6.仲直りと結末と
「やだ随分派手に粉々にしたわねぇ。ルディが起きて知ったら確実に拗ねるわね、これは」
少し体力が戻って来た頃にそう言ってのんびり登場したのはカマ野郎だ。その腕には気を失ったままのアホ王子ことルディが目を回したまま抱えられている。
「あんたもこの子が女の子だって分かってるんだったら、もう少し手加減してちょうだい。まぁ......傷一つでもつけてたらぶっ殺したけど」
「だったら野放しにしてないで首輪でもつけて大人しくさせろ」
「馬鹿ねぇそんな事したら可愛らしさが半減するじゃない。好きな事してる姿が最高に魅力的だから自由にさせてるのよ。あんたもそうでしょう?」
勝手に同意を求められても迷惑だ。
そしてお前が普段からアホ王子をどう思っているのか垣間見えてるぞ。そこは普通、自分の主に首輪なんて付けられるわけがないと言うんじゃないのか?手綱から手を離し走り回り暴れる犬を微笑ましく眺めるような、そんな無責任な発言はやめろ。
「それに同年代の中で生活するなんて、むこうじゃ絶対に味わえない経験だもの。本人だって名目はこの学園での調査とは言え、我がままな王子に扮して行動すると私に言った顔は好奇心に染まって輝いてたのよ?祖国にいたままならきっと一生見られなかった表情だったわ。だからこの国の国境を越えた時私は約束したのよ、護衛騎士の自分はメルティナ姫の邪魔はしない、と。その代わり護衛兼侍女として傍にいさせてもらうって。何もかもちぐはぐであり得ない状況と分かっていながら、心から楽しんでるこの子を止めるなんて私には出来ないわよ。まあ流石にあんたの獣化と彼女との仲違いにキレた様子から、これ以上は限界だとさっさと引き上げる方向に独断で舵を切ったのも私なんだけど」
「......俺にはお前の方が楽しんでるように見えたが?」
うふふっと艶やかに笑い誤魔化すカマ野郎をジト目で眺めていると、俺にしがみついたまま腕の中にいたエマが、会話の中からある可能性を導き出し戸惑いながらもようやく言葉を発した。
「えっま、ま、待って下さい、ちぐはぐって、王子じゃなく姫って、じゃあこのお色気の塊みたいなこの人男なんですか!?サイレスはっ?知ってたんですか!?」
「? 当然。男くさい匂いまで誤魔化せないだろ」
「もぅ馬鹿ね、そんなの普通の人間には無理よ。......でも黙っていた事は謝るわ。私の本名はユーリではなくユリシード。本国ではこの子の、メルティナ第二王女専属護衛騎士なの。ごめんなさいね、やきもち焼かせて」
「や、やき......ッ!!」
「んふっ、全然気が付いてないから途中から楽しくなっちゃった。この姿に自信が付いたところで、そろそろお暇するわね~」
目の前でメイド服を着た男が何か言い続けているが、まったくもってどうでもいい。
それより、腕の中で顔を俯かせ黙りこんだコイツが、嫉妬していた?女だと誤解してた?
理解すると同時に口から小さく吐き出されたため息。......なんだそれ、そんな事考えているなんて思いもしなかった。そうだ、こいつは人間で、俺たちが重視する嗅覚よりも視覚や聴覚からの情報収集が多いんだ。ちらりと向けた視線の先には、見た目だけなら確かに女にも見える長身の肉付きのいい侍女が立ち去る姿。あの胸の位置にある詰め物はただの重ねた胸当てだというのに、あれにまさか、やきもち。
再度ため息が出る。しかも特大のやつだ。
ああ、本当にこいつは......
