表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/16

15話

 あれから、早いものでまた1週間が過ぎた。


 あたしがヴァルサリーニ王国に来て1年と少しが経っている。まだ、季節は7月で真夏に近づきつつあった。


「……イツキ様、今日は婚約式の本番ですね」


「本当だね、ローザさん」


「まだ、明け方ですけど。身支度を始めましょう」


 あたしは頷いた。そう、今日はオーランド様との婚約式の本番だ。ローザさんやルーナさん、他にも4人の女官さんがいる。皆、やる気満々だ。目が爛々と輝いている。


「さ、まずは湯浴みをしましょう!」


「……はい」


 仕方ないから、頷く。ルーナさん達によって浴室へと連れて行かれた。


 あれから、お風呂に入り頭から爪先までピッカピカに洗われた。上がったら、髪を乾かしつつも顔や体のマッサージをする。甘い花の香りのクリームやオイルで入念に行われた。次に、下着類を身につける。そうしたら、コルセットでギュウギュウに締め上げられた。これがまたキツい。はっきり言って、「グエッ!」と口にしてしまったよ。それくらいにはキツかった。

 後でオーランド様から、贈られたドレスを身に纏う。彼の瞳の色に合わせた淡い藍色のマーメイドラインのドレスだ。袖は半袖くらいの丈で胸元にレースが何層にも使われた上品な感じの代物だった。裾にもパニエが何枚も使われていてふんわりとした造りになっている。こちらもレースが何層にも使われていた。生地自体も薄くて軽い。なかなかに動きやすくて着る側には有難いと思った。

 今は真夏に近いから、風通しもよく意外と涼しい。ローザさんがあたしに手招きをして鏡台の椅子に座るように言った。

 ローザさんは手早く、メイクを施してくれる。まず、最初にお化粧水などを塗りこむ。そうしてから、リキッドタイプのファンデーションもとい白粉を薄く塗る。眉を描いたら、ピューラーでまつ毛をカールさせた。そうしてから、アイラインにマスカラ、アイシャドウと進めていった。口紅を塗り、チークを入れる。最後にフェイスパウダーを叩いたら、完成だと言われた。鏡を見たら、かなりの黒髪美女が驚いた顔でこちらを見つめている。いやー、化けるとはこの事だわね。アイブロウやアイライン、マスカラはブラックだが。アイシャドウはドレスに合わせて淡いブルー系になっている。口紅は落ち着いた感じのブルー系の紅だし。チークは控えめのベージュで全体的に上品に仕上がっていた。

 ビックリしながらも髪もアップにしてもらう。これはルーナさんがやってくれた。たくさんのヘアピンを使ってぐるぐると巻き、シニヨンスタイルにする。アシアナネットで纏めたら、小さなかすみ草風の造花を挿した。


「……はい、出来ましたよ」


「うわあ~、見事に化けたね」


「ふふっ、イツキ様。化けたというよりは。変身なさったと言ってください」


 ルーナさんに苦笑いされながら言われた。あたしは「すみません」と小声で謝る。


「謝るよりは、笑った方がいいですよ。今日はイツキ様が主役なんですから」


「……そうだね、わかった」


「さ、婚約式までは時間があります。控室まで行きましょいた」


 ルーナさんやローザさんに促されて、自室を出た。慣れないハイヒールで控室にゆっくりと向かった。


 控室にたどり着くと、既に近衛騎士さんが2人程控えている。あたし達に気がつくと会釈をしてくれた。


「……側妃様ですね、お入りください」


「はい」


 あたしは頷くと開けられたドアから、中に入る。なかなかに物々しい雰囲気だ。ローザさん達も後に続く。

 ドアが閉められると、あたしは備え付けのソファーに腰を降ろす。ふうとため息をついた。思ったよりは緊張していたらしい。


「イツキ様、式が始まるまでは後3時間くらいはあります。それまでは軽食でも召し上がってください」


「わかった」


 ローザさんはそう言ってテーブルに置いてあるマカロンやケーキ、サンドイッチなどを指さす。ルーナさんが手早くハーブティーを淹れてくれた。あたしはマカロンに手を伸ばす。茶色っぽいのを取って控えめに齧りついた。

 ふわりと柑橘系の爽やかな酸味と香りが鼻を抜ける。後でチョコレートの甘みがきた。なかなかの逸品だ。正直言って、今まで食べたお菓子の中ではダントツに美味しい。たぶん、現代日本でも滅多に食べられないかもな。そう思いながら、2口目といった。やはり、とろけるような甘さが何とも言えない。あたしは気がついたら、1つを食べてしまっていた。2つ目も食べてみた。こちらはピンク色の可愛らしい見た目だ。味はストロベリーといった感じだが。ミントに近い香りもする。夢中で3つ、4つと食べてしまった。


 が、ローザさんからさすがに制止が掛かった。


「イツキ様、これ以上はやめておいた方がいいですよ!」


「あ、本当だね。せっかく、コルセットをしているのに。苦しくなっちゃうね」


「ええ、お化粧も崩れてしまいますから」


 あたしは確かにと頷いた。仕方ない、程々にしておこう。諦めて紅茶に手を伸ばす。喉を潤したのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