ボーイズ・ラブ ー新たなる恋の予感ー
前回の場面の続きです。
◇
俺は人混みをかき分けて、美鈴とセンパイのもとへと向かう。
美鈴は、受けとった褒章のポチ袋を愛おしそうに頬ずりしていた。
「はああぁ……♥️ 命を懸けてクエストに参加してよかったぁ♥️ こんなに報酬もらえるなんて……。Dランクのクエスト何個分なのよって感じよね!」
「おいおい。美鈴が操られたせいで、俺と夜鷹が死にかけたことは忘れるんじゃないぞ?」
「もぉ~、怒ってないんじゃなかったの? ……あ、夜鷹くん!」
美鈴は俺が近づいてくるのに気づくと、ブンブン手を振ってくれた。ちょっと前まで寝込んでたのに、本当に元気だ。
「スゴいスゴい、スゴいねぇ! クエスト1個で昇格なんて、異例中の異例だよ。スゴいことだよ~!!」
「ついにこの先輩を越えたか……。だが、俺はこれからもお前の目標でありつづけよう!」
いや、センパイの言ってる意味がよく分からん。
越されたら目標にならなくね? 別に目標にしてたわけではないし……。まぁ、いいけどね。
「でも夜鷹くん、本当に別人のように強くになったよねぇ。どうやってこんなに短期間で強くなったの~?」
「うむ、それは俺も気になっていた! 教えろ、みんなには黙っててやるぜ!!」
「ああ。俺、実は雲雀アシュナさんのもとに弟子入りしてたんだよ。アシュナさんの家に住み込みで」
「「え?」」
美鈴とセンパイは互いに目を見合わせ……。
「「えええええええええええっ!!?」」
ーふたりが落ち着くまで、しばしお待ちくださいー
「あ、あ、アシュナって、本当にあのアシュナさん!? 国内最強にして『世界三大美女』のひとりに数えられる、あのっ……!? どうりで強くなるわけだわ……!」
「夜鷹、キッサマああああぁッ!! 美乳・美くびれ・美尻の三種の神器の持ち主とされる、あのアシュナ様だと!? 俺がアシュナさまの大ファンだと知っての狼藉か! しかも住み込みとは、許さん!! 今度サインもらってきてください!!!」
「あばばばば」
美鈴は両手で顔を覆って、ワナワナと震えている。なんだ『世界三大美女』って、初めて聞いたぞ。
センパイはというと、俺の胸ぐらをつかんで激昂している。首がガクガクするから前後に揺さぶるなとゆーに。
別に隠していたわけではないのだが、このふたりには今度アシュナさんのサインをもらうことで許してもらうこととした。とんだ騒ぎである。
……それにしてもアシュナさんと初めて出会ったときの加茂吉と天音のリアクションといい、このふたりの反応といい、アシュナさんって本当にみんなの憧れの存在なんだなぁ。
「あっ! そういえば、センパイ」
「ん?」
「借りてた『殻割り棒』返すの忘れてましたね、スンマセン。今、渡しますね……」
「ああ、それな……」
アブナイアブナイ。危うく返しそびれるところだったよ。早くひづきに元に戻してもらわなきゃ。
でも、せっかく大切な固有武器を返すというのに、センパイは浮かない顔というか、どこか歯切れの悪い感じだ。いったいどうしたのだろう?
「俺の『殻割り棒』な。お前にやるよ」
「ハイハイ、ただ今…………えっ!?」
「どうやってるか分からんが、お前は今、俺の固有スキルを使えるようになってるんだろ? お前のほうが使いこなせてそうだから、やる」
「え……マジでいいんスか!?」
固有武器を、くれるだって!?
