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エンシャント・クルーレ① ー『鳥』の章。異世界上司は美くびれ・美乳・美尻の最強くのいち!? 超絶忍術チートバトル!!ー  作者: 藤村 樹
狂乱の宴

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婚姻の儀

 氷渡城の最上層近く。

 祝宴の間である『透蟷螂(すけどうろう)』で、真白鶴姫と信楽ヒクイ丸の婚姻が執り行なわれていた。


 氷渡の名産である、氷細工。 この祝宴場では氷細工の蟷螂(カマキリ)が、数百、数千と無数に部屋に飾られている。

 思い思いのポージングをしている蟷螂は、その繊細な体躯が氷で再現されており、光をキラキラと反射しているさまは言葉が出ぬほどに美しい。


 これらの氷のオブジェは氷渡に満ちる冷気で維持されており、部屋のなかは暖かいのだが、氷はいっさい融けることがないのだ。

 さて、そんな美しい祝宴場で、婚姻の儀式はつつがなく進行していた。


「コツッ、コツッ、コツッ。では、お二方。この御神酒を口に含み、飲み干してくだされ。同じ盃で、新郎から順に」 


 婚姻の祭司を務めるのはもちろん、石鼓鶺鴒(いしこせきれい)である。

 今日の鶺鴒は祭司にふさわしく、宮司のような白装束を身にまとっている。

 婚姻の祭司を務める以上、石鼓家には神職としての側面もあるのだ。


 新郎・新婦である信楽ヒクイ丸と真白鶴姫も当然、美しく着飾っている。

 ヒクイ丸は武膳高山を象徴する色である紅蓮の紋付き羽織袴を。

 鶴姫はみぞれ色を混じた白無垢で、彼女の白く艶やかな肌をよく映えさせていた。

 

 鶺鴒から御神酒が入った盃を受け取り、ひと口飲み干す。

 そして盃はそのまま鶴姫へと受け渡され、彼女もひと口飲み干した。


「コツッ、コツッ、コツッ。では、お二方。互いをよき夫・よき妻として支えあい、永遠の愛を貫くことをお誓いください。誓いの口づけを」


 鶺鴒が、誓いの口づけを指示した。

 この口づけをもって、婚姻の儀は完了。ふたりは晴れて夫婦となる。歴史的な婚姻が成立となるのだ。


 ヒクイ丸は鶴姫と向かいあうと、彼女の両肩に手を添えた。

 目の前にあるのは、雪のように白く小さな顔に、ぷっくりと(つぼみ)のように膨らむ赤い唇。

 そうして彼は屈みこみ、彼女のその可愛らしい唇へと、口づけしようとしたーー。


 が、そこで鶴姫は再び先日のように、ヒクイ丸の口元を手で押さえ、彼を制した。


「コツンッ……。鶴姫殿、いかがされましたか?」

「おい、鶴姫っ! お前、何してんだ!?」


 これにはさすがの鶺鴒とヒクイ丸も動揺を隠せなかった。

 ふたりが鶴姫を問い詰めるが、彼女はうつむき、黙したままだ。


「コツ、コツ……。鶴姫殿、誓いの口づけは婚姻において欠かすことのできぬ儀礼でございます。この過程を経ずして、婚姻を成立させることはできませぬ」

「おいおい、鶴姫ぇ! この俺サマとの口づけで緊張するのは分かるが、覚悟を決めろよ! みぃ~んな待ってんだぜ!!」

「…………じゃ」

「あぁん? なんだって?」

「おぬしと結婚するのは、いやじゃ!!」

「なんだとっ!!?」


 鶴姫はその場で綿帽子を脱ぎ捨てると、その美しく化粧された顔をあげ、大声で叫んだ!


「いやじゃいやじゃいやじゃ! 私はこんな品性の欠片もない男とは結婚しとうない! 私は、私の愛した男と結婚するのじゃ!!」


 これには、式に出席していた両家の親族たちも騒然となってしまった!


「鶴姫! お主、何を言うのだ!?」

「おやめください、鶴姫さま! 武山藩と、血みどろの戦になりますぞ!?」

「無礼なり! いくら大名家の娘とは言え、我らが主ヒクイ丸さまになんという狼藉か!!」


 真白家の人々はあわてふためき鶴姫を諌め、信楽家の人々は怒りで殺気だっている。

 だが、当の本人であるヒクイ丸が、黙っているようなタマであるはずがなかった。

 彼は互いの親族が見ているのもお構いなしに、鶴姫を怒鳴りつけた!


「鶴姫、てめぇっ! この俺サマに赤っ恥をかけさせやがって! 新婦だろうが、容赦はしねぇぞ!!」


 そう言って、ヒクイ丸は鶴姫へと殴りかかった!

 荒々しくも洗練された、拳のひと振り。華奢な鶴姫の体など、うすい氷のように打ち砕かれてしまいそうであった。

 だが……!


五月蝿(うるさ)い!!」

「うぼぐぇッ!!!」


 鶴姫のさらに強烈なパンチでヒクイ丸はふっ飛ばされてしまった!

