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エンシャント・クルーレ① ー『鳥』の章。異世界上司は美くびれ・美乳・美尻の最強くのいち!? 超絶忍術チートバトル!!ー  作者: 藤村 樹
色綿の怪

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秘めごとの夜

 2日目の夜。


 日中には村の周囲にまで足を伸ばして見回りしてみたが、やはり魔物の気配は見られなかった。

 むしろ、普通の魔物の気配まで感じられなかったのが、やや気がかりな点ではあったが。


 夕食の場で考えこみながら食事を摂っていたら、再びまひわさんに話しかけられた。


「本日もお務めご苦労さまでした、鳴瀬さま。何か異常はございましたでしょうか?」

「あっ、いえ、何も起こりませんでした。今日は村の外まで足を運んだんですが……」


 なんとなく、飛蜂さんから聞いた話に関しては伏せておいた。

 しかし、まひわさんは特に勘繰ることなく、俺の話にうなずいてくれる。


「そうでしょう、この村は平和ですから。……鳴瀬さまは、明日も滞在したら帰られてしまうのですか?」

「そうですね……。何事も起こらないことを確認して、明後日の朝に帰る感じになりますかね。幕府が編成した調査部隊も到着するころでしょうし、何日もまひわさんのお屋敷に泊まらせていただくのも申し訳ないですし……」

「…………」

「まひわさん?」

「いえ、なんでもございません。私のことはどうぞ気になさらず……」


 ……なんだろう?

 まひわさんは何か言いたげな……とても寂しげな顔をしているように見えた。

 だが、彼女はすぐに普段の様子に戻り、美鈴に話を振った。


「そうですわ、吉備川さま。温泉はお好きですか?」

「んんん、温泉? もっちろん! 好きですよー、まひわさん♪」

「この村にも温泉宿がございます。小さな温泉ですが、なかなかに評判はよいようです。よろしければ、ご入浴してくるのはいかがですか?」

「え~、いいんですか!?」 

「ええ、もちろん(ニッコリ)」

「わーい! 行く行く! 行っきまーす♪」


 はしゃぐ美鈴に対して、渋い顔をしてみせるセンパイ。


「オイオイ、観光じゃないって何度も言ってるだろ? ……まったく、仕方ないな。見張りとして、この俺が付いていってやるよ!」

「えぇ~? とか言ってセンパイ、覗きが目的なんじゃないの?」

「バッ……バカタレ! 誰が後輩の覗きなんかするものか!!」

「ホントかよ! センパイだけだと頼りないし、信用ならないわね……。ねぇねぇ、夜鷹くんも行こうよ!!」

「美鈴、キッサマー!」

「あ、ああ。それじゃあ俺も行こうかな……」


 そう言って、俺が立ちあがろうとしたとき。

 いつの間にか俺の後ろにまわりこんでいたまひわさんが、ポン、と優しく俺の両肩に手を置いた。


「鳴瀬さまは、なんだかお疲れに見えますわ。明日も任務があることですし、今晩は早く休まれてはいかがでしょう」

「え!? そ、そうっすか?」

「たしかに、コイツはこの村に向かうとき、やたら張りきってましたからね! そのときの疲れが抜けてないのかもしれません」

「夜鷹くん、めっちゃがんばってたもんね~! まひわさんの言うとおり、ゆっくり休んだほうがいいかも!」


 う~ん、そうだったかな? なんならセンパイと美鈴のほうがバテてたような……。

 ま、いっか。別に意地を張る理由もないし、言われたとおり、お屋敷でゆっくりすることとした。



 ササッとお風呂に入り、ひとり布団に入ることとした。

 灯りの火を消すと、障子を透かして月の青い光が部屋をうっすら照らしている。外から聞こえるのは鈴虫たちの鳴き声。


 ああ、純和室っていいな。異世界に来てからでもやっぱりいいな。センパイもいないから静かで広いや……。

 俺は心地よい眠りに誘われ、すぐに目を閉じた。


 目を閉じて、いかほどに時間が経ったころだろうか。俺は耳元にささやきかける声で、目を覚ました。


「もし。もし、鳴瀬さま」

「ん……?」


 俺がうっすらと目をあけると、すぐ目の前にまひわさんの顔があった。どうやら枕元に猫のように這い寄って、俺の顔を覗きこんでいたようだ。

 彼女もお風呂あがりらしく、頬はしっとりと上気し、薬湯の香りが俺の鼻をくすぐる。

 彼女は甘えるような、ねだるような声で俺へとささやきかけた。


「鳴瀬さま。今宵私を、抱いてくださいまし」

「え? 抱く??」


 だく、ダく、抱く……。

 え? 抱いてって、そーゆーこと!!?


 眠ってた頭は一気に冴えわたり、てっぺんまで湧きあがってしまった! 静かな眠りから、一気に全開フルスロットル!!

 頭が混乱して、沸騰して、何も考えられなくなってしまった!!


