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エンシャント・クルーレ① ー『鳥』の章。異世界上司は美くびれ・美乳・美尻の最強くのいち!? 超絶忍術チートバトル!!ー  作者: 藤村 樹
色綿の怪

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弱者の反撃


 前回の場面の続きです。


「まひわさんを放せと言っているだろう! 彼女が、この村の人たちが、いったい何をしたと言うんだ!!」

『何をした、だと? 我を呼び寄せたのは他でもない、こやつら自身だぞ!』

「ゲホゲホゲホ! やめてぇっ……!」


 咳きこみながらも、必死に嘆願するまひわさん。

 しかし、その願いもむなしく……。悪意によって、この村の真実が暴かれていく。



 ーー世にもめずらしい、花咲くときから色づいている『睦綿村』の綿花。

 その色素の原材料には、()()()()()が使われていた。


 正確に言えば、人間の遺体。

 赤から血を、髪から黒を。骨から白、肝から緑……。


 人間の肉体から抽出した色素が、底知れぬ奥行きをもつ色味をつくりだす。

 それが、どうしようもなく人の心を惹きつける色味の秘密。植物や獣からは、決して得ることができない。

幡綿染(はたわたぞ)め』の由来は、『腸染(はらわたぞ)め』なのであった。


 かつて、まひわよりもずっとずっと前の代の村長がいたころ。

『睦綿村』には、細々とした綿花栽培以外に目立った産業がなく、貧困に窮していた。


 日々の食事にありつくのもやっと。

 飢えによる死者も現れはじめ、村が存亡の危機に立たされたときのことであった。


 この村が、合戦の戦地となった。村人たちは関係なかったのだが、近くで起こった戦に巻きこまれてしまったのだ。

 荒れていた村はさらに荒れはて、わずかに残されていた食糧さえも全て奪われてしまった。

 飢え死にするのを待つばかりとなったとき……村人たちは、見つけてしまった。


 戦で死んだ者たちの血を吸った綿花が、赤い花を咲かせていることに。

 その花から採れる綿はとてつもないほど色鮮やかで、艶のあるものだった。


 赤い綿は、非常に高値で売れた。

 食事を得るだけの富を得て、貧困の危機を脱したのだ。


 人間の肉体からさまざまな色を抽出する技術も確立し、村はますます豊かになった。

 徐々に『幡綿染め』の名声も高まっていく。


 とは言え、人間の死体など、そうどこにでも転がっているわけではない。

 合戦で死んだ人間の遺体もすぐに底を尽き、材料が枯渇することとなってしまった。


 しかし、人間の肉片を畑に埋めているうちに、村の土にはとある化け物が住み着くようになった。

 それが、『苛戯裏』だった。


『苛戯裏』は村人を襲うことはなく、どこからともなく人間の死体を運んできてくれた。

 その代わりに、村人たちは『苛戯裏』の存在を隠匿したのであった。『幡綿染め』に関わる者だけが知る、この村の真実。



 話を終えた煙の顔は、再び笑い声をあげた。うなだれているまひわさんを、なんとも愉快げに見やりながら。


『クァックァックァッ! どうだ、下劣だろう? 醜悪だろう? 同族の亡骸をばらし、弄くりまわすこの蛆虫どもをお前は救うつもりか!? そんな馬鹿なことはやめて、早く私の血肉となれ!!』

「……! お前が『苛戯裏』の親玉だな!? たしかに村の人たちの行いは、罪深いものだったかもしれない。だが、それは懸命に生きようとした結果だ! 必死に生きようとする彼らを嘲るお前のことを! 俺は断じて許さないッ!!」

「鳴瀬さま……!」


 この煙の顔が敵の親玉だというのなら、話は早い。

 コイツをぶっ倒して、この村を救う! そうして、緊急クエストもクリアだ!!


『クァックァックァッ。威勢のいいことだ。だが、この場で倒されるのはお前のほうだがな!』

「ゴメンネ、夜鷹クン」

「ッ!!?」


 瞬間、背中に激痛が走る!!