「あ、の......呆れました、か。......女の人と二人で毎日のように会って、稽古してる姿も傍目に楽しそうで距離も近くて、わたしが横にいるより断然お似合い、なんて考える自分がいて。それで一人で......う、裏切られたような気持でいたから、素直に相談するのも癪で。勝手に距離を置いたりしてた、なんて。呆れるどころか嫌な気持ちになりますよね。考えれば分かるのに、本当に私は自分の事ばかり......ごめんなさい」
俺のため息の理由を自分なりに解釈し、聞いてもいないのに言い訳する姿をただ何も言わずに上から眺める。
そりゃ呆れるに決まってる。あんだけ腹を立てていたはずだってのに、自分から腕の中に来ただけじゃなく嫉妬から素直になれなかったとか拗ねてたんだと分かって、簡単に喜んでしまう単純な自分に。
「......俺も、素直に心配だと言わなかった。毎日もっと話がしたいと、傍にいたいとも思っていたのに。俺こそ、言葉にしなくて悪かった」
それを聞いて慌てて首を振り、見上げてくる顔はいつもの力の抜けた表情。
「んへへっ、獣人になったサイレス、本当にカッコよかったです」なんて笑う姿をまた見られた事に、心底ホッとしている自分に。あんなに重苦しい嫌な気分がキレイに消えている事に。
本当にこいつには勝てる気がしない。
結局あの後アホ王子もといメルティナ第二王女は自国に強制送還された......かと思いきや、なぜかアホ王子の魔力暴走として処理されたようだ。問題を起こしたのではなく、滞在中人知れず体調を崩すも持ち前の責任感からか、周囲にそうと分からないように振舞っていたが限界がきて魔力が暴走。療養の為に自国へと戻った。
と、表向き処理されたとローデリックの奴が話していた。その台本を書いたのがお付きの女装騎士ユリシードだとも。
結局眠らされていた学園の誰も見ていないのだから簡単だったろう。王子に見張りを言い渡されていたくせに、命令を無視して裏工作に奔走し、なおかつ探しに来たローデリックと侍従まで裏工作を手伝わされ、完璧に学園から立ち去って見せた手腕をローデリックは笑って絶賛していた。あれはあの女装騎士が何枚も上手だった、と。
魔力暴走の証拠であるドラゴンの残骸もまた、学園に恩恵をもたらした。上質な大量の骨は魔道具や術士にとって貴重な物。剣や盾などの素材としても有用で、騎士科も宝の山を前に男らしい声で悲鳴を上げたのは言うまでもない。さらには額の魔石の大きさは稀にみるサイズだったようで、どう転用するか教師陣が沸き立っていた。
そのドラゴンが学園内で大暴れしておきながら、建物にもどこにも傷一つ付けなかった技術は正式に国からも認められ、あれから呪術返士の地位はさらに向上し最早限界突破もいい所だ。ほんの数カ月前のあいつらとは見違うばかりに自信に溢れ、そんなクラスメイト達を見て自分の事のように喜び、その功績を暇さえあれば周りに話しているらしいエマ。俺の隣で自分の作った弁当を食べながら、今も向かいのベンチでそのおこぼれに預かる変人黒魔術士と従者の二人組にもその話を聞かせている。
わざわざお前の作った弁当を食わす必要あんのか?と聞いた所「必要経費は払った」と言ったこいつらと「私の労力込みで必要経費の三倍請求してきちんと頂いてます」と、したたかに笑う姿にそれ以上言う事は無い。
それについては無いが、席は今すぐ外せと言いたい。ようやく邪魔な奴らが消えたってのに。
ついイライラとして頭を搔けば、目ざとく気が付いた侍従が「邪魔してごめんね?気にせずこの間みたく仲良くしててよ」と声をかけてくる。ケンカ売ってんのか?