「ささ、連れの二方がお戻りになる前に、早く始めましょ♥️♥️」


 そう言って、まひわさんは無造作に俺の布団を剥がして、脇へとよけていく。

 あまり無造作に作業をするもんだから、彼女の浴衣の胸元や腿のあたりがどんどんはだけていく。

 崩れた胸元から、華奢なのに豊かな彼女の胸の谷間が覗いていて……。


 ヤバイ……。

 ヤバイヤバイヤバイ、ヤバイ!!!

 美人、浴衣、湯あがり、チラリズム。

 この組み合わせは、壮絶にヤバイッ!

 しかも彼女は、下着を付けてNEEEEEEEEEE!!!!!


「こんなに身を強張らせて……。今、ほぐしてさしあげますわね」


 彼女は布団を全てよけると、俺の浴衣を脱がし……俺の体を口でくわえようとしていた。

 ああ、女の人にこんなことしてもらうのなんて初めてだな。すごいな……。


 ちょちょちょちょ!

 待て待て待て待て!!


 いいのか? 俺の初めてがこんなでいいのか? いやもちろん嫌なわけじゃないんだけど、相手は出会ってから2日経つか経たないかの人だぞ。初体験の相手として、どうなんだそれは。


 俺の股間に顔を埋めようとしていたまひわさんを、必死に押しとどめた。

 俺は鉄の自制心でもってして、己の欲望に打ち勝ったのだ!!


 俺に押しとどめられたまひわさんは、じつに悲しそうにつぶやいた。


「鳴瀬さま、私ではダメでございますの?」

「いや、ダメとかじゃなくって……。だって、おかしいじゃないですか! どこの誰とも分からない俺と、急にそんな……。もっと、自分のことを大事にしてください!」

「自分のことは大事にしていますわ。初めて会ったとき、あの嘴黒さまという方に胸ぐらを掴まれて、本当に怖かったの。でもあなたに助けてもらって、あなたのお顔を目にした瞬間から……胸のうずきが止まりませんの」


 まひわさんは立ちあがった。

 そして……あろうことか、彼女は俺の目の前ではらはらと着ていた物を脱ぎはじめ、一糸まとわぬ姿となってしまった。

 部屋が暗くて細部までは見えないが、月の青い光が、彼女の血管まで透けて見えるほど白い肌を照らしだしている。

 そして月の光は、彼女のうるんだ瞳をも照らしだした。


「あたしのうずきを、止めて」


 ーーああ、もう無理だ。俺をかすかに繋ぎとめていた理性の欠片まで跡形もなく吹きとばされてしまった。

 こんな女性に迫られて、耐えられる男などいないだろう。俺は少しも悪くない。

 初体験がどんなだとか、そんなのはもうどうでもいいや。据え膳食わぬは男の恥。本能に身を任せてしまえーー


 俺もまた、まひわさんを抱こうと立ち上がった。俺が本能のおもむくまま、野獣と化そうとしていた、そのとき。

 常に腕に着けていた『魂珀の腕輪』から声がした。俺にだけ聞こえる、女性の声。


『目を覚ませ、バカ』


 背筋が凍りつくような冷たさ。まさしく氷、顔に氷水をぶっかけられたかのようなインパクトだ。

 だが、おかげでようやく冷静になれた。ひづきの声が、俺をバーサク状態から引き戻してくれたのだ。


 俺は彼女を抱き寄せようとつかんでいた彼女の肩を、ぐっと押し戻した。大丈夫、俺の心はもう揺るがない。


「まひわさん。あなたはとても魅力的な人です。でも、俺はあなたのことをまだ全然知らないし、あなたも俺のことを知らないと思います。もし深い仲になるとしたら、お互いのことをちゃんと知り合ってからにしたいんです」

