望外の喜び
血が噴き出している。
訓練で培われた反射体勢へと直ぐさま移行するが間に合わない
槍が首へと到達する
カンタが飛び込んできた。
軌道をずらした槍がカンタへと差し迫り、肉を抉った。
その瞬間、カンタは途轍もなく驚いたようだった。
そして、満面の笑みを見せた。
魔族の女は場違いな笑みに目を瞑る
カンタと魔族、両者ともに距離をとった。
既にカンタの目には魔族のみが、魔族の女の目にもカンタのみしか写っていないだろう…
俺はその隙に、傷口の応急処理として白魔法で表面上の傷口を塞ぎ、部隊へと連絡を行った。
アレク隊長ならば、直ぐさま飛んでこられるはずたが、果たして間に合うのか…?
俺は、いつでも援護が出来るように、物陰に隠れ、気配を消した。
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胸の高鳴りが抑えられない。
俺は、狂喜乱舞していた。
「欠陥」だ。やっと見つけた。
オートスキルの不発動条件が何なのか、全く分からないが、
今!この時!
俺の体の主導権は俺にあるッ!!
足を踏み出す。
靴にかけられた黒魔法が起動し、敵との距離をすぐさま縮める。
魔族の女は、槍を突きだす。
バフはかけていないだろう、純然の力量のみの突き。
だが、人を逸した身体能力から繰り出される技は、
容易く人を殺せるものだ。
一体どれ程の人間を死へと導いたのか。
…関係ないが。
今更、怖じけることもなく、今更、避けるためにスピードを緩めることもなく、
槍に合わせて刀を振るった。
金属が衝突し、火花が激しく散った。
受け流せなかった。
刃は、圧倒的なまでの怪力によって圧し負けた。
体ごと後方へと弾き飛ばされた。
「この突きで殺せないなんて…
お前、少しは骨があるようね」
「…ああ」
「殺しあいましょう…?」「殺し合おう」
まだ、この狂宴は始まったばかりだ