「出来れば苦労しねぇんだよ。こいつは求愛行動取っただけで失神するんだぞ」
「......まさかと思うが、以前膝で眠っていたのはそれで、か?」
「ああ」
「獣人なら普通の事だろう、そんなもの。なら給餌し合う位なら」
「無理」
「ええ?じゃあ膝に乗せたりは」
「もっと無理」
質問に間髪入れずかぶせ気味に返答すれば、無言になった二人は揃って視線をエマへと向けている。
ちらりと俺も視線を向ければ案の定、赤面して困った表情でいた。くそ可愛いなおいその顔やめろ。こいつらの前で恥じたりするなってのに。無表情とは対照的に、しっぽだけが不機嫌さを隠さず揺れるに任せていると、ローデリックには心当たりがあるようだった。
「必要以上に照れる原因?......あぁ、それは恐らくアレのせいだろうな」
「......アレ?」
「例の公式戦で本を投げた事があるだろう?私たちが仲良く崩れ落ちた負け試合だ、覚えてないか?」
「公式戦をしたの、何か月前だったかな......? ヒトメボレって呪いの発端になった、ここにいる全員が関わったきっかけだね。思い出深いあの試合だよサイレス」
「ち、ちょっと待って下さいそれ以上はっ」
すぐに試合をした事は思い出した。獣化の祝いとかで俺には本を投げられた記憶はあるが、隣のこいつに本を投げていた記憶までは無い。そう考えている時に横から遮るように慌てて発する声に意識が向いた。何だ?あの試合に何か原因があったか......?
言うなとばかりに必死な様子でエマがブンブンと首を振るが、ローデリックは己に向かって行われるその動作に気が付きもせず、自身の研究結果をどこか誇らしげに混ぜ話し続ける。その言葉の中のある一点で、頭が真っ白になった。
「あの試合中には当時新しく開発したばかりの【強制速読】と名付けた魔術を使用した本を持っていてな。それに触れた相手の反応を見たかったんだ。私の脳が一度に理解できる量の書物で試したんだが、それが全男子生徒必見の新作エロ本でな。彼女は投げられたそれを落とすまいと、確かにその手に取っていたのを今思い出したよ。試合中表情も変わらず何の反応も無かったから、てっきり失敗したと思っていたんだが、」
「......は?」
「ん?聞こえなかったか、つまりは一般的な成人男性向けの書物の事だ。いわゆるエロ本と呼ばれる情報誌で、ああいった書物は内容があまり無く興奮を煽るような類の薄い情報量のもので、一通り知識としてあの時は手元に置いていたんだ。だがわざわざ読むのに時間をかけるのも馬鹿らしくてな。ただどんなにくだらない内容であっても新たな魔術のきっかけなんてものはどこにあるかは分からんだろう?個人の趣味嗜好に合う内容かどうかもあらすじだけでは情報が足りず、中を読んでみん事には分からない。ならばこの新しい魔術で内容を一瞬で流し読みし、少しでも引っ掛かりを覚えたならば熟読すればいいと思い開発したんだが思いのほか利便性があるものでな、情報量に慣れれば報告書も短時間で目が通せると重宝して、」
「ちょ、ちょい待ちサイレス今すぐ静かにさせるから、本当に僕も耳を疑うよ初耳すぎて!信じらんないこの人なに言ってんだろうな?分かるよその気持ち落ち着いてくれ頼むからっ!」
「? どうした、ここからが良いところだと言うの、に」
訝し気に侍従へと向けていた視線を正面に座る俺の方へ向け、ローデリックの饒舌な口がようやく閉じる。
「俺が聞いているのはお前の作った術の話じゃねえ。......なぁ、理解出来ねぇから聞くが、その話だとテメぇは公式戦の中で女子生徒相手に、卑猥な書物の内容を強制的に頭へ流し込んだって話で、合ってんだよな?」
「......うむ、そうだな、確かに言葉にするとなんとも通り名の変人と呼ばれるに等しい行為、と言えなくもない、な」
「へぇ、変人?」
侍従は俺の雰囲気が変わった事にいち早く気が付いたのだろう、顔に『やらかした』と書いた位に分かりやすく青くなりつつも、それ以上口を挟むのを諦めたのか手元は素早く弁当箱を片付けると同時に補助魔法を展開し始めている。
