃ、俺の腹の虫が収まらねぇ! 今すぐ殺せ!」

「……ほう? ヒクイ丸殿、ワシの考えに何か異論があるとでも?」

「! ……く、好きにしやがれ!!」


 狂乱にひと睨みされて、ひきさがるヒクイ丸。いくら横暴な彼といえど、力の差が分からぬほど馬鹿ではない。

 彼らは今、協力関係にあり、建前上の身分としてはヒクイ丸のほうが上ではあるが、その力関係は決して対等ではないのだ。


婉駝(わんだ)よ、来ておるか?」

「ジャラララ……。狂乱さま、ワタスはここに」


 狂乱が戦いで開いた天井の穴を見上げ、声をかけると、ひとりの男がひょっこりと顔を覗かせた。

 男はそのまま祝宴場へと降りたつかと思いきや……。なんと胴体が伸びてきて、蛇のように天井から垂れさがってきた!


 北方の島々の原住民のような民族衣裳を着た男。胴体を伸ばす際に、わすがに鱗の擦れるような音がする。

 さらに、その長く伸びた胴体には白蛇と黒蛇の2匹がまとわりついていた。


 ーー彼の名は蛇腹婉駝(じゃばら わんだ)

 大鷲狂乱が北方の島々に隠匿した際に見つけた原住民の子で、彼自身の手によって育てあげた忍である。

 婉駝は上下逆さまで天井からぶらさがったまま、狂乱へと問いかけた。


「ジャラララ。狂乱さま、ワタスにどんなご用命でしタか?」

「婉駝よ。ここに倒れているふたりを捕縛して、船へと乗せろ」

「ハッ。お安い御用です、狂乱さま。ジャラララ……」


 捕縛忍術、『緊縛蛇牢(きんばくじゃろう)』!


 蛇腹婉駝が印を組むと、2匹の巨大な蛇が現れ、それぞれ鶴姫と海燕を縛りあげた。

 これらの蛇は『導』の操作によって造りだされた擬似生命体で、力を吸いとり、縛りあげた者の術の発動を封印することができる。

 縛りあげる力を強くして、そのまま縛った者を締め殺すこともできる強力な捕縛忍術だ。


「阿咖咖咖咖。さて、ヒクイ丸殿。このまま城を制圧する手筈でしたな。この場はいったんお任せしますぞ」

「ん? それは構わんが、お前はいったいどこに行くんだ、狂乱」

「阿咖咖咖……。この地に野暮用がございましてな。なに、すぐに終わりますゆえ」


 それだけ言うと、狂乱は腹心の部下数人だけを連れて、城に開いた穴から外へと飛びだしていってしまった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