討伐部隊下っ端の視点
とある討伐部隊下っ端の視点
討伐途中の魔獣が、
魔獣が城壁を破ったとき、息か止まった。
あの中には、俺の妹が暮らし…て…
「っ足を止めるな! 私の後に続けぇぇっ!」
部隊長の叫び声に気を取り戻す。
直ぐに、魔獣のあとを追った。
そして、目にした城下町は信じられない有り様だった。
隊長の指示で全員ですぐさま後ろ脚を切り落としにかかる。
だがあまりに、速い動きだしに、追い付けない。
遠目で、魔獣の進路に人が立っていることに気づいた。
っ逃げろ!!!
叫ぶ声すら間に合わない。
突然、暴風が体を通り抜ける。
…男が刀を抜いたと思ったら、魔獣が後方へと吹き飛んでいた。
…?
吹き飛んだ?
後ろを見る。
魔獣が踏み鳴らし、更地となった道の先、
城壁外へと吹き飛んだ魔獣は、仰向けになって脚を空へとバタつかせていた。
追って、隊長を含めた数名が信じられないような速さで駆けていった。
数秒後、魔獣の断末魔が聞こえた後、歓声が地を揺らした。
俺は、信じられない気持ちで先ほどの男を探す。
―果たして、その男は、そこに立っていた。
顔は見えない。
「…あ、あいつ、魔獣の攻撃を正面から、う、受けたのか?」
声が知らず知らず震えていた。
それは、男の持つ力を恐れてか、この世界を打開するきっかけになりうる喜びなのか。
確かなことは、英雄がそこにいたということだけだ。
息を吐く。
自分を落ち着かせる。
今自分がやるべきことは、確かだ。
討伐隊へと勧誘するためにあの男を留めさせなければならない。
そして、自分は走り出した。