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7話

 その後、エレインさんはメイドさんを5人も連れて来た。


 あたしの事を簡単に説明したらしい。アレクシアさんは、メイドさん達に言った。


「ああ、よく来てくれた。まずはこの部屋の片付けを頼みたい」


「……はあ、ですけど。女官長が何とおっしゃるか」


「構わない、こちらは今日から側妃様のお部屋になる。本当はもっと良い部屋に移っていただきたいが」


 アレクシアさんが言うとメイドさん達は困り顔になる。どうしたものかと思っているらしい。それはそうだろうなと思う。が、エレインさんはズバッと言った。


「……あなた達は側妃様を放ったらかしていたじゃないの。今更、女官長に顔向けができないとか言わないでちょうだい。職務怠慢だと言われたいのかしら」


「わ、わかりました。今から、お掃除をします!」


「わかったんなら良いわ。さ、藍の君。湯浴みをしに行きましょう」


 あたしはエレインさんに引っ張られて、共同浴場に行く。アレクシアさんも一緒だ。先程、ローザさんに手渡された衣服や石鹸などはある。それらを持って脱衣場に向かった。


 共同浴場にたどり着くと、脱衣場には人の姿はなかった。これ幸いとあたしは棚の中にあった籠に、ローザさんからもらったカバンを押し込む。着ていた女官の制服を脱いで、肌着類も脱ぐ。タオルや洗面器、石鹸、シャンプー、コンディショナー入りの小瓶を持って入った。ローザさんにお礼を是非に言いたい。アレクシアさんやエレインさんも既に衣服を脱いで、バスタオルを体に巻き付けていた。両手には、同じくお風呂セットを持っている。


「それじゃあ、入りましょうか」


「うん、ありがとう。2人共」


「お礼はローザさんに言ってください。私達は、彼女の言葉通りにしているだけですから」


 エレインさんが肩を竦めて言う。あたしは苦笑いしながらも、浴室に先に入った。洗面器で浴槽にあるお湯を汲んで体にかける。何度かやったら、石鹸を泡立てた。スポンジに泡をつけて、体を洗う。一通り、洗い終えたらお湯を汲む。ザバッと何度かそうしたら、泡を流せたかをチェックする。完全に流せたとわかったら次はシャンプーだ。後から入ってきたアレクシアさんが声をかけてきた。


「藍の君、髪を洗うんですか?」


「うん、そうだけど」


「なら、手伝いましょうか」


 アレクシアさんはそう言って洗面器を持つ。あたしは仕方ないと思いながらも、頷く。


「じゃあ、そうしてもらえるかな」


「わかりました」


 アレクシアさんは頷いてお湯を汲んだ。そうして、あたしが髪を洗うのを手伝ってくれる。2、3回はお湯で汚れを軽く取ったら、シャンプーの小瓶を手に取った。蓋を開けると、爽やかなシトラスの香りが鼻腔に届く。出てきたとろみのある緑色の液を手に取り、泡立てる。モコモコと白い泡が立ち、あたしはそれを髪につけた。全体的に頭皮をマッサージしながら、洗う。目を閉じて何度かそうする。


「……では、お湯で流しましょう」


「わかった」


 アレクシアさんの声がして頷いた。ザバッとお湯を掛けてくれたので、髪を濯いだ。何度かしたら、目を開けてコンディショナーの小瓶を手に取った。また、蓋を開けて液を手に取る。髪にまんべんなくつけたら、しばらく置く。そうした上でアレクシアさんにお湯を掛けてもらいながら、濯いだ。一通り、できたら壁に取り付けられた引っ掛け棒にあるタオルを取った。それで髪を拭く。拭いたタオルで髪を纏めたら、浴槽に行った。洗面器にお湯を汲み、体にかけ湯をする。そうしたら、足からゆっくりとお湯に浸かった。

 肩までしたら、ほうと息をつく。


「あー、いいお湯だわ」


「藍の君、しばらくはゆっくりと湯浴みもできなかったようですね」


「そうなんだよね、ここへ来てからは体を拭くぐらいだったよ」


 あたしはアレクシアさんの言葉に頷いた。本当にこちらに来てからは、ぬるま湯を厨房からもらい、タオルをそれに浸して拭くのが精一杯だった。髪の毛はローザさんにもらったシャンプーを使い、井戸で洗っていたが。それでもゆっくりとお湯に浸かると、今までの疲れが取れるのがわかる。しばらくはそうしていた。


 のぼせる前にとお風呂から上がった。アレクシアさんやエレインさんもだ。浴室の中で手早く、体の水気を拭く。そうしてから、洗面器にシャンプーなどの小瓶を入れたりして片付ける。脱衣場に出ると油紙で作ったらしい袋に洗面器などを入れた。髪を軽く拭いたら、下着類を身につける。最後に寝間着もといネグリジェを着て上にカーディガンを羽織った。アレクシアさん達も服を着たらしく、脱衣場を出ようと声を掛けてくる。頷き、自室に向かった。


 自室に行くと、5人のメイドさん達がドアの前で待ち構えていた。


「あの、お掃除は終わりました」


「ああ、お疲れさん。藍の君、行きましょう」


「では、夕食を取ってきますので。一旦、失礼します」


 メイドさん達はそそくさとこの場を離れていく。そんなにあの女官長が怖いのかとあたしは呆れたのだった。アレクシアさんやエレインさんも微妙そうな表情をしている。そっとため息をついた。

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