 俺の背中に刃を突き立てていたのは……美鈴だった。

 仲間を刺しているというのに、恐ろしいほどの無表情。あの表情豊かな、美鈴が。


「カハッ! みす……ず……?」

「鳴瀬さまァッ!」

「よ、夜鷹ーっ!!」


 意識が遠のくなか、まひわさんとセンパイの叫び声が聞こえてきた。

 悲痛な叫び声のはずなのに、どこか薄膜を張った向こう側から聞こえたかのようにボンヤリしている。


 俺は倒れ、その場にうずくまった。傍らでは、美鈴が無表情のまま立って、俺を見おろしている。

 手に持つクナイの刃先からは、鮮血が滴り落ちていた。俺の、血が……。


『クァックァックァッ! 鳴瀬夜鷹が倒れては、もはや貴様らに勝ち目はないな? 全員、おとなしく我が血肉となるがいい!』

「鳴瀬さまっ、鳴瀬さま……あぁっ!!」


 まひわさんは俺のもとに駆けよろうとしたが、煙のなかへと引きこまれ、見えなくなってしまった。

 俺は彼女を救いだそうとしたが、的確に急所を貫かれてしまったようで、まったく体に力が入らない。


 くそっ、回復忍術はまだアシュナさんから習っている途中だったんだ。

 このままじゃ身動きするどころか、マジで死んじまう……。


 しかし、今の美鈴は俺が失血死するのを待つ時間すら与えてくれないようだ。

 彼女は無表情のままクナイを振りあげ、今にも俺にとどめを刺そうとしている。

 そんな……。こんな終わりかたってアリかよ……!!



 漆谷飛蜂は、自身をとり囲む『苛戯裏』と戦いながら、夜鷹たちに起こった異変に気がついていた。


「ブブブブ! あのくのいち、化け物にとり憑かれていやがったのか。まったく、世話が焼ける!」


 悪態をつきながらも、飛蜂は印を組み、『導』を練りあげた!


蜂操(ほうそう)忍術、『薬毒調合』!!」


 ーー漆谷の家系は本来、薬師(くすし)の家系である。

 養蜂は、薬剤の研究の一環として行っていたにすぎなかった。


 蜂操忍術の開発により忍の名家として知られるようになったが、薬学にも精通している。

 そんな彼は、『導』の操作によって蜂の毒の成分を自在に変えることができた。


 薬と毒は表裏一体。

 (よこしま)()()()()()与える毒。

 彼は自身が飼っている蜂に、人間にはいっさい影響を与えず、『苛戯裏』にのみ作用する毒を作りだしてみせた!


「ア゛ッ……!!」


 飛蜂は蜂を飛ばし、美鈴の首筋に毒を注入させた!

 彼女の体内に潜りこんでいた小さな『苛戯裏』が滅され、浄化されていく。


 美鈴は小さく悲鳴をあげ、そのまま気を失って倒れこむ。

 操られて夜鷹にとどめを刺してしまうところであったが、すんでのところで阻止せしめたのだ。


 ……しかし、夜鷹たちのほうに気を取られている隙に、『筋肉』による鞭の攻撃が飛蜂へと襲いかかった!!

『薬毒調合』は高度な集中力を要する秘術であるため、その隙を突かれてしまったのだ。


「ぐぁっ!!!」


 無数の鞭に打ちすえられた飛蜂は吹っ飛ばされ、家屋へと突っ込んだ。

 あまりの衝撃の強さに、激突した家屋は倒壊してしまった!


 ……主を守るため、とっさに蜂たちがあいだに入って盾となり、致命傷はまぬがれた。

 だが、身代わりとなった蜂たちの多くは潰れて死滅し、飛蜂も瓦礫にまみれて戦闘不能におちいってしまった。


「ブブブブ……。不覚、この傷ではもう戦えん……ゴフッ!」


 飛蜂と美鈴が倒れ、傷ついた夜鷹を守る者はいない。

 しかし、『苛戯裏』の1体が夜鷹を取り込もうと襲いかかってきた!


『骨』を主体とした個体。

 取り込まれた人間の骨は『苛戯裏』の邪気に当てられて禍々しく変形している。骨による固い外殻と、鋭い骨棘を特徴としていた。


 対して、夜鷹は身を守りたくとも、体を動かすことができずにいた。


「くそ、万事休すか……!」


 そのとき、夜鷹と『苛戯裏』とのあいだに割って入る者がいた!


「キサマら、俺の後輩に何をするだー!!」


 夜鷹を守ろうと『苛戯裏』の前に立ちはだかったのは、鶉橋京助であった!


 固有武器、『殻割り棒』!!


 ーーそれは鶉橋京助の固有武器にして、固有スキル。切れ味が鈍く、刀としてはあまりにナマクラ。

 だが、()()()()()()に対しては2.5倍のダメージ。


 さらに、闇雲に放った彼のひと振りは偶然にも会心の一撃となった。

 敵の守備力を無視し、もう2倍のダメージ……ッ!!


 鶉橋京助の攻撃により、『苛戯裏』の骨の外殻はうち砕かれ、倒された。


「や、やった……! この俺が1匹、やっつけたぞ!!」


 しかし、『苛戯裏』の新たな個体は次々と集まってくる。


「センパイ、俺に構わず逃げてください。センパイじゃ、あの数の相手は……」

「うるせぇっ、誰が逃げるか!」


 鶉橋は震える手でギュッと刀を握りしめ、目の前の敵へと構え直した!