それを横目にローデリックが己の失言にようやく気が付き、一転して口元がやや引きつりながら言葉を探している。
「......変態の間違い、だろ?」
「うん、そうだな、確かにそうとも言う、いや!悪いっ、悪かった、謝ろう!スマンッ!!」
バチバチと白い閃光が光り、直後割れるような音が続く。
力一杯殴りかかったが、侍従が即座に展開した防衛術によって無効化され、それを見越して繰り出した二発目は貴族ならば身に着けて当然の魔道具によって弾かれ、その衝撃で態勢を崩してしまう。
本人にダメージは一切ないが、ローデリックの身に付けていた魔道具は先ほどの閃光と音の原因となりダメになったのだろう、侍従が粉々になったローデリックの腕輪に目をやり「うわっ一撃で!?」と悲鳴を上げ、さらに青ざめている。
一発は防がれるのは予想通りだった為、本当なら二発目でこの変態を沈めるはずが予想以上に侍従が優秀だったな、と無表情で舌打ちする。
次なら邪魔が入らないだろうと三発目へと動くその前に、背後からのため息と呆れを含んだ声に止められた。
「はぁ~、だからそれ以上言わないよう伝えていたのに......。もうお弁当箱はそのままでいいですから、早く逃げないと知りませんよ?」
「っ悪い!!!」
「ほんっとごめんねエマ嬢っ、そのままサイレス抑えといて!お昼ご馳走様ー!!」
そう口にしながらも全力で逃げて行く背中を睨みつける。喉からグルグルと低音が鳴り止まない中、エマはそんな俺の足を魔法陣に縫い付け一歩も動けないよう邪魔をしている。
お前これなんだよ、呪術じゃねえの?なんでお前が俺が知らない呪術を使ってんだよ。
そう視線だけで不機嫌を隠しもせず見下ろせば、ローブの影からのぞく腰のベルトで魔石の一つが紅く輝いていた。
「サイレス落ち着いて下さい。この術は留学生の置き土産です。解析しながら魔石に記憶させたので学園のセキュリティに使用できるかと思い手を加えたものを現在使用しています。ちゃんとお教えしますからそんなに羨ましそうにしな、」
「羨ましそうに見えるか、俺が!?全然ちげえよ!頭にきてたんだってのにっ......はぁ~、お前なぁ」
「う、その、......すみません。分かってて言っていますからそのため息、やめて下さい......だって、あの変態魔術士の言ってる事、当たっているかもしれないので」
そう尻すぼみになりながらも、俺からの求愛行動から逃げる理由を話し始めたエマ。「私が意識、し過ぎだって分かってるんです」と言いベンチに腰掛けもじもじするのを見ていると、いつの間にか体を動かせるようになっている事に気が付く。だが、今頃動けるようになっても当然あいつらの姿は周囲には見当たらない。それ以上に気になるこいつの発言に、すっかりペースを握られていると理解して後頭部をガリガリ搔く。
一度怒りを横に置くため、意識して呼吸を落ち着けると自分もエマのすぐ隣に腰を下ろした。
近い?分かってやってるからさっさと続きを話せ。
「う、......サイレスの行動は、獣人にとっては当たり前だって、ちゃんと知識もありますし理解もしています。ですが、二人の間でそれが普通になったら、もっとスキンシップが増えるんじゃないか、って考えてしまって。 私、今で既にいっぱいいっぱいなのにと思ったらもう、これ以上なんて......どうしたらいいのか、いつも分からなくなるんです。あの本の知識がどうというより、いえその、あの本の内容が私達にはずっと先の事だと理解してはいますが、それとこれは延長線というかまだ私の気持ちが恥ずかしさに負けてしまってて、何が言いたいかというと、その......」
「......じゃあ、お前が極端に接触を恥ずかしがってんのは、まだ必要ないって言ってる余計な知識のせいなんじゃねぇの?なおさら原因になったあいつが悪い」
「もちろん公式戦での最中のあれは問題行動です。でもですね、アレはアレで私には必要だったとも今は思うんです」