「鳴瀬さま……」


 ちょっと視線を下にずらせば俺の体は素直にギンギン全力戦闘体勢で、まったく説得力はなかったと思うが、まひわさんはなんとか納得してくれたようだった。


 彼女は俺に背を向け、その場にペタリと座りこんだ。

 女の子座りをしながら、自分が脱いだ浴衣を着始める。その背中は、なんだかとても悲しげに見えた。


 彼女は浴衣の袖に腕を通しながら、自分の身の上を語りはじめた。


「私にも、かつては将来を約束した人がいました。病で、早くに亡くしてしまいましたけれどーー」



 まひわさんには、将来を約束した恋人がいた。仲のよいご両親もいたし、頼れる兄もいた。

 だが、いずれの人も病にかかったり、魔物に襲われたりして亡くなってしまったのだそうだ。


 彼女は代々、村長を務める家の生まれらしい。

 村長を継ぐはずの両親や兄は早逝してしまったが、村のしきたりは非常に厳しく、彼女は幼くして村長を継がなければならなかったのだ。


 立場上、村の誰かを頼るわけにもいかず、外部の人との交流も少ない。

 そんな心細い環境で生きていくなか、見ず知らずの存在である俺に初対面で庇ってもらったのが、とても印象的であったらしい。

 魅力増し増し、さすがのまひわさんもときめき、図らずも彼女のハートを射止めてしまっていた、というわけである。


 なるほどそういうことか、とも思いつつ、ホントにそれだけかな? とも思いつつ……。

 とにかく、彼女の思いの丈を垣間見れたような気がしたのであった。



 まひわさんはそっと障子を開け、立ち去り際につぶやいた。

 彼女の背後、障子の隙間からは、高く昇ったまん丸な月が顔を覗かせていた。


「明日が『幡綿祭り』の大トリにございます。もしもう1日いて、この村に留まっていただく気が起きたら……。もう1度、考え直してくださいまし」


 そう言い残し、彼女は障子を閉めた。

 俺はひとり部屋に取り残され、閉まった障子をいつまでも見つめていた。



 カッ……ポォーン……。


 岩場につくられた、露天風呂。湯煙のなか、くつろいでいたのは吉備川美鈴だった。

 大きな浴場ではないが、灯籠に灯された火の光が周囲の木々を照らしだし、なんとも言えぬ風情を醸しだしていた。


「はぁ~あ、極楽極楽♪ こんな良い温泉があるの知ってたら、昨日も来ればよかったな~♪」


 桜色の、とろりとした感触の温泉。湯量は多くないが、この村の泉質は非常によいことがひそかに知られている。

 白くすべやかな美鈴の肌は、ますます張りが増し、艶やかになっている。


 遅めの時間帯に訪れたので、客が美鈴しかおらず、貸し切り状態になっているのも、幸運であった。

 得も言われぬ幸福体験を、彼女は満喫していた。ただし、ひとつだけ懸念なのは……。


「センパ~イ! 見張りしないで、覗いてんじゃないでしょうねぇ!? ちゃんと見張りしててくださいよ~!!」

「んんっ!? ももも、モチロン! 誰が後輩の裸など覗くものか!! 左方、ヨーシッ!!」

「そいじゃあ、なんでお前が垣根の内側にいるんじゃ~!!!!」

「ウゴッパッ!!」


 美鈴が桶で源泉の熱湯をかけると、茂みのなかから悲鳴があがった。


 一応任務中ではあったため、鶉橋センパイは風呂には入らず、美鈴が入浴中の見張りを買って出ていた。だがそれは、覗きをするため。

 忍にとって、隠密での偵察行為は得意中の得意。覗きをしないという手はないのである。

 しかし悲しいかな、万年Eランクだった鶉橋センパイの隠密レベルはたかが知れており、同じ忍である美鈴からはバレバレなのであった。


「スミマセン、ちゃんと見張りしますぅ」


 鶉橋センパイは観念し、茂みのなかから這い出て、垣根の外へと飛びだしていった。

 美鈴は桶を脇に置くと、大きくため息をついた。


「はぁ~あ、まったくあのアホセンパイは。こんなだから、夜鷹くんにも付いてきてもらいたかったのよ!」


 ゴポ、ゴポポ……。


「センパイはアホでヘタレじゃなければ、イイトコもあるんだけどねぇ。……ん?」


 ゴポ、ゴポポ……。


 美鈴は、かすかな気配の変化に気がつく。

 桜色の湯の赤みが、わずかに濃くなったような。それはまるで、そう。湯にうっすらと鮮血が混じったかのような赤み。


 そして、彼女は目の当たりにした。自分が浸かっているお湯の底から、赤黒い血の塊が蛇のように鎌首をもたげているのを。


 彼女は逃げることができない。すでに血の混じった湯に、身を縛られているのだから。熱く火照っていた体が、芯から凍りついていくのを感じる。

 そして、血の塊は音もなく湯の外に顔を出すと……。口から彼女の体内へと潜りこんでいった!!!


「うわっ……あぁっ……! ゴボボボ……!!」


 美鈴はお湯のなかへと沈みこんでいってしまった!

 

「!? 美鈴、どうしたんだー!!」


 湯の跳ねる音に、美鈴の喘ぐ声。鶉橋センパイは異変に気づき、再び垣根を超えて美鈴のもとへと戻っていく。


 急げ、急げ……。美鈴を守るために自分は来ていたのだ。ここで役目を果たさなければ、自分はいったい何をしにきたというのか。ただ覗きをしにきたわけではない!!


 木々の枝をくぐり、茂みを抜け、湯煙の向こう側に……美鈴はいた!


「あれぇ? センパイ、なに戻ってきてんの」

「美鈴ー! って、え? え? あれ??」


 そこには普段と変わらぬ様子で湯に浸かっている美鈴がいた。ただし、今はお湯で火照って頬が上気し、しっとりと艶めいている。


「今度は心配して駆けつけたフリして、堂々と覗き……?」

「あれー、オカシイナー。キケンな気配がした気がしたんだケドナー」

「キケンな気配がどこに行ったかって? それはお前じゃこの覗き魔め、どの口が言うかー!!!」

「ギャピー!!!」


 とぼける鶉橋センパイに対して、容赦なく熱湯をかける美鈴。

 センパイは「アチ、アチ」と言いながら再び茂みのなかへと潜りこんでいく。


「まぁ~ったく、信じらんない。もっとマトモな言い訳思いつかないのかしら? センパイってホント……」


 鶉橋は気づかない。

 濃い湯煙に隠されて、美鈴が妖しい笑みを浮かべていたことに。


「仕様の無い人ね」




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