『八百万の捌』、玖ノ宮アリサ!!
◇
「トゲトゲトゲトゲ!! こっちは生理痛でイラついてんだっつーの! 地獄の鬼だか知んねぇけど、真の地獄を見せてやるわっ!! ぶち抜け、『磔殺針先地獄』ッ!!!」
玖ノ宮さんがグン! と鎖をひっぱると、なんと、後ろの人型の顔・胸・胴体・手足が両開きの扉のようにパカッとひらいた!
ひらいた扉からはガトリングガンの砲身のような金具 ー蜂の巣や、ハスの花托のようにも見えるー がいくつも顔を覗かせていた。
金具は高速で回転しはじめると……無数の針を乱射した!!
『グオオオオオオオオオオオオォッ!!!』
無限とも思える数の針に撃ちぬかれ、絶鬼の肉体はみるみる消滅していく!
それにしても、尋常ではない勢いと針の数だ。あえて音で表現するならば、
ドゥルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルッ!!!!
という感じ。まさしく針のガトリングガン……いや、針の嵐といったところか。
撃ちだされている針も、ただの針ではない。
本物の金属ではなく『導』の塊として具現化されたものなのだが、あらゆる属性耐性に対応できるようにしているのか、1本1本にさまざまな自然属性が付与してある。
さらに攻撃耐性にも対応できるよう、貫通属性だけでなく斬撃属性、打撃属性、爆裂属性まで付与されたものが混じっているのだ。
美鈴の『チュン砲』もすごい威力だったが、こちらはそれに匹敵する威力を維持して放出しつづけている感じだ。
なんと攻撃的な術なのだろう!
……全員がAランク最上位以上の実力を有するという『八百万』。
『八百万』の数字は身分や階級の序列を意味するものではないが、戦闘力の優劣によって定められている。
げに恐ろしきは、彼女の実力。
彼女は『八百万の捌』、すなわち『八百万』のなかでは1番実力が劣ると目されているのだ。
8位であの強さなのだから、他の人たち、特にその頂点に立つアシュナさんがどれだけ強いのか、もはや想像すらつかない。
『おのれぇ……!! おのっ、れっ……ウボェ!!!』
絶鬼はもはや細切れの肉片になりながらも、まだ意識を保っているようだ。
玖ノ宮さんのあの攻撃を受けて未だに生きてるのだから、アイツもじゅうぶん凄いバケモノである。
ただ、相手が悪かった。タイミングも悪かったのかな。完全復活を遂げたあとなら、また少し違った未来もあったのかもしれないけど。
ただ、『八百万』の強さを目の当たりにしたあとだと、たとえ絶鬼が完全復活を遂げていたとしてもあまり結果は変わらなかったような気もする。
地獄の十二柱がのさばっていた時代には、『八百万』みたいな人間はいなかったかもしれないしね。
とにかくそう思ってしまうほどに玖ノ宮さんは、強い。
また新たな目標ができた気分だ。早く俺も『八百万』の人たちのあいだに割って入れるくらいに強くなりたいなぁ。
攻撃の手を緩めることなく針を撃ちつづけていた玖ノ宮さんだが、少し屈むような姿勢となった。
なにやら自分のお臍の下あたりをさすっているようだ。
「あ~、痛ったぁ……。くそ、早く消えろよ。しぶといんだっつーの。ムカムカムカ……」
と、そのときだった。俺は気づいてしまった。玖ノ宮さんの後ろの地面から、ヒョロヒョロと血の筋が湧きあがっていることに。
本体に取り込まれていない絶鬼の分体……『苛戯裏』がまだ残っていたのか。
玖ノ宮さんは、『苛戯裏』が地面の下から自在に現れることができる性質があることを知らないーー
「ハッ!」
玖ノ宮さんはかすかな気配に気がつき、後ろを振りかえる。そして、自身の背後に現れた異形の怪物の姿を認めた。
ーーしまった。生理痛がひどくて、反応が遅れた……!
『苛戯裏』は美鈴にしたように、玖ノ宮さんの肉体も乗っとろうとした。
だが、その企みは脆くも崩さることとなる。なぜなら俺が、『苛戯裏』を斬り捨てたからだ!!
