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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

人喰い一族

作者: TmiiiZ

この世界には人を主食として食べる一族がいる。一見物騒にも思うが、そんなことはない。何百年か前に俺たち人間側と人喰い一族が協定のようなものを結んだらしく、今は高さ10mもあろう塀の中で暮らしているそうだ。俺の住む水入町の中にも人喰い一族の集落がある。こう言った集落は全国に何ヶ所かあるらしいが、俺はこの街を出たことがないため、この集落以外見たことがない。


俺たちはあの塀の中に入っては行けないし、中を見ようとしてはいけないと言われている。

俺の友達が言うにはあの集落の中に100人ほど人がいるらしく、縦横約200mほどしかない場所にそんなに人が住んでいるんだなと思った。


ご飯はどうやって食べているんだろうか。どうやって生きているんだろうか、そもそもどんな姿をしているんだろうか。そう、俺たちは人喰い一族の姿をみたことがない。寧ろそういった人喰い一族の集落の近くに住む人以外はそういった一族がいること自体知らないらしい。「何かおかしくないか?」高校生になったばかりの俺は、そういった世界の秘密ってやつに興味が出てしまった。もしかしたらあの塀の中には大富豪のお宝や大企業の秘密実験施設みたいなのがあるのかもしれない。

俺はその友達を連れ2人でその塀の中をなんとか覗いてみようと考えた。


作戦はこうだ。まず、友達が大きな門の前で警備員に話しかける。もちろん人喰い一族がいると言われている場所なので、大きな門の前に警備員が2人いる。警備室の中には、その門を出入りできる鍵があるため、警備室に俺が侵入し、鍵を持参した粘土に貼り付け、鍵の形をコピーする。そこに後日、金属を流しこみ形を作ることで鍵を復元させるって方法だ。

ここは田舎だからなのか警備員もお爺ちゃんだ。仮に怒られたとしても俺たちは高校生なんだから注意で終わるに違いない。そう思い作戦決行日になった。


打ち合わせの通り、友達が2人の警備員の注意を引く。その隙に警備室に侵入して鍵をコピーする。作戦は成功した。というより成功させてくれたといった言い方の方が近いかも。この警備員達は警戒という言葉を知らないのだろうか。まあそんなことは置いておいて俺たちの初めての冒険は幕を開けた。

人が寝静まった夜中、警備員からの見えない裏口の鍵を差し込んだ。そして俺たちは心躍らせて扉を開けた。しかし、そこはなんの変哲のない普通の家が広がっているだけであった。人の姿も見えない。まあそれはそうか。こんな夜中から人がいないのも当たり前で、そもそもそんな漫画みたい展開を期待するのもどうかと思った。俺たちは扉の周辺の家を散策した。一応、俺たちは扉から離れてすぎてしまうと、人喰い一族に俺たちは食われてしまうかもしれないと思い、扉周辺の家を散策した。


一つの小さな小屋を見つけた。その小屋の窓から中を除くと薄明かりの中、何か書物をしている女を見つけた。その瞬間何かに異変に気付いたのかその女は窓の方を観て「なにっ、誰なの」と大きな声をあげた。その瞬間まずいと思った俺たちは、急いで扉のあった方へ逃げた。誰にも見つかることのなく逃げることのできた。「危なかった。あそこで騒ぎになっていたらどうなっていたことやら」と思い家に帰った。しかし冷静になった時にふと思った。なんの変哲のない普通の家、普通の人がいるだけじゃんと。なんでここはこうやって区切られているのだろうか。なおさら不思議で堪らなかった。しかし、そうはいっても初めての冒険で、入ってはいけないと言われている塀の中に入り、実際に住んでいる人を見ることができたので俺としては満足だったのだ。そこで俺の興味は尽きていたのだが、友達がもう一回中に入ってみたい。そして今度はあの女と話をしてみたい。そう言い出したのだ。「え、なんでだよ。話をしている間に食べられてしまうかもしれないぞ。そうじゃなくても他のやつに見つかったらそれも食べられて終わりだぞ。」


いやそれでも行きたいんだ。そう言った友達の目が少し血走っているように見えた。これまでみたことのないような顔をしており、尋常じゃない執念のようなものを感じた。その圧に負けてしまった俺は友達と次の夜もう一回忍び込むことにした。

次の夜、粘土でコピーした鍵を使い、塀に中に侵入した。侵入は簡単だった。そしてあの小屋の前に行った。窓を覗き込もうとした瞬間扉が開いた。「あなたたち、昨日の」女が大きな声で今にも叫び出しそうな瞬間だった。友達が「ちょ、ちょっと待って下さい!僕たちはあなたに用があって来たんです。あなたと友達になりたいんです」

女はかなり怯えながらも「そうなんですか、こんな夜遅くに来るから誰なのかと思いました。みたことのない人だったので。外の人かと思ったけど、逆の村の方なのかしら」

「そ、そうなんです。逆の町からの2人で散歩をしてたら明かりがついてる小屋を見つけたもので」

そう言って女はなんとか信用してくれたのか、小屋の中に入れてくれた。小屋は6畳ほどの大きさの中に机と椅子と少しの本が置いてあるだけだった。女は恐らくだが俺たちの5、6才ほど年上で、端正な顔立ちをしていた。「それで、こんなとこに何しにきたの?」と問い詰められる。友達はなんか色々言っていたが支離滅裂なことを言っていたように違いない。そりゃそうだ。高校生の男達が外の世界からやって来て女に会いに来たなんて言えない。しかもちょっと可愛いと人だったからこそ、俺たちは辿々しい感じも出ていたことだろう。ただ必死に様々な弁解をしていたように思う。

そしたらその女が「あなた達必死ね。でもわかったは私に会いに来てくれたんでしょう。ちょっと待ってね」とお茶とお菓子まで出してくれた。


初めて女の人に家に行き、お茶まで出してもらった俺たちはまるで初ナンパで大成功したかのようにアドレナリンが出ていた。そのまま様々な話をした。1時間くらいだろうか。その頃には俺たちはかなち距離が縮まっていたように思う。どちらかというと近すぎたのかもしれない。友達が女の隣に座って話し、手まで繋ぎ始めたのだ。いやいや俺の前でそんなことはやめてくれよ。そう思った。友達はその手が止まらない、足の辺りから上へ手が伸びていき、胸のあたりまで手が伸びていく。女も案外満更でもない様子だ。そのまま友達がキスをし始めた。そして耳に顔を向けた瞬間、


「痛いっ」


女がそう叫んだ。女の耳から血が出ている。その時の女の顔は悲痛に歪み、瞳孔が開き切った怯えた顔をしていた。「大丈夫ですか」俺が言った頃には友達はもう止まらなくなっていた。耳だけでなく、鼻、髪、手指や足まで色々なところに噛みつき始めたのだ。

俺はその姿を恐怖で震えながらみていた。ただ嫌でもなかった。ただこの状況はやばい、誰か呼ばないとと思い、俺は慌てて外の世界へ戻った。裏口の扉を開けた瞬間あの警備員がいた。「どうしたんだこんな時間に、しかも中から出て来て」俺は経緯を事細かに話した。そうすると警備員は「そうかあいつも覚醒してしまったのか」と。

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