「なんで?」
「な、んでか、という、と」
もともと赤くなっていた頬がさらに赤みを増した。視線は合わせられないのかうつむき、ためらいがちに「あの、本の内容が、とても積極的な女の子だった、ので」と話す姿に何かが胸に迫る。だがどちらかといえば悪影響だろう!とそう口にする前に、それを察知したのか慌てて続きを喋るエマ。
「結果私はそれまでの自分の行動を変えて、積極的に接点を持った事でサイレスとの今がありますし!......そう考えれば、ロッソ国から来たあの人達も同様ですね。二人が留学して来なければ今の未来は無かったと。学園外でしたら確実に周囲の街の被害は甚大だったはずで、また学園内のあの場所でなければ、ここまでクラスメイトの皆が評価される事も無かったかもしれません。留学生との手合わせによってサイレスは武術向上と獣化を、クラスメイト達は集団の力の結集となった校舎の強化と改良を、私はさらなる魔道具への可能性を発見しましたし」
わざとなのか天然なのか。「あの行動から私には良い事しかありませんね」とのんきに締めくくり、自分にとっての不利な話から良い話みたいに変えたが......その部分についてだけはまあ、感謝しても良い、と今となっては俺も思わなくもない。
俺自身、今でなくともいつかは獣化したかも知れない。が、きっかけが無ければどれ程長い時間劣等感を抱えたままだったかも分からない。あいつらが来たきっかけが国境でのドラゴン退治で、あそこに俺たちがいたのも元はといえばこいつの思い込みで、その発端まで遡ればあの試合になり、今日まですべての事が繋がっている。
隣国に帰ったあいつらがなんと言うかは別としてだが、と思わず遠い目にはなる。
「......お前のその前向きさはどこから来るんだ?行動力があるのに臆病だったり、思い込みが激しい一面はあるのに大人と肩を並べ、広い視点から可能性を見出す。俺に足りないその経験はどこで得た?......俺は、いまだにお前の一部分しか見てねぇ気がするよ」
「......ふふ、ちぐはぐな様にサイレスの目には映りますか?一応私の行動にも理由は存在するんですよ? 例えばサイレスに初めて接近した時には、これを機にもっとサイレスを知るチャンスにしようと思ってました。ずっと遠目に眺めるだけの存在だったので、心の中では今しかないっ!て私も毎日必死でした。あの頃の私も周りから見たらさぞおかしな行動ばかりが目に映ったでしょうね。あの変態魔術士にもそう言われました。改めて言いますが、術の影響などではなく私自身やりたくてやってる事ばかりでした。振り返ってみても、こんなに心のままに行動していた事なんて無かった、と思う位です。それで気が付いたんです。ずっと我慢ばかりしてきた以前までの私は、本当に可哀想だなって。もっと早く行動していれば、こんなに楽しい日々をさらに早く知る事ができたのにと、そんな風に考えていたんです。それからは私、もう何にも我慢しないでやりたい事はやろうって決めたんですよ。前向きだと言われるならきっとそこからです。ふふっ、吹っ切れたとも言えるかもしれませんね。最後はサイレスに嫌いだって言われただけで、逃げ出しちゃったんですけど......」
「その行動力はあんまり褒められねぇけど、それが無きゃ今の俺たちの関係も無かった、って事か」
そもそもあの公式戦が無ければ接点もほぼ皆無だったな、と思い出す。俺が朦朧としたまま術をかけなければあの三日間も無く、こいつは普通にそこそこ優秀な特待生のままで卒業したか、あの母親によって学園を中退していたかもしれない。今のように心のままに行動出来ず、金を無心する親と切れる事無く食い物にされながら細々と生きる未来。そう考えると、死んだ事にしてまで縁を切ったこいつの行動力は確かに何か吹っ切れていたんだろう。そのきっかけに自分がなれたのであれば喜ぶべきか。
そう考えていると隣から何やら意を決したように「私も、聞きたいのですが」と声が続く。