 ヒクイ丸は氷の蟷螂の群れのなかに頭から突っこむ。

 細かい氷の破片が刺さって痛そうだが、煙のように舞いあがった破片がキラキラ光ってとってもキレイ。


 あまりの光景に両家の親族たちは唖然としているが、鶴姫の怒りは収まらない。

 彼女はその場を歩きまわりながら、ブツブツと独り言をつぶやいている。


「だいたい湖水は何をしておるのじゃ? 結婚を止めに来てくれるのをずっと待っているのだというのに……。もしかして本当に私がほかの男と結婚するのを黙って見ているつもりか?」

「鶴姫さま、どうか落ち着きくださいませ……」

「湖水は今、どこにおる!?」

「ひぃっ! 城外の警備隊を指揮しております!!」


 腰元のひとりが鶴姫を宥めようとしたが、鬼気迫る彼女にひと睨みされて、震えあがってしまった。

 湖水の所在を知った鶴姫はツカツカと窓のほうへと歩みを進めていき、窓を開けはなった!


「湖水ぃーーッ!!」

「!!」


 自身を呼ぶ声に、湖水は振りかえり、城を見あげた。

 城の最上層にいる鶴姫から、麓にいる湖水へと。彼女は声を限りに叫び、湖水へと懸命に呼びかけていた。


「湖水、何をそこで立ちどまっておる! なぜ止めに来ぬ!? 私が誰と結婚しようと、もうどうでもよいとでも言うのか!?」

「鶴姫さま、しかし……!」


 鶴姫は涙をポロポロと零しながら、訴えつづけた。

 それを聞く湖水の頬にもまた、ひと筋の涙が伝い落ちていた。


「身分がなんじゃ! 異人の血がなんじゃ! 私は誰よりもそなたのことを愛しておる!! それだけで不服があるとでも申すのか!!」

「ッ……! 鶴姫さま……!」


 湖水はその場にひざまずき、城の最上層にいる主へと頭をさげた。

 瞳から、涙を溢れさせたまま。


「こんな卑しき身である私が、一生あなたのそばにいたいと望むことを、どうかお許しくださいませ……!」

「湖水……!」


 鶴姫は涙で目を真っ赤にさせたまま、城下にいる湖水へとほほえみかけたのであった。


 俺の前では湖水さんがひざまずき、一生鶴姫さんのそばにいるという意思を表明していた。


 ……これでようやく、湖水さんは自分の気持ちに素直になることができるようになったんだな。

 それはやはり、鶴姫さんも心から望んでいることであったのだ。


 世間がふたりの関係を認めてくれるまで、どれだけ多くの困難が待ち受けているかは分からないけれど、このふたりならきっと乗り越えていけるんじゃないだろうか。


 さて。とは言え、大名家どうしの結婚がドタキャンでご破談となってしまったのだ。

 城の祝宴場では大騒ぎになっているに違いない。ヘタすりゃ、氷渡藩と高山藩との全面戦争にも発展しかねないのだ。

 湖水さんが場を仲裁しようと祝宴場に向かおうとした、そのときであった。


 城の背後の湖が割れ、影が現れた。

 城を飲みこんでしまうほどに巨大な、黒い影。表面は滑らかで、光沢がある。

 鯨……? いや、違う。


 これは、船だ。標的めがけて水面下を進む、黒鉄の潜水艇。


 恐るべきは、その隠密性だ。

 城の周囲の結界が解除され、てっきり敵は空から襲来するものだと思っていた。

 あったとしても陸路で、近隣に転移輸送陣を配置し、送りこんだ兵士が押しよせてくる可能性を考慮していた。


 だが、まさか、城の背後に広がる湖の水面を叩き割り、いきなり真後ろに現れるとは!


 こうして目の前にしてみれば、城と見紛うほどの巨大な質量をもった建造物。

 内部からはおびただしいほどの殺気と強者の気配で、まるで怪物の巣のようだ。


 これだけの存在感をもった物体が接近してきていたのに、誰も気がつかなかった。

 いくらお取り込み注意であったとはいえ、超一流の忍である湖水さんや鶴姫さんにまで接近を悟らせないなんて、どう考えても異常事態だ。


 これは超高等な忍術が使われている証拠だ。『導』の操作によって気配を消されているうえ、存在の認識が意識の外へと追いやられている。

 異様なる黒鉄の船は減速することなく突進し、城へと激突した!!


「なっ……!!」

 

 正確には水面から飛びだした船の船底が、真横から城へとのしかかった形だ。

 船がめり込んでゆくのとともに亀裂が走り、城はまたたく間に半壊してしまった!!


 ……そして、黒船の舳先にはひとりの男が立っていた。

 大型の猛禽類のように、大柄で無駄のない体格。老齢と言ってもいいほどの年齢だが、その獲物を狙う眼光はギラギラと輝き、衰えることを知らない。


 この感覚、覚えがある。

 初めてアシュナさんと出会ったとき。『ドルジェオン』のファスマ・エルローズ、『創』の陸雲と対峙したとき。


 真の絶対強者に出会ったときに味わう、体の芯から震えあがるような絶望感。

 彼らからすれば、自分がチンケなモブのひとりにすぎないのだということを、嫌というほど思い知らされる。


阿咖咖咖咖(アカカカカ)……。さぁ、『狂乱の宴』の始まりじゃ!」


 国際危険度標準化比較(ISRR)・Sランク、大鷲狂乱!! 国内に3人しかいない、『最強(Sランク)』のひとりである。




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