「俺がこのなかで1番弱いことはわかってる! お前や美鈴より才能がないことも! だが、それでも大事な後輩を守るために意地を張る!! それが先輩ってヤツの役目なんだよッ!!!」

「センパイ……!」


 鶉橋は傷ついた夜鷹を守るため、『苛戯裏』の群れへと立ち向かっていく。

 だが、悲しいかな。いくら彼が自身の誇りと矜持をかけて戦っても、勝ち目はない。


 彼が『苛戯裏』の攻撃によって、命を散らそうとしたとき。

 大地から樹の根が突きだし、『苛戯裏』たちを貫いた!

 これには守られた当の本人である鶉橋も、地面でうずくまっている夜鷹も驚きを隠せなかった。

 

「なんだッ!?」

「あなたは……椋居さん!!」


 緑の長髪に、とろんとしたまなこの美丈夫。木皮を思わせる、上品な桑色の着物を着ている。

 そこにいたのは、夜鷹が村への道中で出会った、椋居大樹であった。


 異常なほどのノンビリ屋である彼だが、初めて出会ったときとはひと味違う。

 今の彼はキリリとしたまなざしで、うずくまっている夜鷹を見やった。 


「 ゴ メ ン 遅 れ た 」

「いや、こんなときくらい速くしゃべって!?」


 ※ここからの会話は3倍速でお楽しみください。


「椋居さん……どうしてここへ!?」

「森の樹々が教えてくれたんだ。ここで起こる事件を解決しておかなければ、僕らが住んでいる森にまで危機が迫るって。だから、大急ぎで支度して、やってきたんだよ」


 大急ぎで支度って、あれから3日は経ってるんだけど……。

 まぁ、細かいことは気にするまい。わざわざこうして駆けつけきてくれたのだしね。

 むしろ彼にしてはがんばったほうだとすら言えるだろう。


「それよりも鳴瀬くん。君、もしかして大怪我してない?」

「ええ……。もしかしてじゃなくて、大怪我してます。敵の罠に嵌まってしまいまして……」

「そっかぁ。じゃ、応急処置をしなくちゃねぇ」


 椋居さんときたら、まったく危機感を感じさせない話しぶり。

 こっちは生きるか死ぬかの瀬戸際で、一刻の猶予も許さぬ状況なのだが……。


 だが、彼が手のひらをかざすと、手のひらに緑色の光が集まってきた。まぶしく、生命力にあふれた光。

 光はやがて収まり、アーモンドほどの大きさの種子となった。


 木霊(もくりょう)忍術、『ヤドリギの種』!


 彼は種を俺の傷に埋めこむと、種はまたたく間に芽吹き、植木となって傷を塞いでくれた。

 傷が塞がるとともに、痛みも収まり、体を動かせるようになった!


「その子は君の欠損した体の一部となって働いてくれるよ。これで元のとおり動けるはずだ」

「おお!!」

「ただし、戦いが終わったらちゃんと治療を受けてその子をはずすこと。じゃないと、永遠に君から養分を吸いとりつづけるからね」

「ええ!?」


 一時的な処置ではあるが、俺の傷は回復し、動けるようになった!

 だが、新手の出現に対し、さらに大量の『苛戯裏』が押し寄せてきていた。


「さぁ、僕も戦うよ鳴瀬くん。じゃないと、僕が住んでる森の樹々にまで危機が及ぶからね……」


 木霊忍術『祓いの巻き根』!!


 椋居さんが印を組むと、地面から淡い光を帯びた樹の根が突きだし、渦状に展開して『苛戯裏』たちを一網打尽にした!

 しかもこれは、邪を祓うちからを秘めた神木の樹の根。攻撃範囲も広く、かなりの威力だ。

 この人、めちゃくちゃ強ぇ……!



 ーー樹木と交信する能力を持つ、『木霊(こだま)』の一族。

 何千年と生きる樹木たちから知恵を授かり、その知識は深い。


『木霊』の一族の族長である椋居大樹の実力は高い。

 彼もまた国際危険度標準化比較(ISRR)において、Bランク上位の実力者なのであった!



 よし! 俺も(一次的な処置ではあるが)傷がよくなって動けるようになったし、頼もしい仲間も駆けつけて来てくれた! これでイケるぜ!!

 俺は再び意気揚々と戦いに参戦しに行ったのだが……。

 敵の内部でもまた、新たな変化が起ころうとしていたことに、俺はまだ気がついていなかったのであったーー




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