「玖ノ宮さん、大丈夫ですか!?」
「! あんたは!?」
「体調悪いんですよね? 背後は俺が守ります。玖ノ宮さんは、どうぞ攻撃に専念してください!」
「ッ……!!」
玖ノ宮さんはなぜだかボッと顔を真っ赤にした。
恥ずかしそうにしているようにも、怒っているようにも見えたが、また前を向き、ますます攻撃を激しくさせた。
「どこの誰だか知んねーけど、あたしに指図すんじゃないわよッ! ムカーーッ!!」
『おのっ……れ……。おのののののの…………』
玖ノ宮さんの攻撃はますます激しくなり、絶鬼に残された肉体はいよいよ残りわずかとなった。
すると、残された肉片のひとつからポン、と何かが飛びでた。
それは、巨大な脳ミソだった。
脳ミソから直接、黒い触手がたくさん生えでていて非常に気色悪い。
触手を足代わりにしてワサワサと地を走っている。どうやら、闇に紛れて逃げようとしているようだ。
『魂珀の腕輪』から再び、ひづきの声が聞こえてきた。
『夜鷹、アレが絶鬼の本体よ。仕留めなさい』
「! 了解ッ!!」
あの脳ミソが絶鬼の本体ってワケか。
脳ミソは羊くらいの大きさはあるが、体全体の大きさを考慮に入れると、とっても小さい。
俺は逃げた本体を仕留めるべく、全力で駆けだしはじめた!
「絶鬼、覚悟しろっ!!」
『ヒエエエエエエッ!!』
脳ミソはワサワサと触手をバタつかせながら、ビッショリと汗をかいている。
脳ミソなのになぜ汗をかいているんだ、口がないのにどうやって声を出しているんだっ!
俺は怒りに任せ、『宵食みの翼』を振りきった!!
「てりゃああああっ!!!」
『ギエエエエエエッ!!!』
脳ミソを真一文字に一刀両断!!
う~ん。大っきなバターを切ったかのような、なめらかな切れ味。
……勝った。絶鬼との死闘に、ついに決着がついたのだ。
切断された脳ミソはボロボロと崩れ、消滅していく。するとなんと、崩れた脳ミソのなかから一本の刀が出てきた!
これは、スゴい業物だ。鞘に納まった状態で、触れてなくてもわかる。
なんというか、伝わってくるのだ。神気というか、ただならぬ気配が。
ゲット・プライズ!
『天叢雲』ゲット!!
ここで再び、ひづきの声。今度はテレビのような画面を展開し、その可愛らしい顔を覗かせている。
いつもクールな彼女にしてはめずらしく、少し興奮しているように見えた。
『! 夜鷹、その刀は『神話級』よ』
「えっ、マジで!?」
『地獄の十二柱が『英霊』に滅ぼされたとき、絶鬼の魂が生き残ったのはこの武器を取り込んでいたおかげね。こんなところで回収できるとはラッキーよ』
「すっげぇ~……。なあなあ、ひづき! この刀も『宵食みの翼』に合成することができるのか?」
『合成すること自体は可能よ。ただ、今のあなたの魂の器では、逆に『神話級』に取りこまれてオシマイね。合成して使いたければ、まず自分を鍛えあげることね』
「ちぇっ、現実はそう甘くないってことか」
『文句言わないの。使えるようになるまで預かっててあげるわよ』
ひづきがそう言うと、彼女の画面が移り変わり、虹色の光の空間が映しだされた。
どうやら画面の枠を通して物を入れて、その奥の空間に収納しておけるものらしい。
奥の空間は広大で、東京ドームほどの広さがある。なかに入れた食品や薬は腐らず、新鮮なまま。
ちなみに画面の枠も自由にサイズを変えることができるので、どんな大きさの物でも入れることができるらしい(!)
『ホラ、早く。見つかって役人に没収される前に、しまいなさいよ』
「はぁ……」
『あなた、やっぱり私のこと便利屋だと思ってるでしょ』
「思ってません!!」
俺はひづきに言われるまま、空間の奥に刀をそっとしまいこんだ。
「ところで、『天叢雲』にはどんな固有スキルがあるんだ?」
『フフ。使いこなせるようになってからのお・た・の・し・み、よ』
こうして、俺はこっそり『天叢雲』をゲットしたのであった!!