『殻割り棒』は外殻を持ってる敵に2.5倍のダメージ。
外殻を持ってる魔物は多いし、得てして防御力も高い。人型の鎧にも有効なので、かなり使えるスキルだ。
固有スキル・固有武器は先天的に手に入る場合も、後天的に手に入る場合もあるが、ひとりの人間がそうそう簡単にいくつも手に入れられるものではない。
まさにその人の『魂の形』とも言える、とても貴重なものなのだ。それを俺に譲ってくれるとは……。
「俺はお前のセンパイとして恥ずかしくないよう、もっと努力して、もっと新しい力を手に入れてみせる。だから、気にすんな!」
「私たちはDランクの任務をこなすから、いったんまた別行動ね。でも、私とセンパイも夜鷹くんに追いつけるように一生懸命がんばるから。だから、上のランクに進んで待っててね!」
……振りかえってみれば、いつもセンパイぶってて、正直うざったく思うこともあった。
でも、よくよく付き合ってみると気持ちいい性格の人だったな。この人が先輩で、本当によかったと思う。
美鈴もいつも朗らかで明るくて、場を和ませてくれた。いっしょに旅して、楽しかった。
それにしてもこのふたり、意外とお似合いなような。次に会うときには付き合ってたりして……なんてな。
次のクエストを探しに行くと言って、俺はセンパイたちと別れた。
さて、さっそくDランクの掲示板でも見に行くかな。いや、その前にアシュナさんに報告か……。
そんなことを考えながら振りかえったところ、俺の前に立つ者がいた。
「君は……!」
「…………」
俺の前に立っていたのは、嘴黒クンだった。視線を反らし、なにやら言いづらそうにしているが……。
「鳴瀬。お前、いきなりCランクに昇格したみてぇじゃねぇか。やるじゃん」
「おお! でもそれは嘴黒クンが敵を縛りつけてくれてたからだよ。嘴黒クンがいなけりゃ、絶鬼に一撃お見舞いすることはできなかった。ありがとう」
「あぁ、そか……」
「…………?」
嘴黒クンの様子は、やっぱり変だ。
本当は何か言いたいことがあるけど、どう言えばいいのか分からないような。そんな感じに見える。いったいどうしてしまったのだろうか。
「悪かったな」
「へ?」
「お前や美鈴、鶉橋センパイに偉そうな口聞いちまってよ。結局、お前らの力がなきゃ今回のクエストをクリアすることはできなかった」
「いいよそんな。嘴黒クンが一番強くて、ランクが高いのは間違いないんだし。偉ぶるだけの資格があるよ、ハハハ……」
「いや、そんなんじゃ俺はごまかされねぇよ。使ってるのは一般忍術だったが、術のキレ・威力ともにお前のほうが上だった。今までどうやって実力を隠してたか知らねぇが、真の首席はお前だったんだ。BランクやAランクに昇格するのも、すぐだろう」
「…………」
う~ん。実は転生してきたら強くなってたとはとても言いづらい雰囲気。
だが、その雰囲気は思いもしない方向へと変貌していった。
彼はおもむろに手を差しのべると……俺の手をギュッと握りしめてきた!!
「戦ってるときのお前……最高だった。夜と黒なら最高のコンビだろ? 早くランクをあげて、コンビを組もう。俺、いつでも待ってるから……」
それはただのコンビ結成のお誘い……では、なかった。
ーーえ? え? もしかしてお前、ソッチ系?
なに頬を赤らめてるんだ! なに視線を反らしてモジモジしてるんだ!!
お前はイケメン性悪エリート(ライバル枠)じゃなかったのかよ~!!!
「ハ、ハハハ。ゴメン、マズハBランク二アガレルヨウニガンバルヨ……」
「鳴瀬!」
俺は手を振りほどくと踵を返し、その場を去ることとした。
たしかにコイツは男もハッとするほどの美青年であるが、残念だが俺にソッチの気はない。女のコが大好きな、普通の男子なのだ。
多様性の世のなかなのでダメということはないのだが、俺にも選択権がある。悪いけど君の気持ちには応えられないよ。
……それにしても、なんだこの胸のざわめきは。
ここから先の一線を越えたら、なにか底知れぬ沼に嵌まりこんでしまいそうな……そんな感じがする。
違う、違うぞ。これは新たな恋の始まりなんかじゃない! 違うぞ~!!
「鳴瀬。俺、いつまでも待ってるから……」
「待たんでええ~!!」
俺は逃げるようにして、ギルド本部をあとにしたのであった!
┌(┌^o^)┐ホモォ...




