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パリィって楽しい!

パリィとは、かわす、受け流すという意味の英語parryが由来と考えられている。


パリィを生き甲斐にしている男が、オートパリィを与えられるとどうなるのだろうか?





パリィって楽しい!

楽しくない?

パリィィィィイィンッ(⚠️イメージ音です)

敵の攻撃を弾く音。

一番テンションが上がる音といって過言ではないだろう。

俺こと、大戸寛太も、何も最初から、パリィ狂いだったわけではない。

なんならパリィって…何?って思ってたくらいだ。

パリィ好きになったきっかけは、とあるアクションゲームをプレイしていた時のこと。

敵のモーションに翻弄されたことがきっかけだった。

「この敵のモーション糞じゃねぇか!?動きがわけわかんねぇ!」

その敵はぐるぐる回ったり、縦横無尽に爆走したり、こちらの予想外の動きをした後、爪で攻撃を繰り返した。

自分の使用キャラクターは、なす術もなく死んだ。

あまりのわからん殺しに、ネットで調べたところ、爪が光った後、攻撃を繰り出すとパリィ成功となり、ノックバックするという情報を知った。

何十回かの戦闘の後の俺は、

「パリィって楽しい!楽しい!」

とアクションゲームの楽しさを味わっていた。

そして、何百回かの戦闘をした後の俺は、

「パリィの敵さん、やっと会えたね…」

と呟きながら、今日も仕事終わりのアドレナリンを求めて戦闘を始めた。

以上が死ぬ前の俺の日常での唯一の楽しみだった。

死因?そんなものよくあるものだよ。気にしないでくれ。




~~~~~~~~~~~~~

真っ白な空間に立っていた。

真っ白すぎて目がチカチカする。

目を瞬きすると、目の前におじさんがいつの間にか立っていた。

おじさんが語りだした。

「何が欲しい?」

「まずあなたは誰ですか?」

説明を求めた。

おじさんが言うには、自分は神様のようなもので、

自分の見守っている世界に俺が必要な人材だと神託が降りたらしい。

それで、何か欲しいものがあるなら便宜を図ってやるという意味で聞いたそうだ。

この神様は、わりかしコミュニケーションが苦手なんだろうな…と失礼ながら思ってしまった。

「それで、何が欲しいのだ?」

「欲しいというより、パリィできる世界で生きたいです。」

反射で答えてしまった。もう少し何か考えたほうがよかったかな…。

「ぱりぃ?とは何だ…?

 …いや、理解した。なるほど。お前の世界にはそういう文化が根付いていたのだな。

 よかろう。お前にオートパリィをやろう…」

「???」

何か違和感を感じた。

いや、待て。オートって何だ?

誤解!神様、誤解してる!!!!

俺の欲してたパリィ人生にオートは不要なんだが!?

「ちょ、待っ」

視界が暗転した。



神にパリィという文化なんてなかった弊害である。

神は善意で、オートを付け足しただけだった…





~~~~~~~~~~~~~

この世界ガランテルで、とある男が死んだ目をして町を歩いていた。

「オートパリィ、くっそおもんな。モチベ下がるわ~

あぁぁあぁぁぁあぁ…」


そう、俺だ。

神から、オートパリィを貰ってしまって、この世に生をうけた。

カンタと前世のまんまの名前で名付けられ、幸運にもすくすく育った男だ。

幼少の頃は、チートを貰ってしまったことを信じきれず、がむしゃらに肉体改造に励んでいた。

幸か不幸か、パリィを試す戦闘の機会も、子供だからと周囲に言われて得られなかったので、ただ己の自己鍛練のみに集中できたのだ。

そして、成人としてギルド加入も許され、今日行った予想外の戦闘を振り返った。



それは全ての人類にとって予想外の事だった。

一瞬。

爆音が聞こえた。

壁の瓦礫が弾け飛び、家々を押し潰していく。

天へと続く防壁を容易く壊し、魔獣が城下町へと侵入したのだ。

魔獣を追って討伐隊がこちらへとなだれ込んでくる。

背丈など測ろうと思うのが馬鹿馬鹿しく思えるほどの巨体、四つ足、一角獣のようなそれは、たまたまギルドの薬草回収報告をしに行くつもりの俺がいる通りを進行路に選んだのだろう。

俺を踏み潰そうとした。

魔獣の前肢が信じられないほどの早さで持ち上がった。

魔獣の脚の影が俺へと伸び、陽光が見えない。

左手の薬草を詰めた袋を捨てる。

脚は既に俺の顔へと迫っていた。

鼻先三寸

―抜刀。



…ここまでは、俺の体は俺の意思で動いていた。


己の未熟で死ぬことと、神の力で生き延びること、どちらがよいのだろうか?


俺の積み重ねた努力は、容易く神のオートパリィスキルによってねじ曲げられた。

魔獣が壁外へと吹き飛んだ。

魔獣の前肢を、俺の刀身が受け流した結果だ。

…いや、俺のオートパリィによって得られた結果だ。

辺りの喧騒が一瞬止まる。

討伐隊の隊服を着た人達が、隙を見たとばかりに、仰向けに倒れた魔獣へと突撃していった。

そして、数秒後、こちらへと聞こえんばかりの物凄い歓声により、危機が去ったことを人類は知ったのだ。

そんな中、俺は俺の持つオートパリィのやりきれなさに1人うつむいていた…









 この世界、ガランテルは、魔法も科学も奇跡もある世界だ。

いや、正確にはあった世界だった。

人類が魔王に史上最大の敗北を喫した後、魔法は人のものではなくなった。

結果、魔法は魔王のものとなった。

そして、ここから人類は苦戦を強いられることとなる。

幸にも、女神が神力全てを人間に分け与えることで、回復などの白魔法は人類の元へと戻ってきた。

だが、依然として、バフや攻撃を主とする黒魔法は人が使うには副作用が残ったままだ。


この時代を振り返るとき、歴史書では、剣豪跋扈の時代と称される。

魔法使いではない、数々の物理攻撃に優れた英雄たちがこの時代に産まれ、そして、その多くが死んでいった。

この魔法世界の歴史の中でも、異質な時代であった。




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